映画コラム

REGULAR

2016年08月12日

お盆に映画で考えたい。戦後と現在、家族のあり方とは?

お盆に映画で考えたい。戦後と現在、家族のあり方とは?

家族はつらいよ


(C)2016「家族はつらいよ」製作委員会


猛暑の中、今年もお盆シーズン、そして終戦記念日が近づいてまいりました。家族のことを意識する機会が増える時期。

ということで、今回は山田洋次監督が東日本大震災後に撮影し2013年に公開された『東京家族』をご紹介。また、同キャストで撮影されたコメディ映画『家族はつらいよ』も併せてご紹介致します。

現代の家族のあり方を冷徹に描く『東京家族』


東京家族


東京に住む子供たちに会うため上京した両親、しかしその子供たちは急な仕事で、両親の対応を押しつけ合う。その時、一番うまく対応したのが期待されていない次男とその恋人だった。

現代に置き換えているので基本的に、出てくる家族の名前や仕事はほぼ同じですが、一部の家族に『東京物語』ではいなかった人がいたり、名前の字が違っていたりすることはあります。

当然ながら、当時と現在では家族のあり方が変わってきており、例えば仕事が忙しく、親は子供たちと過ごそうと遠くからやってきたのに、子供たちは高級ホテルに泊まって旅行を満喫してもらえればいいだろうと考えたり。人それぞれ、いろいろな事情を抱えています。

『東京物語』の頃、子供だった世代が『東京家族』では親の世代になっているというのも面白いところです。当時の親と子では考え方が違うだろうし、それが現代になればまた変わってくる。そういうところをきちんと描いているところが同作の凄さと言えるでしょう。

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東京家族| 2013年 | 日本 | 146分 | (C)2013「東京家族」製作委員会 | 監督:山田洋次 | 橋爪功/吉行和子/西村雅彦/夏川結衣/中嶋朋子/林家正蔵/妻夫木聡/蒼井優 |

世界一の映画とも名高い小津監督の傑作『東京物語』


東京物語 ニューデジタルリマスター


ストーリーラインは『東京家族』とほぼ同じで「上京してきた両親の対応を誰がするか?」というもの。

『東京家族』との決定的な違いは、「次男が他界していること」「次男が結婚していること」。そのため『東京家族』で次男と恋人がやっていた両親の対応を、『東京物語』では、すべて次男のお嫁さんが一人でその役割を果たします。

『東京家族』は、あくまで家族とその恋人が両親の面倒を見るわけですが、『東京物語』は次男の嫁、つまり血の繋がりのない家族、言い換えれば縁はあるけど、実質他人が面倒を見る。『東京物語』では両親に一番優しかったのは、自分の子供たちではなく、次男の嫁だったのです。

次男の嫁がすべての役割を担う。つまり作品の意味合いがリメイク作品である『東京家族』と、かなり異なります。

そして違いがもうふたつ、母親の死亡時期が、東京から帰ってからか、東京かという点。そして大まかな流れは変わりませんが、次男の設定も変化しているため、次男についてのやりとりや渡すものにも変化があります。

1953年の家族がどういうあり方だったかはわかりませんが、今よりも一緒にいる時間が多かったかと思います。それがこの作品では、地方と東京で別れて暮らしていて、完全に離れているという家族のあり方が描かれており、当時からしたら珍しかったのではないでしょうか。もし小津監督が未来(いま)を予想して、家族設定をこうしたのだとしたら、ものすごい先見ですね。

この作品も特別なことは、特に起こりません。あくまで当時の家族のお話。若い人でもこれを見ると、自分の老後を考えることができます。『東京家族』を見られた方は見比べてみることをお勧めします。世界一とも評価されている作品です。それだけで見る価値は十分あります。

長年連れ添った妻が誕生日に欲しがったものは離婚届?『家族はつらいよ』


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熟年夫婦の奥様の誕生日。なにが欲しいか聞いたら「離婚届」と答えられる。熟年夫婦の離婚の危機に家族たちはどうするか?

歳が歳だけに、家族全体が巻き込まれてしまう。本人たちが真剣で真面目にやっていることが、他人から見たら面白く見えるってことは人生往々にしてありますよね。この作品はそれを、より面白く見せてくれる映画。特にとばっちりを受ける家族たちがとてもいい味をだしていて、笑えます。

でもそれだけでなくて、家族の絆や夫婦の絆、家族のあり方などを考えさせる作品。家族であっても全体より個を尊重する今のような時代だからこそ、見るべき映画といえるでしょう。

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家族はつらいよ| 2016年 | 日本 | 108分 | (C)2016「家族はつらいよ」製作委員会 | 監督:山田洋次 | 橋爪功/吉行和子/西村雅彦/夏川結衣/中嶋朋子/林家正蔵/妻夫木聡/蒼井優 |


どの作品も描いているのは「家族」のあり方。一方はコミカルに、一方は冷徹に描いています。決して綺麗事だけでは済まされない家族の物語。

家族のあり方について今一度考えることができる作品です。

(文:波江智)

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