8月15日に見ておきたい、戦争映画5つの傾向と対策

2016年8月15日、終戦から71年目の夏を迎えました。集団的自衛権、憲法改正など現在、日本では今後の国の方針をめぐるさまざまな論議が交わされていますが、ではその根幹ともなった71年前の戦争とは一体何だったのか?

キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.151

お盆休みの3日間も含め、映画を通して考えてみてもいいのではないでしょうか?

①8・15終戦

1945年8月15日、徹底抗戦を唱え、国民に戦争の終結を伝える天皇の玉音放送を阻止しようとした陸軍若手将校らのクーデター未遂事件“宮城事件”が勃発。これを題材にした映画の代表格は、半藤一利の同名ノンフィクション書籍を原作とする『日本のいちばん長い日』67年版と2015年版でしょう。

日本のいちばん長い日

日本のいちばん長い日

戦中派・岡本喜八監督による前者は事件を通して戦争そのものの狂気を描き、国際派・原田眞人監督による後者は天皇、鈴木貫太郎首相、阿南惟幾陸軍大臣の絆を通して終戦に向かって動いていった人々の勇気と叡智を描いています。

なお、この事件は『日本敗れず』(54)『八月十五日の動乱』(62)、日加合作のTVミニ・シリーズ『HIROSHIMA~ジ・エンド・オブ・パールハーバー~』(95)などでも映像化されています。

②東京裁判

第二次世界大戦で日本が無条件した後、1946年5月3日から48年11月12日にかけて、連合国が日本のA級戦犯を裁く極東国際軍事裁判、俗にいう東京裁判が行われました。

裁判の全貌および第2次世界大戦とは何だったのかを知りたければ、小林正樹監督による堂々4時間半におよぶ長編ドキュメンタリー映画『東京裁判』(83)をお勧めします。

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ここでは勝者が敗者を裁く矛盾や戦争そのものの非などを訴えつつ、日本人は十字架を背負って生き続けるべしといった、自ら戦場で過酷な体験をした小林監督ならではのメッセージが刻まれています。

東京裁判で連合国=勝者のエゴにもっとも勇敢に立ち向かったのは、皮肉にも日米開戦時の首相・東條英機であったという事実を描いたのが伊藤俊也監督の『プライド 運命の瞬間(とき)』(98)で、東條を美化しているのではないか? と公開前から上映反対運動が起きたほどの問題作ですが、そもそも『さそり』シリーズなど反体制的作品を作り続けてきた伊藤監督は東條を天皇主義者であることを明確にし、その上での裁判バトルであったことを訴えています。また裁判で唯一日本を弁護したインドのパール判事の謎にも言及しています。

③日米開戦

1941年12月8日(アメリカ時間では7日)、日本軍によるハワイ真珠湾攻撃で、日米の戦争は始まりました。

この全貌を知りたければ、まずはアメリカ映画『トラ・トラ・トラ!』(70)を見ておくべきでしょう。

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当初は黒澤明が日本側監督を務めるはずだったこの超大作、結果としては舛田利雄&深作欣二がその任を担い、アメリカ側はリチャード・フライシャー監督が担当。クライマックスの戦闘スペクタクルもさながら、そこに至るまでの日米のスリリングな駆け引きにも気が配られています。

なお、日本の立場から日米開戦を描いた日本映画は数多いですが、中でも『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』(60)は、真珠湾の勝利からミッドウェイ海戦の敗北までを僧侶でもある松林宗惠監督が仏教的無常観をもって描いています。また堀川弘通監督の『激動の昭和史 軍閥』(70)や舛田利雄監督の『大日本帝国』(82)は、東條首相の立場から日米開戦を見据えているあたりが異色です。

④日中戦争

日本では、日中戦争の始まりは1937年の盧溝橋事件からとされていますが、中国では31年の柳条湖事件を発端とする満州事変からとし、これを中日十五年戦争と呼ぶ向きもあります。一事が万事、こういった歴史的認識のズレで今も対立し続ける両国ですが、山本薩夫監督による堂々9時間を超える超大作『戦争と人間』3部作(70~73)では、満州事変前夜から39年の日ソ衝突“ノモンハン事変”までを壮大なスケールで描いたもの。

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これは徹頭徹尾日本の軍国主義の非を訴えたものですが、思想的に異を唱える向きも、この3部作の“映画”としての面白さを讃える声が多いのが特徴です。

本来はここにもう1本、日中の囲碁名人とその家族が戦争に翻弄され、残酷な運命を強いられつつ、最後に未来の希望を示唆されていく佐藤純彌監督、三國連太郎主演による日中合作映画『未完の対局』(82)も挙げたいところですが、本作はビデオ化はされたものの、その後のDVDなどのソフト化がなされてないのが悔やまれるところ。何かの機会観られる機会があったら、ぜひとも一見をお勧めしたい作品です。

⑤戦争と平和

戦争映画とは、いわゆる戦闘シーンをスペクタクルとして無条件に楽しむ向きもあれば、徹底的に反戦平和を叫ぶ向きもあれば、と常に玉虫色に輝き続ける複雑怪奇なジャンルではあります。

また沖縄の悲劇(『ひめゆりの塔』53、『激動の昭和史 沖縄決戦』71など多数)や、広島や長崎に投下された原爆の惨禍(『原爆の子』52、『ひろしま』53、『八月の狂詩曲(ラプソディー)』91他多数)、さらには北方領土をめぐる問題(『樺太1945年夏・氷雪の門』74、『ジョバンニの島』14他)など、戦後70年を過ぎた今なお解決されていない事象は数多くあります。

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思想的なことはさておき、まずはあのとき一体何があったのかを、戦争および戦争を題材にした映画たちは明確に示唆してくれることでしょう。

まずは知ること。8月15日とは、毎年そのことを再確認させてくれる日であり、そのツールとして映画も最大活用していただきたいものです。

(文:増當竜也)

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    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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