魂の慟哭、『64 ロクヨン』──、邦画界最高水準のドラマがここに。

みなさん、こんにちは。

5月7日より公開された前編に続き、先週末から『64 ロクヨン/後編』が公開となりました。
WEB用_64後編_メインカット(PC壁紙画像・携帯待受画像には使用できません) (C)2016映画「64」製作委員会

原作は発売年にミステリランキングを席巻した、横山秀夫さんの同名小説。監督は、瀬々敬久。主演に佐藤浩市、共演に三浦友和、綾野剛、瑛太、永瀬正敏らと、現在の邦画を背負い立つ面々が集まった、実に骨太な作品となっています。

今回の「映画音楽の世界」では、前編も振り返りつつ『64 ロクヨン』とその音楽をご紹介したいと思います。

組織の構造的対立を描いた前編

ロクヨンとはそもそも、なんなのか。

まず、64という数字は昭和天皇が崩御した年、たった7日間で幕を閉じた昭和64年を示しています。そのわずか一週間の内に発生した少女誘拐殺人事件が、この物語の出発点であり核心部でもあり、解決を見ていないこの事件を、捜査本部内で「ロクヨン」と呼称しています。

発端は、郊外の町工場を営んでいた雨宮家に降りかかったあまりにも残酷な誘拐事件。この事件の陣頭指揮を執っていたのが三浦友和さん扮する松岡で、その部下、三上を佐藤浩市さんが演じています。残された父親役の永瀬正敏さんなど、主だった登場人物はこの事件を軸に登場することになります。

それから14年。ロクヨン事件の時効をあと一年に控えた、平成14年。
前編では事件の始まりから、警察内部の対立、広報部と記者クラブの対立が緊迫感に満ち満ちた県警という密室の中で繰り広げられ、やがて浮かび上がる「幸田メモ」とその存在そのものが警察内部の対立をさらに掻き立てることになり、ついには新たな事件が発生するまでが描かれました。

この前編からして、熱い。主役級のキャストが揃っているのですから、まず演技面からして安定のクオリティ。そこに複雑に絡み合う私欲、隠蔽体質、地方部の軋轢が勢いを緩めることなく描かれているのだからボルテージは上がる一方です。そして新たな事件の発生の報を受けたところでバトンは後編へと手渡されます。

WEB用_64前編_サブ01(PC壁紙画像・携帯待受画像には使用できません) (C)2016映画「64」製作委員会

慟哭の後編

後編では、新たな事件が発生したことにより、再び「ロクヨン」がフォーカスされます。前編は組織間の対立を描いていたのに対し、後編では過去と現在を繋ぐ事件から、人対人により照準を合わせ、「新たな事件の謎」と「ロクヨン事件の真相」へと向かって、加速度的にストーリーが展開していく、ミステリー本来の手法へとシフトしていきます。だからといって前編を覆う硬派なイメージは損なわれることなく、むしろより人物描写に踏み込むことで観客をロクヨン事件という悲劇へと誘導していきます。

新たに発生した事件で謎が深まる中、同時に前編において撒かれた伏線の回収が行われ、やがて新旧事件は思いもよらぬ結末に向かって突き進んでいきます。
その中で、三上家が背負った暗部へもより具体的にアプローチが進み、それすらもロクヨン事件へと──
と、これ以上は映画未見の方の楽しみを削ぐ言及になりかねないので、ここで抑えるとしまして。

とにかく、後編の見どころはそれぞれのキャラクターが見せることになる行く末とそれを体現した演技、そして、作品の核心たるロクヨン事件の真相に向かうミステリ作品としての質だと私は思いました。

WEB用_64後編_追加サブカット02(PC壁紙画像・携帯待受画像には使用できません) (C)2016映画「64」製作委員会

村松崇継が奏でる、重厚な音楽

『64 ロクヨン 前編/後編』の音楽を手掛けたのは、ピアニストの村松崇継(むらまつ たかつぐ)さん。ケルトサウンドを取り入れロクヨン事件の悲劇性を表現しつつ、重低音を重視したオーケストレーションで映画により一層の重厚感を与えています。最近の邦画の劇伴の中でもこれほどの情感で聴かせる音楽はなかったのではないでしょうか。

村松崇継さんの近年のフィルモグラフィーにはジブリ作品の『思い出のマーニー』や東日本大震災を正面から描いた『遺体 明日への10日間』などがあります。ピアニストとしてのアルバムもあり、初アルバムリリースをしたのが高校在学中、そして大学在学中に原田眞人監督の『狗神』で劇伴作曲家としてもデビューした、まさに音楽界の才人です。

以降、原田監督作品や君塚良一監督作品の多くを手掛け、本作の瀬々敬久監督とは『アントキノイノチ』に続くコラボレーションとなっています。本作の音楽も、作曲家としての村松崇継さんの世界観が十分に発揮されたメロディで私たちの耳に響き渡ります。

WEB用_64後編_追加サブカット05(PC壁紙画像・携帯待受画像には使用できません) (C)2016映画「64」製作委員会

まとめ

前編、後編と分かれている作品ですので後編から観ることに抵抗のある方も居ると思います。

実際、この作品はミステリにも軸足を置いたストーリーですので後編だけを観る、という鑑賞法はお勧め出来ません。そこで、一部劇場を除いて現在でも(回数は少ないですが)前編を上映している映画館も多いですので、『64 ロクヨン』一気見というのが実は一番この映画を楽しめる方法ではないかと思います。

前編に張られた伏線や重要なシーンなども多く、時間を空けるよりもすぐに後編へと入るのが、「ミステリー映画」としての作法を堪能する上では重要なのではないでしょうか。

今年も映画界は大豊作。『64 ロクヨン』、お勧めの一本です。

ここまで読んでいただき、ありがとう ございました。

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(文:葦見川和哉)

    ライタープロフィール

    葦見川和哉

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    葦見川和哉 映画が好き。旅が好き。小説が好き。 映画開眼と同時に映画音楽の魅力にも取りつかれたサウンドトラック収集家。

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