淫乱か?愛の救世主か?どんな男も拒まない前代未聞のヒロインとは?「愛を語れば変態ですか」

愛を語れば変態ですか (C)2015松竹

人気の劇団ピチチ5を主宰する演劇界の鬼才、福原充則の映画監督デビュー作にして問題作、それがこの「愛を語れば変態ですか」だ。

彼が脚本を担当した映画、「血まみれスケバンチェーンソー」が今年公開されたので、その独特の「ぶっ飛んだストーリー展開」に触れて興味を持った方も多いのでは?
昨年11月に公開されて話題を呼んだ本作が、遂に今年の4月にDVDリリースされたので、今回はぜひ取り上げてみたい。

「愛を語れば変態ですか」、この挑戦的なタイトルに、果たしてあなたは何と答えることが出来るだろうか?

ストーリー

自分達の念願だったカレー屋の開店を明日に控え、開店準備に追われるある夫婦。ところが、突然二人の前に次々と現れる謎の男たち!終始上から目線の謎のフリーター、何故かレトルトカレーを開店祝いに持ってくるストーカ男、全身傷だらけで現金1億円を抱えた不動産屋、などなど。彼らがこの店に集まった理由とは何か?その答えを握っていたのは、実は妻のあさこだった!地球上の全ての男たちに愛を!世界中を愛で包むため、今、あさこが立ち下がる!

本作の物語を要約すれば、「一箇所の限定された空間に次々と個性的な人々が集まってきて、どこか微妙にかみ合わない会話を繰り返す内に、様々なトラブルが巻き起こる」となる。会話が重要な要素となるうえに、舞台が一箇所に限定されるという、非常に演劇的な設定を扱った内容だけに、重要な会話部分が多くなれば、それだけ上映時間も長くなり、観客の興味を持続させることも困難になってくる。だが、本作はこれが初監督作品とは思えないほどの、テンポの良さと会話の面白さ。しかも上映時間を、なんと70分の短さにまとめているので、全然普段演劇を見る習慣のない方、時間に余裕のない方にも、安心してオススメ出来る作品だ。

愛を語れば変態ですか (C)2015松竹

どんな男も拒まない女!そして、集まった奇妙な男たち

キャスト陣も、実に個性的な面々を揃えている本作。まずお笑い界からは、やること全てドジばかりの夫の後輩に川合正悟(Wエンジンのチャンカワイ)と、常に上から目線で自信満々のバイト希望者に今野浩喜(キングオブコメディ)。更に、あさこの夫役には野間口徹、あさこの元浮気相手で今もストーカーを繰り返す男に、仮面ライダー響鬼の明日夢役でもお馴染みの栩原楽人、同じくあさこの元浮気相手で兼業ヤクザの不動産屋に永島敏之、などなど。どれも個性的でキャラが立つ役者ばかりだ。

そしてもちろん、主人公の主婦あさこを演じる黒川芽以が素晴らしい!一見可愛らしくて誠実そうな奥さんに見えながら、実際は店に集まった男たちと密かに浮気をしていた、という事実が判明する辺りから、そのキャラクターを激変させていく。

この二面性の切り替えの上手さと、ふとした瞬間に彼女が見せる母親のようなやさしい表情。これじゃ周りに男たちが夢中になるのも無理はない、と思わず納得させられること請け合いだ。

愛を語れば変態ですか (C)2015松竹

どこまでも噛み合わない、男と女の勝手さ

実はあさこの昔の浮気相手だった男達と、彼女の夫との間で、今後どうするのが彼女にとって一番幸せか?を話し合うシーンがあるのだが、ここで浮き彫りになるのが「男の勝手な思い込みと論理」だ。あくまでも自分の都合を中心に考え、口では「お前のためだから」と言いながら、相手の気持ちは殆ど無視!同じ男として非常に耳の痛いセリフが飛び交うこのシーン。女性の方は、もしもの時の対策用にぜひご覧になって、有効活用して頂きたい。

これに対して、「あたしの事を理解して、あたしをちゃんと見て!」という、あさこ側の女の論理との対決で浮き彫りになるのが、絶対に埋まることのない男と女の深い溝だ。
遂には、極限まで高まった皆の不満と怒りが爆発!男達のケンカによって、開店前の店内はメチャメチャに壊されてしまう。だが、暴れて冷静さを取り戻した男達の間に、やがて生まれる妙な連帯感。台風が去った後のような惨状の店内で、男達が皆で一緒にカレーを食べるシーンを入れることで、福原監督はセリフに頼ることなくその心境の変化を上手く表現している。当然、あさこはその食事の場には混ざらない。一緒に食事を取らないことで、男女の決して越えられない深い溝を表現したこのシーンは非常に上手いと感じた。

「結局、みんなあたしのこと好きなの?嫌いなの?」勝手にケンカして勝手に仲良くなっている男達に向けて、あさこの本音と感情が爆発した時、ついに物語はトンでもない方向へと暴走して行くのだった!この辺の展開からの物語のドライブ感は、ぜひご自分の目で確かめて欲しい。

愛を語れば変態ですか (C)2015松竹

最後に

勝手に衝突し合ったくせに、今は連帯感で和気あいあいとしている男達。もはや完全に眼の前の男たちに見切りをつけたあさこは、この世の全ての男に愛の素晴らしさを伝えるべく、ある行動に出る。例えるなら「愛の通り魔」、あるいは「愛の無差別テロ」とでも言うべきその行動!店を飛び出して街を駆け抜け疾走する彼女の姿は、もう何者にも縛られない自由への喜びと開放感に満ちていて、確かに「前代未聞のヒロイン」の言葉に嘘はないと感じた。

「今のご時勢、愛を語れば変態ですか!」や、「そこで愛に目覚めてろ!」など、ラストシーンでの主人公あさこのセリフは、どれも最高にカッコよくて心に残る。これほど魅力的で力強いヒロインを観るだけでも、本作を借りる価値は十分にあるので、要チェックだ。

監督ご本人によれば、本作のラストにはジャッキーの「プロジェクトA」へのオマージュを入れてあるとのこと。アクション映画ファンはその辺も楽しみにして、ぜひDVDでご確認を!

(文:滝口アキラ)

    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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