「ANTIPORNO」は日活ロマンポルノに対する、園子温監督の過激な愛情表現だ!!

ANTIPORNO 園子温 日活ロマンポルノ

(C)2016 日活

監督たちが、喜んでいる!!

爺 また「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」か。ちょっとえこひいきしてないか?

先輩 してます(きっばり)。だって、今どきロマンポルノとはいえオリジナル作品を一気に5本も作ってしまうプロジェクトなんですよ。先日ここでやったじゃないですか。日本映画のオリジナル率はどれくらいかな?って。やっぱりオリジナルを作っていかないとダメなんですよ、日本映画は。日本最古の映画会社である日活が、まず率先してそれをやってくれたことに敬意を表し、そして応援しているつもりです!!

爺 別に日活ロマンポルノ自体に愛着があるわけではないんだな?

先輩 それほどでもないですね。だって、ロマンポルノがスタートした時、まだ僕は小学校低学年でしたから。

爺 じゃあ、ロマンポルノ初体験は?

先輩 明確に覚えているのは、「ラブレター」かな。関根恵子が脱いで、東陽一監督が撮ったという理由で見に行きました。その後、相米監督の「ラブホテル」。

爺 名作じゃね。

先輩 同感です。ロマンポルノとしてではなく、1本の日本映画として素晴らしい。あんなに切ない映画を見たのは、初めてでした。

爺 じゃあどっちかと言うと、ロマンポルノの中で「ロマン大作」と呼ばれていた、大物女優が脱いだり、巨匠が監督したりという、あの路線が好きだったわけか?

先輩 そうですね。藤田敏八監督の大ファンですから、「ダブルベッド」も封切りで見ていて、あと森田芳光監督の「(本) 噂のストリッパー」とか「ピンクカット/太く愛して深く愛して」とか。女優目当てで見に行ったのは、早乙女愛の「女猫」ですね。これはDVDまで持っています(笑)。

爺 時々そのへんにいるロマンポルノとピンク映画に青春を捧げたような初老の人とは、違うわけだな。

先輩 もちろんですよ。一緒にしないでください(キッパリ)!

爺 どこぞの批評にも書かれていたが、このリブート・プロジェクトは、オリジナル作品を撮れることを監督たちが喜んでいる。それがはっきりと分かるし、監督によって喜び方の表現が違う。そこが面白いところだね。

先輩 そうなんですよ。だから園子温監督の「ANTIPORNO」。これは面白かったなあ。もう快哉を叫びましたよ。「ロマンポルノなんて、オレがぶっ壊してやるよ!!」って園監督が叫んでいるようで。

ANTIPORNO 園子温監督 日活ロマンポルノ1

(C)2016 日活

園子温監督の、この喧嘩腰。この破壊願望。

爺 園監督も君と同世代だから、日活ロマンポルノへの愛情や思い入れは、さほどないんだな。作品を見て分かるよ。

先輩 なにせこの喧嘩腰な作風(笑)。久々に園子温の本領発揮ですよ。

爺 そうだね。この監督は既存のルールや決め事を壊したほうが、面白い映画になることが多いね。

先輩 それでいて、奥サマ主演で「ひそひそ星」みたいな映画を自分のプロダクションで作ってしまう、このアンバランスなバランス感覚、好きだなあ。

爺 で、その「ANTIPORNO」じゃが、筒井真理子が脱いでいることが話題になったね。

先輩 試写を見た時、口止めされたんですよ。「まだどこにも書くんじゃねーぞ」と、宣伝嬢から。いやそれにしても、失礼ながらあの年齢にしてこのスタイル。もう目がテンになっちゃいました。

爺 まだ公開は2ヶ月近く先だから、「ANTIPORNO」とはどういう映画なのか、語っておかないと分かりづらいと思うぞ。

先輩 「小説家兼アーティストとして時代の寵児となった京子(冨手麻妙)。極彩色の部屋に籠もり、マネージャー典子(筒井真理子)が伝えるスケジュールを分刻みでこなす毎日。寝ても覚めても終わらない悪夢。私は京子なのか? 京子を演じているのか? 虚構現実の狭間で、京子の過去の秘密が暴かれていく-」。

爺 資料丸写しの解説、お疲れさんでした。

先輩 いや、この映画に関してはストーリーをくどくどと説明するのは、あまり意味が無いんです。それよりも、冨手麻妙がまさに狂ったように演じる京子とうキャラクターが、さてどこまで正気でどこまで本当に狂っているのか? それを推理しながら見ると、とても楽しめます。

爺 場面写真を見ても、極彩色の部屋の中で、京子が暴れまくっていて、筒井真理子の女マネージャーがそれっぽい格好をして呆然としている。

先輩 いや。このコスチュームがいいんですよ。筒井真理子の。これが破かれた後に、鞭で打たれたり・・・。

爺 お前さん、そういう趣味があったのか?

先輩 いやいや、映画の中でですよ。往年のロマンポルノにあった男女の哀感だとか女の切なさ、やるせなさ、打たれ強さといった美学はここにはまったくなく、ただひたすら京子の狂気が炸裂する様が描かれている。日活ロマンポルノ何するものぞ!!という園監督の破壊願望が見事に出ています。

ANTIPORNO 園子温監督 日活ロマンポルノ2

(C)2016 日活

最も若い白石監督の「牝猫たち」が、最も往年のロマンポルノを思わせる作風。

爺 ただ、今回のプロジェクトにはいくつかお約束があったじゃろ?「上映時間80分前後」「10分に1回の濡れ場」「製作費は全作品一律」「撮影期間は1週間」「完全オリジナル作品」「ロマンポルノ初監督」というルール。特に「10分に1回の濡れ場」というあたりは、ちゃんと守られているのかいな?

先輩 ええ。まあ「濡れ場」と表現が相応しいかは別ですが。「犯し場」というか・・・。

爺 ロマンポルノのフォーマットを破壊して、それでもポルノ映画として成立しているようならば、まさに「アンチポルノ」と呼ぶに相応しいな。

先輩 往年のロマンポルノのフォーマットと、今回の5つのルールをきっちりと守っているのは、白石和彌監督の「牝猫たち」のほうなんです。面白いのは白石監督は今回の5人の監督の中で、最も若い。彼が生まれた時(1974年)、ロマンポルノは既に映画館にかかっていましたから。つまり日活ロマンポルノとは距離のある世代だと思うんですが、「牝猫たち」には、かつてのロマンポルノの演出やシチュエーションを誠実に踏襲しているんです。

爺 それもまた、白石監督の世代から見たロマンポルノ像なんじゃないかな?

先輩 ほんと。比較して見ると面白いものですね。ロマンポルノの破壊者・園子温監督と、ロマンポルノらしさを今の視点で追求した白石和彌監督。それに行定監督、塩田監督、中田秀夫監督の作品を加えて、オールナイト一挙上映+5監督の語る「私にとってロマンポルノとは?」なんてトークイベントでもやってもらいたい。

爺 温度差は5人それぞれあるだろうが、みんなロマンポルノというジャンルを愛している。敬意を表している。そしてそのフォーマットを借りて、オリジナル作品を作ることが出来るのが、うれしくてたまらないのだろうなあ。

先輩 「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」は、今回だけで終わりにせず、第2回、第3回と続けて欲しいものです。

(企画・文:斉藤守彦)

関連記事

「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」キム・ギドク監督がロマンポルノを撮る条件としてあげたこととは・・・・。
日活ロマンポルノが真にリブートするためには?
エロス、ここに極まれり―日活ロマンポルノ新作5本の予告映像が解禁!
大胆な本格ヌードへ!園子温監督のロマンポルノ作品、ポスターV解禁
白石和彌監督が挑むロマンポルノ『牝猫たち』に音尾琢真、郭智博、とろサーモンら

    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

    ピックアップ

    関連記事

    新着記事

    言語を選択

    私と映画Vol.7 メニコン 田中英成社長
    金曜映画ナビ
    八雲ふみねの What a Fantastics!~映画にまつわるアレコレ~
    能條愛未の「乃木坂週刊映画」
    スペシャル 写真家『早田雄二』が撮影した銀幕の女神たち
    antenna

    人気記事ランキング

    シネマズ公式ライター

    • 藤井隆史
    • Yamazaki
    • 川口裕樹
    • 葦見川和哉
    • kaiya

    シネマズ公式チャンネル

    教えて goo

    情報提供元:教えて goo