キスの心得、そしてサプライズ!?映画『バースデーカード』の見どころ

バースデーカード02

(C)2016「バースデーカード」製作委員会

2015年下半期、国産アニメーション映画の大躍進に押され気味な日本の実写映画ではありますが、この秋は大逆襲と言わんばかりの良作話題作が続々公開されていきます。その中で正直、さほど意識していなかったにも関わらず、いざ見終わったらこの秋の大穴ともいえるさわやかな感動をもたらしてくれる作品に出会いました……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.167》

橋本愛&宮﨑あおい主演の『バースデーカード』です!

この世を去った母親と思春期の娘との
ファンタスティックな交流

バースデーカード03

(C)2016「バースデーカード」製作委員会

映画『バースデーカード』は、若くして病魔に侵された母親が、娘と息子、ふたりの子供に20歳までのバースデーカードを書き遺し、この世を去っていった……後の娘の成長を描いた作品です。

正直なところ、最初は「また難病ものか……」と勘違いし、さほど食指が動かなかったのですが、その監督が『キトキト!』(07)でデビューし、『旅立ちの島唄~十五の春~』(13)など、小品ながらも良作を確実に世に送り出してきた期待の若手監督・吉田康弘と知り、俄然見る気になって鑑賞したところ……これが大当たり!

最初に記したように、これはこの世を去った母と、これからの人生を歩み続ける娘との、いわば異次元的な心の交流を描いたものであり、ある意味ファンタスティックな、ある意味ヒューマニスティックな映画なのです。

吉田作品には時空を超越したSFジュブナイルの快作『江ノ島プリズム』(13)がありますが、個人的にはそのテイストに近いファンタジックな情緒と感動の融合が図られているようにも思えます。

母親に扮するのは宮﨑あおい。永遠の少女のように歳を感じさせない彼女の愛くるしい存在感は、作品全体を覆いつくしているかのようで、死してなお子どもたちに毎年影響を与え続けいくあたりの設定に、まったく違和感がありません。

娘には3人の子役を経て、橋本愛が扮しています。大のシネフィルでも知られる彼女が出演を決めた作品だけあって、一見前向きな思春期映画の王道のようでいながらも、その背後には常に母の影がつきまとい、ただ単に母への想いを露にしていくだけでなく、時に焦燥や反発といった繊細なジレンマまでをも巧みに体現しています。

微笑ましい手紙の内容と
サプライズに満ちたクライマックス!

バースデーカード09

(C)2016「バースデーカード」製作委員会

亡き母から毎年届く手紙の中には、何と「キスの心得」なんてものもあります⁉
(しかも図解つき! また、この年の母からの誕生日プレゼントも心憎いものがあります。イメージトレーニングは欠かさずに!)

母の故郷へ赴くミッションを与えられ、そこで彼女の同級生たちと出会い、母の青春時代(キーワードはピンクレディ!)にも触れることになります。

こういったささやかなエピソードの数々には、ちょっとした冒険映画のようなワクワク感もみなぎっています。

こうして娘はめでたく20歳を迎え、感動のフィナーレ!

……と思いきや、映画はまだまだ終わりません。

真のクライマックスは、実はこれから!

ヒントだけ記しておくと、それは現在、谷原章介が司会を務める……ああ、これ以上はネタバレになるから言えない!

そして、さらにさらにサプライズが……!

本作の成功は、最初に母の死という哀しみをベースに置きながら、ちょっとしたサプライズに満ちた子供たちの日常を微笑ましくもかっちり計算しながら展開していく脚本の良さと、それを体現していくキャスト陣の柄に合った好演、そして彼女たちを優しく見据える吉田監督のキャメラ・アイにあると思えます。

メインとなる母と娘の絆の一方、父親(ユースケ・サンタマリア)と息子(須賀健太)もそれなりのスタンスで心地よく描かれているので、特に娘を持つお父さんたちも溜飲が下がることでしょう。

また本作品は原作ものではなく、オリジナル脚本の映画化であることも、最近の日本映画界メジャーとしては異例の快挙とも思えます。こういった作品が成功してこそ、今後の日本映画の企画の幅も広がっていくようにも思えてなりません。

娘を持つ母、母を持つ娘はもちろんのこと、それ以外のすべての層にもオススメの、この秋の秀作。さりげなくも映画通はチェックしておかないと、見逃すとあとあと後悔する快作です!

(文:増當竜也)

    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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