疑問が残る『X-MEN:アポカリプス』、まさかの事態の『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』

全米興収ランキング(5/27〜5/29付)

1『X-MEN:アポカリプス』(New)
2『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(New)
3『アングリー・バード』(↓)
4『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(↓)
5『Neighbors 2 : Sorority Rising』(↓)
6『ジャングル・ブック』(↓)
7『The Nice Guys』(↓)
8『マネー・モンスター』(↓)
9『Love & Friendship』(↑)
10『ズートピア』(↓)
(速報値/Box Office Mojo参照)

今週末はサマーシーズンのスタートを告げる超大作2本が封切られ、大いに盛り上がりをみせる、はずだったのだが、ちょっとこれは想定外の結果である。ランキングこそ1位に『X-MEN:アポカリプス』、2位に『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』と、華々しくワンツーを切ったが、興行成績で見るとお世辞にも良いとは言えない。

X-MEN:アポカリプス (C)2016 MARVEL & Subs. (C)2016 Twentieth Century Fox

 『X-MEN』シリーズの前作『フューチャー&パスト』は初週末で9000万ドルを超え、最終興収は2億ドルを突破する成功を収めた。もっとも、制作費が2億ドルなので、それをかろうじて超える程度という見方もできるが(世界興収では7億5千万ドル弱稼いだのは間違いなく立派ではあるが)、2014年の国内ランキングでは第9位という好成績は侮れない。

ところが今回の『アポカリプス』は、初週末6500万ドル。悪く無い数字だが、まだスピンオフ作品である『デッドプール』の勢いが残っている中で公開される本家が、この数字でいいのだろうかという疑問が残る。その『デッドプール』は初週末で1億3000万ドルを超え、現在は3億6000万ドルと、すでに『X-MEN』シリーズの他のどの作品よりも上回っているのだ。

デッドプール (C)2016 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

となると、満を持して公開される本家が、最終的に1億5000万ドル前後の着地となるスタートを切ったのはあまりにも不甲斐ないのではないだろうか。

配給の20世紀フォックスは、今回の作品の出来に自信を持っていると報じられていたが、批評家からの評価は五分五分。ここから一気にジャンプアップすることも難しいのでは無いだろうか。本シリーズでブライアン・シンガーが監督を務めるのはこれが4度目。その中でも『X-MEN2』と前述の『フューチャー&パスト』は2億ドルを超えている大ヒットとなっているとはいえ、マーベル映画が一世を風靡する前の、シリーズ1作目をかろうじて上回る程度だとかなりの痛手だ。

しかし、それ以上に『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』が期待外れのスタートを切った。非常にわかりやすい言葉で言うならば、やばい。その一言に尽きる。

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 ネタバレ (C)2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 いくら同じ週に超大作がもう一本公開されたからといって、前作は1億ドルを超えるスタートを切って、最終的に3億ドルを超えるメガヒット作だ。そんな映画の続編が、初週末2800万ドルというのだから、今年のサマーシーズンの出鼻を見事に挫くスタートである。今年大成功を連発してきたディズニーが、まさかの事態である。

参考までにこの数字がどのぐらいのものかというと、今年公開された他の作品で言えば現在も全米で公開中で、30位前後を行ったり来たりしている『The Divergent Series : Allegiant』(『ダイバージェント』シリーズの3作目なのだが、そういえばまだ日本公開が決まっていないはず)の初週末2900万ドルを下回る。ちなみに同作は11週目の現在で6600万ドルといったところだ。

毎年5月の最終週は、それなりの大作がいまいちスタートダッシュを切れないことが恒例となっているが、それでも3年前の同じ時期に公開された『グランド・イリュージョン』の1作目がスマッシュヒットを持続させて1億ドルを辛うじて超えてきた。さすがに1億ドルは最低でも超えて欲しいところではあるが、それももしかしたら厳しいのでは無いだろうか。

その原因がどこにあるのか。まず最大の要因は、本作の世界観の要となるティム・バートンが監督を離れ、プロデュースに徹したことにあるのだろう。ジョニー・デップとヘレナ・ボナム・カーターに派手なメイクをさせることが最近の主流になってしまっているバートン作品ではあるが、それを他の監督(今回は『ザ・マペッツ』のジェームズ・ボビンが務めている)がやったところで、個性が空回りしてしまいかねない。それに加えて公開直前で舞い込んだ、ジョニー・デップのDV離婚騒動も影響しただろう。案の定、批評家からの評価は辛辣なものが並び、中にはミア・ワシコウスカを評価するものや、前作と比較してまともな出来栄えであると評価する媒体はあるものの、多くが圧倒的否定派に回っているのが現状である。

1億7000万ドルの制作費を国内で回収するのは到底不可能である。ただ、頼みの綱である海外興収にはいくらか期待が持てる。すでに国内の3倍近い興収を叩き出しているので(それでもまだ合計で1億ドルを超えていないが)、おそらくは、赤字を最小限に抑えることは可能だろう。もちろん、前作を超えることはありえないだろうが。

さすがに今年はヒット作が連発する上半期であったから、このぐらいの失敗はメリハリがあって、数字を追いかけてる身としてはなかなか楽しめるものである。数週間後には、先に公開している『シビル・ウォー』『ジャングル・ブック』『ズートピア』のほうが『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』よりも上位にいることは間違いないだろう。ベストテンに4作品が入ったディズニーも、それぞれまったく目標が異なる。

世界興収11億ドルを超えた『シビル・ウォー』は、国内でも『デッドプール』を超えて今年公開作ナンバーワンの座を奪取した。さらに記録を伸ばして『アイアンマン3』を超えることができるだろうか。

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (C)2016 Marvel.

一方、公開7週目に入った『ジャングル・ブック』は、ついに13週目の『ズートピア』を国内興収で上回ることに成功したのだ。まさにハイレベルな戦いを見せるディズニーだけに、正直今回のアリスの失敗は大きな問題ではないだろう。

ジャングル・ブック (C)2016 Disney Enterprises,Inc.All Rights Reserved.

 気になるところでは、公開3週目の『The Love & Friendship』がベストテンに急上昇していることだろう。18世紀を舞台にしたロマンティック・コメディの本作は、全米の映画祭を転々としての限定公開から、中規模公開に踏み出し、なかなかの数字を出した。『メトロポリタン』や『ダムゼル・イン・ディストレス バイオレットの青春セラピー』のホイット・スティルマン監督が、『ラスト・デイズ・オブ・ディスコ』でもタッグを組んだケイト・ベッキンセールとクロエ・セヴィニーを再び迎えた。批評家からの評価も高く、これはサプライズヒットとなる器を備えている。日本公開も有り得そうだ。

来週には、2年前のサマーシーズン真っ只中に2週連続首位を勝ち取った『ミュータント・タートルズ』の続編、『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>』が拡大公開される。歴史的メガヒット作が相次ぐ2016年、まだ夏は始まったばかりだ。

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(文:久保田和馬

    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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