全米特大ヒット!『ファインディング・ドリー』はなぜこれほどの大成功を収めているのか?

全米興収ランキング(7/1〜7/3付)

1『ファインディング・ドリー』(→)
2『ターザン:REBORN』(New)
3『The Purge : Election Year』(New)
4『BFG :ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(New)
5『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(↓)
6『Central Intelligence』(↓)
7『ロスト・バケーション』(↓)
8『Free State of Jones』(New)
9『死霊館 エンフィールド事件』(↓)
10『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』(↓)
(速報値/Box Office Mojo参照)

独立記念日の週末、オープニングを迎えた3作品はいずれも今年のサマーシーズンの注目作であった。

2位に初登場した『ターザン: REBORN』は、『ハリー・ポッター』シリーズの後半を手がけたデヴィッド・イェーツの新作。このあと年末には『ハリー・ポッター』のスピンオフにあたる『ファンタスティック・ビースト』3部作をスタートさせる彼にとって、本作はワーナーとの関係性をより強くするための重要な作品。

ターザン:REBORN (C)2016 Edgar Rice Burroughs, Inc. and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

結果的に2位スタートになったとはいえ、先週公開された『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』を超える1館アベレージを記録し、普通ならば1位スタートも充分に有り得る興収だったことを考えれば、作品のムード的にも、今ひとつ伸び悩んでいる批評を気にする必要もないだろう。『ファンタスティック・ビースト』への期待は、特別上がりはしないにしても、1ミリも下がることはない。

これまで『ソウ』や『パラノーマル・アクティビティ』など、低予算スリラーシリーズ映画が一時代を築いてきたが、ここ3年のトレンドになりつつあるのはやはり『パージ』シリーズだろう。3位に初登場した3作目は、前作同様スター俳優の出演はないものの、前作でやや落ちたオープニング興収を盛り返すことに成功した。もちろん、1000万ドルという低予算のバジェットは瞬く間に回収ができ、この流れならさらにシリーズが続く可能性も否定できないであろう。この手のシリーズは、回を追うごとに惰性が強くなってくる感が否めない中でも、1作目から監督を始め制作陣が変わらず進んでいることはシリーズ映画としてはとても重要なことである。

そんな2作とは裏腹に、もう一本の今週の期待作であったスティーブン・スピルバーグの『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』はもうひと伸び欲しかったところだろう。

BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント (C)2016 Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

世界的ヒットメーカーのイメージが強いスピルバーグとはいえ、最近のビッグフランチャイズとは一線を画しているだけに、今作の公開規模は『クリスタル・スカルの王国』『宇宙戦争』に次ぐ歴代3番目の大きさ。しかし、それでも初週末2000万ドルに届かなかったことは少々不甲斐なさが残る。5年前に公開された『タンタンの冒険 アドベンチャー号の秘密』ほどの出遅れではないにしろ、この遅れを取り戻すには少々時期が悪いか。いずれにしても、息の長い興行が期待できるのは唯一の救いだ。

『ファインディング・ドリー』はなぜこれほどの大成功を収めているのか

強力な新作を相手にもせず、またしても悠々自適に首位を独走する『ファインディング・ドリー』は、瞬く間に前作の興収を上回った。

ファインディング・ドリー (C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

すでにピクサー史上最高興収4億1500万ドルを記録している『トイストーリー3』をも超える準備に入っているのだ。週末興収は4000万ドルを超えて、3週目の週末成績としては歴代8位を維持している。前週末からの落ちが4割程度であることを考えると、来週は2500万ドル前後で、トータル4億ドルの壁を超えるところまでだろうか。

しかしながら、何故これほどまでに『ファインディング・ドリー』が大成功を収めているのか、それが今年最大のミステリーである。もちろん、何度もこの連載で触れているようにディズニーの破竹の勢いの真只中。それでも、サマーシーズンの相次ぐ不発、同じディズニーの『アリス』の失敗、何よりここ数年言われ続けたピクサー神話の崩壊、そして13年というブランクの圧倒的なハンデと、とても記録的大ヒットが生まれる下地はなかったはずだ。

考えられることは、ディズニーの戦略の巧さが最も生かされる作品だということである。他のピクサーの作品は、おもちゃや虫、ロボットなどあらゆる主人公のキャラクター造形があるが、その中でも動物が喋る(虫も動物だが、やはり魚と比べると愛嬌が劣っている)同作は、ディズニーのテイストに最も合致している。その効果で、1作目の公開から13年間という長い時間の中でも、多くのアトラクションが作り出され作品が風化しなかった。元を知らない世代にも作品の印象を付けて来たのである。

例によって、同配給の『スターウォーズ/フォースの覚醒』や『シビル・ウォー』の成功で、トレーラー効果を獲得したこともひとつ。当時を知っている世代にも続編を認知させ、結果的に全世代に対応させることができた。さらに、アニメーションといえども海中の3D劇映画はほとんど作られてこなかったことから考えれば、映画の世界観を共有する3Dシステムを愛する観客の興味も駆り立てるのである。

現に、他のサマーシーズンの作品はある程度客層が絞られ、単純に作品世界への臨場感を期待した3D効果ばかりが目立つだけに、このハッキリとした差にも納得ができる。そう考えると、来週公開の『ペット』、再来週公開の『ゴーストバスターズ』は、スタートこそ超えたとしても、苦戦を強いられることは必至だろう。

(文:久保田和馬

    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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