『ミニオンズ』スタッフが贈る『ペット』がアメリカで1億ドル超えの大ヒットを記録!

全米興収ランキング(7/8〜7/10付)

1『ペット』(New)
2『ターザン:REBORN』(→)
3『ファインディング・ドリー』(↓)
4『Mike and Dave Need Wedding Dates』(New)
5『The Purge : Election Year』(↓)
6『Central Intelligence』(→)
7『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(↓)
8『BFG :ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(↓)
9『ロスト・バケーション』(↓)
10『Sultan』(↓)
(速報値/Box Office Mojo参照)

『怪盗グルー』シリーズでおなじみのイルミネーション・エンターテイメントの最新作『ペット』が、オープニング週末1億ドル超えの大ヒットを記録して1位デビューを果たした。

ペット (C)Universal Studios.

 批評も興収も辛辣なものばかりが目立つ今年の夏興行で、『ファインディング・ドリー』につづいて勝利したのはまたしてもアニメーションということになったわけだ。

驚くべきはこのアニメーション映画史上6位というオープニング成績だけではない。これまでイルミネーション・エンターテイメントが製作したアニメはいずれも、最近のフルCGアニメとしては珍しいほどのローバジェットで製作されていることだ。

最近のディズニー作品が1億ドルを超す製作費で作られるのはスタジオパワーとしては当然のことではあるが、たとえばドリームワークス製作の大ヒットシリーズ『シュレック』は、第1作目こそ6000万ドルで作られたが、ヒットしたことに味をしめたのか2作目は一気に1億5000万ドルもかけたわけだ。

その点、『怪盗グルーの月泥棒』が6900万ドルのバジェットで世界興収5億4000万ドルのヒットを遂げても、その後の2作も7500万ドル前後の製作費のまま、世界興収は10億ドルほど稼いでいるイルミネーション・エンターテイメントは、低予算でもヒット作が生み出せることを体現しているわけだ。

今回の『ペット』も7500万ドルの製作費。何の危なげもなく最初の3日間で製作費を回収し、どんどんと利益を伸ばしていく。続編製作もあるのか、はたまた本作で得た利益が来年の『怪盗グルー』の3作目に回るのか。年末に公開が控える『Sing』を始め、再来年には『グリンチ』のアニメ版も待っているだけに、このスタジオの今後の動きから目が離せない。

そんな『ペット』旋風にやや押され気味に、3位に陥落してしまった『ファインディング・ドリー』ではあるが、『ターザン:REBORN』と僅差での3位なので、もしかすると確定値では2位に浮上する可能性も充分にある。すでに4億2000万ドルを超えて今年最大のヒット作へ。そして、アニメ史上ナンバーワンの『シュレック3』を今週中に超える見込みが出てきた。

ファインディング・ドリー
(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

そろそろ次のアカデミー賞にも目を向ける時期になってきたわけだが、長編アニメーション賞は大接戦となる。ディズニーはおそらく『ファインディング・ドリー』と『ズートピア』の二大看板を擁して、イルミネーションは『ペット』。この3作で受賞争いを繰り広げるだろう。とはいえ、オリジナル作品が強い部門。過去に候補に挙がっている作品の続編は『カンフーパンダ3』や『アイス・エイジ』の新作など、相次いで落選する可能性を持っており、その流れを汲むと、いくら大ヒットとはいえ『ファインディング・ドリー』も油断ができないところであろう。

これだけの大ヒットを続ける『ファインディング・ドリー』の気がかりな点は、来春のオスカーレースだけではない。現時点での海外興収が2億ドルほど。前作『ファインディング・ニモ』をはじめ、昨年の『インサイド・ヘッド』など、これまで5億ドル前後の海外興収をあげるピクサー作品としては、異例の低さである。

ましてや、最近は中国市場の強さで跳ねあげられる傾向が顕著ではあるが、その中国でもまだ3600万ドルほどしか稼げていないのが現状だ。つい先月に上海にディズニーランドがオープンして、ディズニーフィーバーが起こっていてもおかしくないだけに、その時期と重なる本作の中国市場での不振は、まったくもって原因不明なところである。

ちなみに海外興収といえば、すでに日本でも公開されている『ウォークラフト』が、中国で2億ドルを超える大ヒットを記録していて、アメリカ国内興収と海外興収の比率が1:9という、大作映画にしては珍しい数字が最近の見所となっている。つまり、本国アメリカでは大失敗しているけれど、IMAXや3Dに敏感な中国では記録的な大ヒットというわけだ。まさか『ファインディング・ドリー』はこの映画に観客とシアターを取られてしまっているのかもしれない。

限定公開作として今週38位に初登場したのが『海街diary』。昨年のカンヌでのお披露目から海外評価も高い同作が、日本公開から1年を経てようやくアメリカでも公開となった。今年春に全米公開となった河瀬直美の『あん』が1館での公開で4630ドルのオープニングだったのに対して、『海街diary』は3館で計27000ドルほど。館アベレージ的にはちょうど倍ぐらいということだ。
これまで日本映画は全米公開されてもアニメーション以外で1000万ドル超えとなったのは『ゴジラ2000ミレニアム』だけのようだ。まだまだ日本映画がアメリカで受け入れられるには時間がかかるのかもしれない。

さて、来週は27年ぶりの続編となる『ゴーストバスターズ』が登場。20年ぶりの続編だった『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は撃沈し、13年ぶりの続編の『ファインディング・ドリー』が大躍進を遂げる中で、果たして同作はどちらに転ぶのだろうか。

(文:久保田和馬

    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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