予想外の大ヒット!何故新たな「ファイナルファンタジー」は土下座して謝りたくなるほどの傑作なのか?

KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV
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この夏の映画興業界で、予想外の健闘を見せている映画、それがこの「KINGS GLAIVE:FAINAL FANTASY.XV」だ。

7月9日に公開された本作の、初日・二日目の興行収入は、残念ながらランキングの第10位だったものの、公開館数がわずか44館であるため、1スクリーンあたりの興業収入では他の大作を押さえて第1位!更には、公開初日と二日目の「ぴあ映画初日満足度ランキング」でも、同時期に公開された新作映画を押さえて、堂々の1位を獲得!現在劇場によっては、土日にチケット完売の回も出ている状態の本作。遂には、公開10日間で観客動員7万人、興業収入は1億円を突破と、未だにその成績を伸ばし続けている。

とにかく、「アクションが凄い!」、、「ストーリーに泣いた!」、「普通に映画としてよく出来ている!」など、その高評価を一度はネットで目にした方も多いのではないだろうか?

本作「KINGS GLAIVE:FAINAL FANTASY.XV」は、ゲームとして今年の9月に発売される「FAINAL FANTASY.XV」と、同じ登場人物・同じ世界観で製作されたもう一つの物語だ。

今回自分が鑑賞したのは、TOHOシネマズ錦糸町、日曜朝9時の回。朝一番の上映にも関わらず、客席はほぼ満員。場内は意外と男女のカップルも多く、観客の年齢層も子供から大人まで幅広い層が来場されていた。実際、エンドクレジットで席を立つ人は皆無。上映終了後に劇場パンフを購入した人は、その数およそ30名以上(ちゃんと計測済み)。なるほど、たしかに劇場でのヒットは間違い無いようだ。

ストーリー

代々伝わるクリスタルの守護を得て、魔法文明によって繁栄を遂げた「ルシス王国」と、機械文明と技術力によって繁栄を遂げた「ニフルハイム帝国」。

領土を巡って激しく対立する2大国は、既に長年に渡って激しい争いを続けていた。ルシス国王直属の特殊部隊「王の剣」の優秀な一員であるニックスも、ニフルハイム帝国の侵攻で故郷の国を失い、今は移民となつた自身とルシス王国の未来のために、日夜激しい戦闘に身を投じていた。

そんなある日、ニフルハイム帝国の使者より、休戦協定締結の提案が届けられる。親交の証として、かってルシス国王が止む終えず置き去りにし、12年間ニフルハイム帝国に囚われていた、かっての友好国テネブエラ元首の令嬢ルナフレーナを、ルシス王国の王子であるノクティスの花嫁として差し出すとの申し出に、ルシス国王は2国間の休戦協定調印を決意する。

しかし、その裏ではニフルハイム帝国の巧妙な陰謀が隠されていた。刻一刻と調印式の時間が迫る中、ルナフレーナの警護を命ぜられたニックスは、果たしてこの陰謀から王国を救うことが出来るのか?

映画の内容そのままに、フルCG映画の未来に希望を与えた本作!

公開規模の問題もあり、当初さほどの成績を上げていなかった本作が、公開2週目にしてこれほどの伸びを見せた理由は何か?

確かに、本作のCGのクオリティは高く、特に日中の街中でのシーンは完全に実写としか見えないほど!だが、ただ単にCGが綺麗で良く出来ているだけでは、これほどの動員増に繋がるとは思えない。そこにあるキーワードは、「自然な表情」だと言えるだろう。

今までどうしても違和感のあった頬の筋肉の硬さ・のっぺりした感じが、今回は改善されており、肌の質感の「しっとり感=血が通っている感」が上手く表現されている。
物語の世界に自然に溶け込み、予想以上に自然な表情を見せる本作のキャラクターには、一般の映画ファン層も「不気味さ」や「違和感」を感じることが少なく、その分物語の世界に入り込みやすかったのではないだろうか。

いまだに世に根強く蔓延している、フルCG映画に対しての不信感とトラウマ。特に大きく影響しているのが、2001年に公開された前作「ファイナルファンタジー」の失敗だと言える。この時の失望体験が、多くの映画ファン・ゲームユーザーに、今回の映画版に対する一種の「警戒感」を与えていたのは間違いない。

公開後に広まり始めた高評価や興業的なヒットの情報が、これらの潜在的観客層の呼び込みにプラスに働いた点がまず一つあげられる。

果たして正義とは、理想とは何か?重厚な人間ドラマが展開する!

もう一つ上げられるのは、ゲームユーザーだけでなく、より多くの観客層に楽しんでもらいたいという、製作者側の強い意志だ。

例えば、オープニングで描かれるのは、物語の発端となる12年前のある悲劇。この時点で観客は、この作品が綺麗なCGが見所なだけの映画ではなく、豊かな人間ドラマと親子の運命を描いた、大人の鑑賞に堪えうる作品だと気付かされることになる。

このように、まず静かで重厚な物語を印象付けることで一般観客を引き付け、そこから一気にルシス王国対ニフルハイム帝国の、砦をめぐる大攻防戦を描くことで、今度はゲームユーザーの期待にも応えるなど、確かにこの冒頭部分だけでも、多くの観客を取り込もうとする工夫は感じられた。

特にこの戦闘シーンに登場する敵の生物兵器の数々と、王国側の特殊部隊「王の剣」が持つ瞬間移動の魔法を使った戦いは、昔ゲームをプレイしていたものの今は離れてしまった人にも、きっとゲームをプレイする感覚を思い出させてくれることだろう。投げた剣が到達した場所にしか瞬間移動出来ないため、敵と戦いながら何度も小刻みに剣を投げてはワープする様子は、自分が実際にコントローラーで動かしている気持ちにさせてくれるほどだ。

自身の故郷を追われたことを恨み、移民という自身の立場に不満を持つ者と、新たな転地を自身の故郷として守ろうとする者。そして、身近な存在を救えなかった過去、身近な存在に見捨てられた恨みに、未だに縛られ続けている者たち。

本作で描かれるのは、彼らの未清算の過去への決着と贖罪の物語。そして、自身を犠牲にしてもなお、未来に繋げなければならない「明日への希望」だ。
自分の愛する者を守れず見捨てた過去にいつまでも苦しめられる者たち。果たして彼らに魂の救済は訪れるのか?

そこに展開する物語は、ラノベ的展開やゲームの世界観ではなく、あくまでも残酷で現実味を帯びた内容になっており、見ていて胸が締め付けられるほどだ。

ゲーム弱者の自分でも、涙腺決壊させられた!

ルシス王国と外界を繋ぐ北ゲートの衛兵であるペトラと、主人公ニクスと同郷の親友で「王の剣」の一員でもあるリベルト。この二人の脇役が物語の終盤で取る行動!実はこの部分こそが個人的に燃えたし、泣かされた名シーンだった。

まずペトラ。名も無き衛兵の一人でありながら、仕事への誇りと王への忠誠心に厚いペトラは、移民であるニックスたち「王の剣」に対して偏見を持ち、当初ニックスに辛く当たる。だが、彼が敵の襲撃で危機に陥った時、てっきり嫌な奴だと思っていたこのペトラが、たった一人戦闘車両に乗って助けに来るのだ!

残念ながらすぐにスクリーンからは退場してしまうのだが、ひょっとしてゲームの方にも登場して活躍するのか?だったら絶対にゲームを買ってプレイしよう!そう思わせるくらい、このシーンにはグッと心を掴まれた。

次にリベルト。妹分として可愛がっていた、「王の剣」の一員であるクロウの死が、彼を裏切りへと走らせる。だが、クロウの死が仲間である「王の剣」の策略によるものと知った彼は、やはり車で駆け付けてニックスの危機を間一髪で救い、ニックスの代わりにルナフレーナを安全な場所まで送り届けるため、地獄の戦場と化したルシスの王都を車で爆走する!間接的にとはいえ自分が招いてしまった悲劇への贖罪の見せ場を、ちゃんと脇役にまで用意するという見事に練られた脚本!ここも個人的に凄く燃えたシーンだった。

その他にも、映画の中盤に出て来る、ある死体の登場のさせ方や、終盤の王都を舞台にした車での逃亡シーンでニックスが見せる、ビルの隙間と自動車を使った独創的なアクションシーンは、今まで過去に公開された、どんな実写映画でも見た事が無いし、冒頭の戦いにおいて、空から運ばれて登場する帝国側の生物兵器「シガイ」のあまりの巨大さと、一瞬で「王の剣」の部隊を全滅寸前まで追い込むその攻撃力は、劇場の大スクリーンで観てこそ、その真の迫力が体験出来ると言える。

映画の終盤で、絶体絶命の状況に追い込まれた主人公ニックスが、再び現れたこの「シガイ」に果たしてどう立ち向かい反撃するのか?
そこは是非、劇場でご自分の眼でご確認頂きたい。

最後に

本作で描かれるのは、普遍的な物語である「親子の絆」。そして、自身を犠牲にしてもなお、未来に繋げなければならない「明日への希望」だ!

昨年の「ガルパン」、そして今年のこの「KINGS CLAIVE」という作品の登場によって、「アニメ映画」あるいは「フルCG映画」だから一般の観客層は観に来ないだろう、そんな固定観念で最初から公開規模を限定縮小するような事態が、きっと今後は改善されて行くと信じたい。

とにかく、本作のような大傑作が全国たった40館でしか上映されない状況に対して、我々が出来る行動はただ一つ!とにかく劇場に足を運んで、興行側にその反響と影響力を見せ付けることだろう。まだ観ていない方、既に一度観た方も、ぜひとも周りの人を誘って再度劇場に足を運んで頂ければと思う。

(文:滝口アキラ)

    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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