過激過ぎるSEXシーンと大胆ヌード、「ヒメアノ~ル」佐津川愛美の女優魂を見よ!

ヒメアノ〜ル 濱田岳 ムロツヨシ (C)2016「ヒメアノ〜ル」製作委員会

代表作「行け!稲中卓球部」や、「ヒミズ」などで知られる人気漫画化の古谷実が、2008年にヤングマガジンに連載した問題作の待望の映画化。それが、この「ヒメアノ〜ル」だ。

連載当時から、そのあまりに過激すぎる暴力描写により、映像化は不可能だと言われてきたが、今回森田剛という強烈な個性と高い演技力を備えた逸材を得て、奇跡的に映像化に成功!公開前から話題集中の本作を、公開初日にさっそく鑑賞してきた。

今回自分が鑑賞したのは、公開初日のTOHOシネマズ錦糸町18時の回。意外、と言ってはなんだが、劇場内はほぼ女性客で満員の状態!作品の過激な内容にも関わらず、ここまで女性が観に来ているという現象は、やはり主演の森田剛人気によるものなのだろう。原作マンガの掲載が8年前、しかも青年誌という点を考えても、今回の女性観客の多さには驚くと同時に、本作のヒットを確信したと言っておこう。

ストーリー

平凡な日常の繰り返しに焦りと苛立ちを感じながら、ビル清掃会社のバイトとして働く岡田(濱田岳)。ある日、職場の先輩である安藤(ムロツヨシ)に、一方的に片思いをしているユカ(佐津川愛美)との恋のキューピット役を頼まれることに。ユカが働くカフェで彼女を偵察する岡田は、偶然そこで高校時代の同級生・森田正一(森田剛)と出会う。ユカから、森田にストーキングされていると知らされた岡田は、安藤と一緒に森田からユカを守ろうとするのだが・・。

ヒメアノ〜ル、この聞き慣れない言葉にこめられた意味とは?

タイトルの「ヒメノアール」。聞きなれないこの言葉の意味は、ヒメトカゲという小型のトカゲの一種のこと。つまり獰猛な小動物のエサとなる、小型の爬虫類を指す。映画の中で描かれる、殺人鬼森田が過去に受けた壮絶なイジメから考えれば、ヒメノアールとは森田自身のことだろう。ただ、越えてはいけない一線を越えた時点でその関係は逆転し、エサである側が今度は捕食者となり、新たな「ヒメアノ〜ル」を求めて暴力の連鎖が続いていく。

つまりヒメノアールとは、最終的に捕食者がそばにいるのに気付かない、我々一般の人々全体を指すのではないか?

平和な生活を送るのが当たり前となっている人々には、様々な危険と狂気がすぐそばに存在する事など、おそらく想像も出来ないのだろう。

実際、本作の主人公の岡田も、先輩の安藤に言われたからとはいえ、過去における森田との接点を忘れていたかのように、自分から森田に接触を持とうとする。過去に囚われ人生が崩壊した森田と、安全圏にいて過去など忘れている岡田。もはや交わることなど無いと思っていた二人の人生が再び交錯する時、かつて「ヒメアノ〜ル」だった森田にとって、岡田はもはや自分にとっての「ヒメアノ〜ル」でしか無かった。そして、今は捕食者となった森田もまた、過去の「ヒメアノ〜ル」としての記憶に悩まされ続けている。果たしてこの捕食関係の連鎖は死ぬまで続くのか?映画オリジナルのラストで描かれるある展開に、監督はその答えを提示してくれているので、ぜひご自分の目で確認して頂ければと思う。

観た人誰もが驚く、その非常に独創的な構成とは?

この映画の最大の特徴、それは非常に独創的なその構成と、映画のタイトルがスクリーンに出るタイミングにあると言える。

前半は、吉田恵輔監督の過去作通りの作風で描かれる穏やかな日常と、そのすぐ近くに存在する恐怖と狂気が、ギリギリで交じり合わない状態が描かれる。

一見コメディにも思える前半部と、恐怖が加速する後半部で全く違う印象となる本作。その急激な切り替えに戸惑いを覚えるとの声が、多数聞かれるのも事実だが、絶妙なタイトルの入れ方によって、その分岐点はちゃんと観客に示されるので、楽しみ方としては「64」や「ちはやふる」のように、最近流行の前後編仕様の映画の後編を観ている、そんな感じで楽しむのが良いのではないだろうか。

実際、映画タイトルが出てからの後半は、殺人鬼森田の凶行が本格化する展開になるのだが、この部分の表現は非常にストレートな暴力描写で描かれるので、突然の暴力に襲われる感覚と、犯人とは全く無関係の被害者という部分でのコワさは観客に伝わりやすくなっている。

ただ個人的には、もう少し観客の想像力に訴えるような「見せないコワさ」があれば更に良かったとも思うが、映画版のラストを考えた場合、今回の選択は正しかったと言えるかもしれない。吉田監督の過去のフィルモグラフィの中でも異質である本作の存在そのものが、今回の独創的な構成を象徴している、そんな気がした。

最大の見所は、暴力描写ではなく、佐津川愛美の過激なSEXシーン!

本作の最大の見所、それは過激な暴力シーンはもちろんなのだが、実はヒロイン役の佐津川愛美が、ギリギリ限界まで挑んだ過激なヌードとベッドシーンにあると言える。
本作でヒロイン役を演じた佐津川愛美は、「横道世之介」や「キカイダーREBOOT」「グラスホッパー」など、数多くの話題作に出演してきたが、ここで魅せた文字通りの体当たり演技により、今後は広く映画ファンの記憶に残ることだろう。見るからに清純な役柄として登場した彼女が、初めて岡田と結ばれることになるシーン。当初は「あ、やはり露出的には、ここまでが限界だろうな」と思わせておいて、そこからの本気の露出っぷりと過激なベッドシーンの展開には驚いた!

特に注目なのは、前半の清純派的な役どころからの、後半の過激な露出とSEXシーンとのギャップの大きさ!過去の出演作品群と比べても、本作に賭ける彼女の熱意と覚悟が伝わってくるほどだ。本作で彼女が魅せた女優魂に応えるためにも、ここは全男子の勤めとして今すぐ劇場に駆けつけるべきだ!と言いたい。

その他に、今回いつもと違うシリアスで重要な役柄を見事に演じた、名優コマキンこと駒木根隆介と、恋人役の山田真歩。この二人の「サイタマのラッパー2」以来の再共演も、昔からのファンにとっては嬉しいところなので、要チェックだ。

実は森田剛版「市民ケーン」だった、「ヒメアノ〜ル」。映画オリジナルの結末に込められたものとは?

本作で用意された、原作漫画とは異なる映画オリジナルのラスト。原作ファンにとっては非常に賛否が分かれるところだが、人間のおかれる境遇が紙一重で天国にも地獄にもなるという恐ろしさ、そして、どこかで食い違ってしまった人生を、せめて過去の幸福な記憶の頃に戻せたなら、監督のそんな主張が感じられて、個人的にはこれはアリだと感じた。

まだ観ていない方のために詳しくは伏せておくが、殺人鬼森田の過去における幸福な思い出の象徴として、エンドクレジット直前に登場する「その存在」。これこそまさに、森田剛版の「市民ケーン」とでも言うべきだろう。(注:これはあくまでも個人の見解です。念のため)

思えば、主演の森田剛は今まで舞台での活躍が目立ったが、意外にもこれが映画初主演となる。

本作で彼が見せる、普段の姿と殺人鬼の姿との落差。例えば、殺した相手の死体のそばで平然と食事をする姿など、テレビで見る森田剛とはあまりに違ったその演技に、観客は驚き、やがて彼から目が離せなくなる。これこそまさに、キャスティングの勝利と言えるだろう。

ありえない程に狂暴な犯行を繰り返す男なのに、ラストのその姿で観客が思わず感情を動かされるのは、森田剛自身の中に元々存在する「少年のようなイノセンス」のせいではないだろうか?森田剛でなければ表現できない、場の空気と説得力。それらを上手く使って映画独自のラストに持っていったことで、本作はただのバイオレンス映画とは一線を隔す作品となることに成功した、と言えるのではないか。

最後に

原作マンガを「ハッピーエンド」版とするなら、映画版は「バッドエンド」版ということになるだろうか。
原作でのラストの展開に不満を持っていた方には、実際に事件が起こっていたらどうなっていたか?その結果が提示されるので、その意味ではスッキリされるかも知れない。

しかし、原作から自分なりのイメージを持っていた人には、映画版ラストの意味が不明だったり、若干の違和感を覚えることもあるだろう。

あくまでも、不幸な出来事によって我々と進む道を違えてしまった存在が森田である、という映画版での解釈には、吉田監督の思いが良く出ていると思うし、主演の森田剛の演技が更に作品に深い余韻を残すことに成功している。どうか、単なる暴力描写が売りの映画だと誤解せずに、主人公森田の暗く深い心の闇を覗くことで、今の自分の幸せを再確認して頂ければと思う。

(文:滝口アキラ

    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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