通販プロレスって!?快作青春映画『いたくてもいたくても』

いたくてもいたくても メイン

(C)東京藝術大学大学院映像研究科

小池栄子の夫・プロレスラー坂田亘がRIZINに電撃カムバック参戦したり、プロレス団体DDTプロレスリングを追ったドキュメンタリー映画『俺たち文化系プロレスDDT』が上映中など、このところプロレスに関する興味深いニュースに触れる機会が増えていますが、ここにまたユニークなプロレス映画が誕生しました……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.180》

それは何と通販プロレスを題材にした『いたくてもいたくても』です!(って、そもそも通販プロレスって、何?)

仕事も痛いが、青春も恋も痛い
そんな若者たちの通販プロレス!

映画『いたくてもいたくても』のストーリーは……とある通販会社が営業不振で倒産寸前にまで追い込まれ、それを打破すべく、破天荒キャラで知られる社長が、ダラダラしがちな社員にをカツを入れて、絆を取り戻そうなどといったわけのわからない思惑で、何とプロレス同好会を設立してしまいました(この社長、元アマチュアのプロレス団体に所属していたので!?)。

映像制作部員のAD星野(嶺豪一)は、先輩の戸田(吉田祐希)らと共に同好会に入らされますが、かつて演劇をやっていた彼を、社長は「そういう経験がプロレスに活かされるんだよなあ」などと訳の分からない理由で気に入って「ベンジャミン星野」とリングネームをつけ、ついにはプロレスと商品紹介を兼ねた番組作りを始めてしまうのでした!

いやはやなんとも、よくぞこのような奇抜なお話を考えついたものだと感心してしまいますが、それをしみじみとした“映画”に転化させながら、次第に現代を生きる20代の男女の等身大の姿を活写する青春エンタテインメントとして屹立していくあたりが実に面白いところです。

どこか低温体質っぽかった主人公がプロレスを通して活気を帯びてくるのと反比例して、同棲中(しかも母親込み!)の恋人・葵(澁谷麻美)との仲がギスギスし始め、そこに先輩まで入り込んでの三角関係。

また、ここでの通販プロレスは“筋書きのあるドラマ”として設定されているのですが、それゆえの感情の微妙な揺れ、さらには時折挿入される主人公らのジョギング・シーンの数々も、どこかシラジラとしながら決して“何か”を忘れているわけではない、若者ならではの想いや焦燥といった心情、そしてなんといっても心の痛みまで巧みに描出しています。

若者たちもさながら、葵の母親(大沼百合子)のゆとりある姿勢や、空気を読むどころではない熱血社長(坂田聡)など、トウのたった大人たちの描写にもニマニマさせられるところがありました。

いたくてもいたくても サブ

(C)東京藝術大学大学院映像研究科

要注目の若き才人
堀江貴大監督

監督は1988年生まれの堀江貴大。15年のオムニバス映画『リスナー』の中で『電波に生きる』を、16年の文化庁委託事業「ndJc:若手映画作家育成プロジェクト」に参加して短編『はなくじらちち』を監督していますが、本作品は彼にとって初の長編映画ともなりました。

もともと本作は2015年度の東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻第九期生修了制作展のために作られたもので、そこで諏訪敦弘や筒井武文などツワモノ映画監督たちから絶賛され、その後TAMA NEW WAVE コンペティションにてグランプリ&ベスト男優(嶺豪一)&ベスト女優(澁谷麻美)賞を受賞。
また今年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016コンペティション部門にも出品され、さらに脚光を浴びることになりました。

これからが大いに期待される若手のホープとして、彼の名前は覚えておいた方がいいでしょう。

それにしても、プロレスしながらどうやって通販商品を紹介していくのか? は見てのお楽しみですが、一体そんなんで売れるのか? といったツッコミは野暮。むしろ眠れない深夜にこんなゆるゆるのアホ……いや楽しい番組を見続けていたら、そのうち電話してみたくなるかもしれません!?

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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