女性同士のSEXから始まる「過激派オペラ」は想像以上に過激!

過激派オペラ01

(C)2016 キングレコード

伝説の人気劇団「毛皮族」の作・演出家である江本純子。彼女が2006年に発表した自伝的小説「股間」を原作に、自ら監督デビューを果たした話題の映画、それがこの「過激派オペラ」だ。

「毛皮族」で上演する作品内容が、元々「エロとバイオレンス」を中心とした物だっただけに、その過激な作風を果たしてどうスクリーンに表現するのか?が、ファンの間でも話題となっていた本作。実際劇場公開前から、その女性同士の過激なSEX描写が話題となり、ネットの某映画サイトでのアクセスランキングが、一時「君の名は。」や「シン・ゴジラ」よりも上位にランクインしていた程!劇団のファンだけで無く、いかに映画ファンの感心も高かったかが判るだろう。

予告編

今回残念ながら、関東ではテアトル新宿でのレイトショー上映のみという、非常に小規模の公開状況にも関わらず、220席の客席はほぼ満員。その客層も実に多岐に渡っていて、劇団のファンと見られる妙齢の女性や、男性一人での来場はもちろん、男女カップルでの来場が多く見られたのは意外だった。なる程、これならネットでの関心の高さも納得出来るというものだ。
さて、公開二週目の土曜日に、男一人で鑑賞してきたその結果はどうだったのか?

ストーリー

女関係にだらしない女性舞台演出家、重信ナオコは、自身の主催する劇団「毛布教」の旗揚げ公演作品、「過激派オペラ」の出演女優オーディションを行っていた。「私、主演女優になりたいんです!」と、絶対の自信で応募してきた岡高春に一目惚れしたナオコは、彼女を主演女優に合格させる。個性豊かな女優が次々に集まって、遂に旗揚げ公演に向けての稽古や準備が始まる中、ナオコの猛アプローチの甲斐あって、ナオコと春も付き合うことに。新たに新居を借りて二人の同棲が始まる中、皆の努力の甲斐あって旗揚げ公演は大好評の内に終了。続いて2作目の「花魁ゲリラ」の製作と稽古も開始され、このまま成功と充実の日々が続くかと思われたのだが・・・。

とても初監督作品とは思えない!江本純子監督の才能に注目

「いったい、どれだけ過激な映画なんだろう?」

期待と不安で上映を待つ観客の前に映し出された本作は、実はいきなり女性二人が全裸で激しく愛し合うSEX場面から始まる!期待を裏切らない、いや予想を遥かに超えた過激過ぎる描写で始まる本作だが、意外にも描き方が女性ならではの視点(具体的には、ディープキスシーンでの音や、執拗な舌の絡め方など)からなので、見ていて気恥ずかしいとか下品という感じではなく、正に「エロい」という言い方が一番ぴったりくる。実際、ナオコが女同士での激しいSEX中に思わず言うセリフ、「生まれてきて良かった・・・」は、絶対男には考え付かないセリフだ、と思ったくらいだ。

今回、役者陣のセリフにはアドリブを採用したそうだが、そのアプローチは見事に成功していると言えるだろう。演じる女優たちの自然さ、そしてその場で生じる「生の緊張感」とが見事にスクリーン上に現れているからだ。

本作での江本純子監督の視点は、全体を通して常に客観的だ。主人公ナオコと春の行動や生き方を肯定も否定もせず、ひと夏の青春群像劇として、共通の目的に向かって集まった仲間達の出会い〜挫折と別れまでを、淡々と描いていく。これは、演劇の舞台を演出する際には主観的だった江本監督が、映画の場合は撮影や編集の段階において、より客観的な視点が必要と感じたため、とのこと。

加えて、「観客が観察的に観る」ということをやりたい、とインタビューで答えている江本監督だけに、ことさらSEXシーンを前面に押し出すことなく、観客が特定の部分に過度に感情移入せず、より観察しやすいように作られている。

本作がセクシャル・マイノリティを扱い過激なSEX描写が登場するにも関わらず、意外と「一種の純粋さ」を感じさせる内容となっているのも、江本純子監督が持つこうした「映画と演劇の違いへの理解=バランス感覚」によるものだろう。

過激派オペラ01

(C)2016 キングレコード

女の幸せ・恋愛よりも、とにかく舞台が生き甲斐な女性達!

とにかく、本作の登場人物たちにとって、「演劇」をやること、「舞台」に立つことが自身の全てであり、恋愛ですらも舞台の前では優先されることが無い。演出のナオコと主演女優の春との同棲生活も、旗揚げ公演後に始まったすれ違いにより、やがてあっけなく解消される。それはお互いの恋愛感情が、舞台を作り上げていく上での障害・デメリットとなってしまったからであり、やはり彼女たちにとって一番大事なのは「演劇」なのだ。

偶然にも、本作で描かれているのはほぼ3ヶ月=ひと夏の出来事。まさに一つの舞台公演の稽古と本番を迎えて次の舞台に臨むまでの期間と一致する。ナオコも春も映画での描写を見る限りでは、この様な「恋愛関係の別れ」からの「劇団からの退団」を繰り返して来たように見える。恋愛か?それとも女優としての活動か?どちらを取るかの選択を迫られた時、迷わず女優を選択する春。ラスト近く、再びナオコの前に現れた春が告げたのは、「次の舞台が決まった」との言葉、ただそれだけだった。そのまま稽古場を立ち去る春と、呼び止めることなく彼女を送り出すナオコ。

彼女たちにとって、恋愛もまた一つの「女性にとっての舞台」に過ぎなかったのだろうか?観る人によってそれぞれの解釈が出来るこのシーン、男性にとっても女性心理の勉強になるので、オススメです!

女優同士の真剣勝負、全てをさらけ出した女たちに注目!

全裸の女性同士の過激なSEXシーンに始まり、時に本音や感情を爆発させる本作の登場人物たち、そして、それを演じる今回オーディションで選ばれた女優たちの顔ぶれにも、是非注目して頂きたい。特に主演の二人、ナオコを演じる早織と、春を演じる中村有沙は、この難しい役柄を見事に自分の物としており、もはやこの二人以外の配役は考えられない程の適役だと言える。

個人的に衝撃だったのが、「侍戦隊シンケンジャー」のシンケン・イエロー役や「宇宙刑事ギャバン The Movie」に出演していた森田涼花が、この過激な作品に出演していることだった。さすがに全裸にはならないものの、女同士のディープキスや下着姿での水かけなど、戦隊ファンにとっては正に衝撃的なシーンの連続なので、ここは是非劇場で!

更に、題材が「演劇」を扱った作品だけに、舞台を中心に活躍している女優陣が大挙出演しているのも、また本作の楽しみの一つだと言える。

例えば、今やチケットが即完売する程の人気劇団、「月刊根本宗子」で強烈な個性を放っていた梨木智香が、役名「くたびれた女」として出演し、女同士のディープキスシーンを披露!更には「劇団新感線」の看板女優である高田聖子も出演するなど、演劇ファンには見逃せない顔ぶれが揃っているので、ここも要チェックだ。

最後に

単館での夜9時からのレイトショー公開のため、都内以外にお住まいの方には鑑賞が難しいと思われるが、上映終了後には出演者のトークショーなども行われているので、時間が許すのであれば是非劇場での鑑賞をオススメしたい。(現時点では、10月末までの上映予定とのこと)
相米慎二監督の「台風クラブ」を思わせるシーンや、つかこうへいの「蒲田行進曲」を思わせるその作風など、演劇ファンだけでなく映画ファンにも十分に楽しめる本作。今後、江本監督がどのような映画を撮って行くのか?是非期待して見続けて行きたいと思う。。

(文:滝口アキラ)

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    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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