『君の名は。』深すぎる「15」の盲点

10.三葉の父は、なぜ三葉に「お前は誰だ」と言った?

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(C)2016「君の名は。」製作委員会

三葉の父は、突然仕事場に訪問して“彗星が落ちてみんなが死ぬ”と言い出した三葉(中身は瀧)を一度は出て行けと非難するものの、彼女が首を掴んだときは「お前は、誰だ!?」と問いただしています。

目の前の娘が違う誰かになっているなんて、いくら食ってかかられたとしても、普通では考えられることではありません。この「誰だ!?」は、三葉の父が宮水家および、故人である妻の双葉が糸守町で“特別視”されていた、常識的ではない価値観および“力”を持っていたことを知っていたからこそ、出てきた考えなのでしょう。三葉の父が宮水家の力に否定的なのは、「妄言は宮水家の血筋か」というセリフからもわかります

なお、三葉の父の経歴や過去は、特別編の小説『君の名は。 Another Side:Earthbound』で読むことができます。これから読む方のために詳細は伏せておきますが、三葉の父が彗星をどう思っていたか、最後にやってきた娘の三葉にどういう想いでいたかが、よくわかるようになっています。ぜひ、読んでほしいです。

余談ですが、彗星の名前の“ティアマト”とは、人間の女性の上半身と蛇の尾を持った姿をしている、メソポタミア神話の女神の名前です。ティアマトの体は2つに引き裂かれて、それぞれが川や山などの世界の素材となったと言われており、まさに名前が“彗星が2つに割れる”ことを暗示していたのです。

11.パラレルワールドが作られていた?

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(C)2016「君の名は。」製作委員会

彗星が落ちた秋祭りの日、2013年10月4日は、劇中で2回繰り返されています。

1回目の2013年10月4日:前日の夜に髪を切ってもらった三葉は学校を休み、夜にさやちんとテッシーと出会って、短い髪型に驚かれる。そして彗星の墜落により三葉は死ぬ。

2回目の2013年10月4日:再び三葉の体に転生した瀧は、朝から学校に行ってさやちんとテッシーと出会い、髪型を「前のほうがよかった?」と軽く流す(笑)。その夕方、御神体にいた瀧(中身は三葉)と三葉(中身は瀧)は再会を果たし、2人はもとの体に戻る。

つまり、三葉は死んでから、同じ日を(夕方から)もう一度“生き直して”いるのです。これは時間が巻き戻ったというよりも、“パラレルワールド”(もとの世界とは関係のない世界)が作られた、と解釈するべきではないでしょうか。

瀧がご神体の口噛み酒を飲んで三葉に転生するとき、瀧は“三葉が生まれてから彗星で死ぬまで”を見ていました。これは、三葉という命が生まれた世界が、再構築されたことを示しているようにも思えるのです。劇中歌「前前前世」の1フレーズ「むしろ0からまた宇宙をはじめてみようか」ともリンクしていますしね。

12.瀧は就職活動にめっちゃ苦労していた!

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(C)2016「君の名は。」製作委員会

瀧は就職活動中「スーツ姿が似合わない」と言われてしまったり、友人と違って内定がまだ0社という屈辱を味わっていました。このとき、街頭のテレビでは“彗星墜落から8年”とあるので、もう10月4日、瀧は通常であれば“内定式”が行なわれているであろう時期まで、就職活動をがんばっていたのです!また、瀧が面接官に必死に主張している内容は、彼が建築物ファンだったこととリンクしていましたね。

そしてラストでは春になり、瀧は無事に就職して、同じ通勤路で仕事に向かうという毎日を過ごしていたようです。ちゃんと就職できてよかった!

また、この“就職活動”という題材は、『君の名は。』と同じく川村元気さんがプロデュースを務めている、10月15日公開の映画『何者』と共通していますね。こちらも本作に負けず劣らずの大ヒットをするのかもしれません。

13.ラストシーンは“雨上がり”だった!

ラストシーンは、階段で、(年上の)三葉が上から、瀧が下から来て、すれ違いそうになるも、瀧が呼び止める、というものでした。

この階段が表しているのは“時間”です。階段の上りが(瀧の)“通常の流れている時間”であり、三葉は瀧のいる時間に行くために階段(時間)を下っていると考えることができるのです。

これは、おばあちゃんの一葉が、「寄り集まって形を作り、ねじれて絡まって、時には戻って、途切れ、またつながり。それが組紐。それが時間。それがムスビ」と語っていたこともつながりますね。時間、人のつながり、それは一期一会の、とても大切なことなのです。

また、ラストシーンはじつは“雨上がり”でした。そこらに、水滴や水たまりが見えるのです。

映画の雨は登場人物の“涙”を表すことがままある(劇中でも瀧が雨の中、ご神体を目指すシーンがある)のですが、このラストでは“雨上がり”だけを映すことで、“これまでふたりは泣いてきたけど、その後の爽やかさだけが残っている”という素晴らしい表現になっています。

14.メインビジュアルにも秘密があった!

以下のメインビジュアルは劇中には存在しないシーンになっています。
君の名は。サブ

(C)2016「君の名は。」製作委員会

瀧は階段を登りながら三葉に「早く来いよ」と言っているようにも見えますが、三葉はそこにポケッと立っているだけ、もしくはその声が聞こえていないようにも見えるのです。これは、三葉が死んでしまい、瀧の時間に追いつけなくなっていたということを示している、彗星が落ちて三葉が死んでしまう世界の物語を示しているのではないでしょうか。

また瀧の体は影に隠れています。中盤のデートで、瀧からの夕食の誘いを断る奥寺先輩が“影のあるところ”に歩いていったのと同じように、これは瀧が“物語から離れている(物語の当事者ではない)”ことを示しているようにも思えました。

しかし、映画の本編のラスト、彼らは時を経て、運命的に巡り合う!これ以上のハッピーエンドがあるでしょうか!

15.この『君の名は。』をスクリーンで観られることは、大変な幸運だ!

中学生の瀧が、ただひたすらに美しい彗星を見たとき、テレビのリポーターは「このような現象を日本で目撃できていることは、この時代に生きる人たちにとって、大変な幸運と呼ぶべきでしょう」と語っていました。

この言葉は、まさにスクリーンでこの映画を観ている、我々観客と重なります。新海誠監督のいままでの作品の魅力が結集し、美しい背景描写、エモーショナルな音楽、感情をつねに揺さぶられるエンターテインメント性、大切なものや人を現実でも探したくなるメッセージ性、何度でも観たくなる奥深さ……『君の名は。』という作品は、作中で起こる“奇跡”と“運命的な巡り会い”と同様に、スクリーンで観られることが“幸運”と呼ぶほかのない、大傑作なのですから。

自分は5回観たおかげでこれらのことに気づけましたが、まだまだ気づいていないことはたくさんあるはずです。ぜひ、本作をリピートする方は、さらなる“盲点”を見つけてみてください!

※本記事は筆者個人の解釈を元にしております。参考としつつ、みなさんなりの解釈を見つけてみていただけたら幸いです。

(文:ヒナタカ)

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    ヒナタカ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」運営中のフリーライター。All Aboutでも映画ガイドとして執筆中。映画に対しては毒舌コメントをしながら愛することをモットーとしています。

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