名匠小林正樹監督、生誕100周年記念!各名作がブルーレイ&DVD発売!

松竹から巣立った世界に名だたる名匠・小林正樹監督。2016年は彼の生誕100年にあたり、特集上映などさまざまな催しが企画されていますが、そんな中で松竹時代の全小林作品がソフト化することになりました。

小林作品といえば、反骨精神みなぎる力作といったイメージが強いかもしれませんが……

キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.148

松竹時代の小林作品は、そんな概念を覆してくれるほどにピュアで美しい作品ばかりなのです!

小林正樹監督(「東京裁判」撮影時)写真提供 芸游会

反戦反骨の精神を裏付ける
ピュアな思想

小林正樹監督は1916年2月14日、北海道小樽市の生まれ。會津八一教授に師事して東洋美術を学び、41年に松竹大船撮影所に入所しますが翌42年1月より応召され、満州へ渡り、宮古島で終戦を迎え、米軍の沖縄嘉手納捕虜収容所を経て、46年11月にようやく復員。

この時期の体験が、後の『人間の條件』をはじめとする彼の強固な反戦の意思を露にした映画作りへと反映されていきます。

大船撮影所に戻った彼は木下惠介監督の名助監督としてならし、52年の中編『息子の青春』で監督デビューを果たしました。

デビュー当初の小林監督は、松竹の王道たる大船調メロドラマやホームドラマを作り続けながら、人が生きていく上での理想と現実のギャップを直視していくうちに、やがてその枠から逸脱しながら社会派的な題材を扱うようになっていきます。

その意味では、小林作品はBC級戦犯を扱った『壁あつき部屋』(53/公開は56年)や米軍基地周辺の愚連隊に犯された女性の悲劇と復讐を描いた『黒い河』(57)、そして反戦映画の至宝ともいえる『人間の條件』6部作(59~61)、封建社会を痛切に批判した『切腹』(62)など、反骨のイメージが強いかと思われます。

しかし、デビュー作『息子の青春』を見ると、これが小林作品? と、わが目を疑ってしまうほどの純粋で明るい家族の交流に驚かされます。これは小林監督が戦後ようやく平和になった日本を祝福し、そこでの青春群像にエールを送っているようにも思えてなりません。

あの頃映画松竹DVDコレクション 息子の青春/まごころ

つづく『まごころ』(53)は、ブルジョアの高校生が薄幸の美少女に片思いするラブストーリー。しかも彼は彼女の名前すら知らず、会話らしきものも交わすことなく、ひたすら自分の胸の内で愛を育み続ける純粋性は、いまどきの少女漫画の映画化の比ではありません。

 

その後も高原の村で世代の異なるさまざまな愛の形をピューリタリズムの精神で描いた『三つの愛』(54)、川崎の小さな酒屋を舞台に、善意も悪意もすべてひっくるめての人生であることを示唆したホームドラマの傑作『この広い空のどこかに』(54)、戦争の惨禍を知る戦後の若者たちの恋をつづった『美わしき歳月』(55)を経て、プロ野球スカウト合戦の闇を描いた『あなた買います』(56)などの社会派へと小林映画はシフトしていきますが、その基本はやはり大船調をベースにした“家族”にほかなりません。

あの頃映画松竹DVDコレクション あなた買います

松竹大船調に基づいた
“家族”の描出

その伝で後の小林映画を見据えていくと、『人間の條件』は夫婦の絆を描いたメロドラマであり、『からみ合い』(62)は、ずばり遺産相続の泥沼合戦を描いたもの、『切腹』(62)も家族のささやかな幸せを奪われた男の復讐劇であり、松竹を離れて撮った『上意討ち 拝領妻始末』(67)は、嫁を横暴な主君から護ろうとする舅と婿のお話なのです。遺作となった『食卓のない家』(86)もまさに家族崩壊の悲劇と再生の希望を謳ったものでした。

一方、小林作品は『泉』(56)『化石』(75)『燃える秋』(78)など、老いのエロティシズムを描くこともあり、その象徴として名優・佐分利信を起用していました。

松竹時代の小林作品からは、そういった彼の原点をとくと体感することができます。

今回のラインナップは以下の通り。

(8月3日)
『人間の條件』(全六部ブルーレイBOX)

(9月7日)
『息子の青春』『まごころ』(カップリングDVD)
『三つの愛』(DVD)
『この広い空のどこかに』(DVD)

(10月5日)
『壁あつき部屋』(DVD)
『美(うるわ)しき歳月』(DVD)
『泉』(DVD)

(11月2日)
『あなた買います』(DVD)
『黒い河』(DVD)
『からみ合い』(DVD)
『化石』(DVD)

映画監督小林正樹 生誕100年記念プロジェクト

また東宝からも7月に『いのちぼうにふろう』(71)のDVDがリリースされましたが、これも若い男女の恋路を成就させるべく、命を棒に振ってしまう無法者たちのピュアな心意気を描いた時代劇でした。

なお、小林監督の生誕100周年プロジェクトは、ほかにも世田谷文学館にて《生誕100年 映画監督・小林正樹》企画展の開催(~9月15日)や、市立小樽文学館にて企画展《映画監督小林正樹と小樽》(~8月21日)、また書籍『映画監督小林正樹』(岩波書店より10月発行予定)や、秋には東京ユーロスペースにて特集上映も予定されています。

この機会にぜひ名匠の純粋なる映画の真髄に接していただければと思います。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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