2016年07月30日

12年ぶりの復活!怪獣王ゴジラの歩んだ道を振り返る!!

12年ぶりの復活!怪獣王ゴジラの歩んだ道を振り返る!!

■「映画音楽の世界」

シン・ゴジラ 4DX

(C)2016 TOHO CO.,LTD.


みなさん、こんにちは。

いよいよ12年ぶりとなる、日本オリジナルのゴジラ最新作『シン・ゴジラ』が公開となりました。今や世界に誇る怪獣王となったゴジラ。海を渡ったハリウッドではローランド・エメリッヒ版に続きギャレス・エドワーズ版が製作され、本家日本での復活の機運が高まっていた、まさに映画史にその名を残すタイトルです。

ゴジラはいかにして世界を制したのか。今回の「映画音楽の世界」では、ゴジラ映画から四作品を切り取り、その音楽とともに作品を紹介したいと思います。

すべてはここから始まった。『ゴジラ』(1954)


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終戦からわずか10年足らずで製作された記念すべきゴジラシリーズ第一作。監督は『パシフィック・リム』でもクレジットされ、再び脚光を浴びた本多猪史郎。特技監督は円谷英二。
60年以上も前に製作されたモノクロ作品とは思えないその精巧なミニチュアや合成を駆使した特撮映画の金字塔。戦争と核を色濃く反映した物語のもとに誕生した怪獣がゴジラであり、その脅威を徹底的なまでに大災害として描いています。逃げ惑う群衆。子の手を取り死を覚悟する母親。無慈悲の業火に包まれる東京など、戦後間もないからこそ表現された描写がリアリティーを生み出しています。
特筆すべきは本作は特撮だけでなく、人間ドラマとしても優れていること。特に映画の主要人物である芹沢博士が取った最後の行動はのちのシリーズにも影響を及ぼし、彼が共にゴジラ討伐に向かった尾形に残した台詞に胸を締め付けられます。
そして、ゴジラの脅威を音楽で表現したのが伊福部昭。中でも有名なゴジラのテーマ曲はシンプルなメロディーながら、ブラス、弦楽器を重低音で響かせ、あまりにも巨大な生物の地響きを観客に追体験させることで、視覚に大きなインパクトを残したゴジラ同様に聴覚にそのフレーズを永遠に刻み付けることになりました。

時代の終焉──。『ゴジラvsデストロイア』(1995)


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初代ゴジラのストーリーを色濃く受け継いだ作品であり、初代を除けばゴジラの明確な死がシリーズ中唯一描かれた作品。監督は大河原孝夫、特撮監督は川北紘一。
1984年から始まった「平成ゴジラシリーズ」の最後を飾り、体内の炉心溶融(メルトダウン)が始まり内側からマグマのように赤く染まったゴジラの姿が衝撃的だった本作。ゴジラシリーズに一つの区切りをつけるべくオープニングから初代ゴジラを意識した作りになっていて、敵怪獣となるデストロイアもまた第一作でキーアイテムとなったオキシジェンデストロイヤーが深く関わってきます。
平成ゴジラシリーズ世代の筆者としては(特にvsビオランテが好き)、ゴジラの最期にショックを受けたものです。初代ゴジラが恐怖の象徴であるなら平成ゴジラは対怪獣テイストが強く、言わば子供心に無敵のヒーローにも見えたものです。だからこそ、ゴジラの最期に寂しさを覚える一方で、映画の最後の最後に描かれたシーンの美しさと高揚感にゴジラの未来を見ることになりました。
音楽を担当した伊福部昭は、これがゴジラシリーズへの最後の登板となりました。平成ゴジラシリーズではvsキングギドラ以降を担当し、現代的に洗練されつつしっかりと伊福部マーチは健在で、やはりゴジラの音楽を生み出せるのはこの巨匠しかいないと思えただけに最後の作品となったことが残念でなりません。

黒歴史? エメリッヒ版『GODZILLA』(1998)


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いよいよゴジラが海を渡り、ハリウッドでリメイクされたのがローランド・エメリッヒ監督による『GODZILLA』……なのですが、期待をあおるマーケティングが裏目に出たのかいざ公開されるとイグアナとしか思えないゴジラのデザインや、コメディー感を出したストーリーに批判が続出。興行収入とは裏腹に各所で袋叩きに遭うという結果に。
正直、筆者は好きなんですけどね。前作『インデペンデンス・デイ』でミニチュア撮影を巧みに展開し徹底した破壊描写で魅せたエメリッヒ監督はある意味納得の人選であり、日本以上に「巨大怪獣と対峙する人類」の視点を描いていました。確かにゴジラのデザインには首を傾げたくなるものの特撮怪獣映画としてはよく出来ているのではないでしょうか。
音楽を担当したのはデヴィッド・アーノルドですが、それよりも公開前から話題だったのが、L’Arc~en~Cielが楽曲を提供したことでしょうか。ダークな世界観の[浸食~lose control]がその曲で、しっかりとサウンドトラック盤にも収録されていたのですが、大半の観客や提供した本人たちですらどの場面で流れたのか解らなかったというのだから、なんとも勿体ない話ではあります(ちなみに使用された場面は漁船が襲撃を受ける直前のシーン、船内のBGMとして流れています)。

ミレニアムシリーズでの異色作、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001)


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『ゴジラ2000 ミレニアム』から三度目のシリーズが始まり、その中でもゴジラの出自、完全悪としての存在、白一色の目など他の作品のゴジラとは明らかに異質な作品となった本作。映画にはバラゴン、モスラ、キングギドラが登場し、この三怪獣が日本を護るためゴジラの侵攻を止めようと闘いを挑みます。
監督は平成ガメラ三部作を手掛けた金子修介。日本の二大怪獣を渡り歩いた監督ということになります。特技監督は神谷誠。平成ガメラで培われた技術を持ち込み、ミニチュアでのライブアクション、実景との合成を巧みに使い、再び戦争と絡めつつゴジラを純粋な破壊者として描いています。
音楽を担当したのは同じく平成ガメラシリーズの大谷幸。ゴジラを完全悪として描いているためか音楽も荒々しい仕上がりになっていて、オーケストラよりもノイジーで分厚い電子サウンドが目立ちます。そんな中で伊福部昭のテーマ曲が使用されるシーンもあり、改めてそのインパクトに唸らされます。

もはや祭りだ! 『ゴジラ FINAL WARS』(2004)


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ミレニアムシリーズとしてではなくゴジラシリーズとして有終の美を飾るべく総勢15体もの怪獣が登場し、大暴れを見せた本作。轟天号などのガジェットや黒幕のX星人などの登場で、シリーズ総決算の最終作となりました。監督はソリッドアクションを得意とする北村龍平、特技監督に浅田英一。重量感を見せつつスーツアクションに特化した怪獣の対決シーンや、人間側のマーシャルアーツバトルがふんだんに盛り込まれたアクション映画の側面が強く出ています。また、タイトルデザインには『セブン』などのカイル・クーパーを招き、過去作をダイジェストで見せるオープニングが印象的です。
本作ではX星人が地球侵略のためさまざまな怪獣を送り込むわけですが、それを問答無用で薙ぎ払っていくゴジラの雄姿は見もの。中にはシドニーを襲った、どこかで見た覚えのあるジラと呼ばれるイグアナ型の怪獣も登場し、それを文字通り瞬殺するゴジラの怪獣王としての強さはさすがのひとこと!
音楽もシンセサイザーミュージシャンのキース・エマーソンを起用し、森野宣彦、矢野大介の三人体制での楽曲作成の形を取りました。キースのシンセサイザーが70年代80年代の電子音楽感でクラシック・ゴジラの雰囲気を出しながら、森野、矢野がアグレッシブな現代アクション音楽を描くことで性格分けがされています。

まとめ


そしていよいよ、『シン・ゴジラ』としてゴジラが12年ぶりに眠りから醒め日本へと上陸を果たします。総監督に庵野秀明、監督・特撮監督に樋口真嗣、音楽には庵野秀明の盟友、鷺巣史郎という最強の盤石の布陣で描かれる、新生ゴジラがもたらす恐怖。最高峰の特撮映画になると同時に、3.11を経た日本がどう災厄と向き合うか、ひとつのシミュレーション映画にもなっているはずです。日本が世界に誇る怪獣王、ゴジラの復活は今後の映画界になにをもたらすのか。その始まりの一歩を、ぜひ劇場で目に焼き付けましょう。



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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