アイルランドの歌姫は映画も彩る──エンヤと映画音楽の軌跡

みなさん、こんにちは。

まもなく11月も終わろうとしていますね。その頃になるといつも一本の映画と言いましょうか、ある曲がよく頭の中でリピートが始まってしまいます。

「11月の映画」と言えばキアヌ・リーブスとシャーリーズ・セロンが共演したロマンス『スウィート・ノベンバー』。この映画の主題歌として使用されているのが、日本でも多くのファンを持つアイルランドの歌姫、エンヤの[Only Time]です。

透明感のある歌声、優しい音色、豊饒なメロディで癒し系音楽の代名詞。ヒーリングコンピレーションの常連でもあるエンヤですが、実は『スウィート・ノベンバー』のようにエンヤの楽曲が多くの映画で使われているのをご存知だったでしょうか。

今回の「映画音楽の世界」では、エンヤの歌声を聴くことが出来る映画と代表曲をピックアップして紹介したいと思います。

『冷静と情熱のあいだ』

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まずは邦画から。江國香織、辻仁成原作小説を映画化した2001年公開の『冷静と情熱のあいだ』の音楽を吉俣良(『時をかける少女』)と共にエンヤが手掛けたことも話題に。
イタリアのフィレンツェを舞台に竹野内豊とケリー・チャン演じる男女が描くすれ違いの恋愛模様にエンヤが主題歌として提供したのは[Wild Child]。つま弾かれるストリングスのリズムに乗るエンヤの神聖感も漂うメロディが涙腺を刺激します。
ちなみに、予告編でも使用されている楽曲は[Book Of Days]。ロン・ハワードが監督、トム・クルーズとニコール・キッドマンが共演した『遥かなる大地へ』の主題歌としても有名ですね。

『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』

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J・R・トールキン原作の『指輪物語』をピーター・ジャクソン監督が三部作として映画化したシリーズ第一作『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』の主題歌に、エンヤが書き下ろしで提供したのが[May It Be]。
トールキンとピーター・ジャクソンが描くダークファンタジーの世界観を表現するように、この曲は前面に出るような楽器の派手派手しさを排除して哀愁感漂うアプローチに。歌詞も指輪を滅びの山へと運ぶフロドと仲間たちを想うものとなっていて、壮大な物語の船出をサポートする主題歌でアカデミー賞歌曲賞にもノミネートされました。

『トイズ』

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『レインマン』などで知られるバリー・レヴィンソンが監督し、今は亡きロビン・ウィリアムズが主演したファンタジーコメディ『トイズ』。
広大な緑の丘に建つゾウの形をしたおもちゃ工場を舞台に、昔ながらのブリキの玩具を愛する主人公と、ラジコン玩具を戦争兵器に流用しようとする新社長の攻防を描いたどこか幻想的なコメディ映画にエンヤが挿入曲として提供した楽曲は[EBUADE]。草原の草をたなびかせる風をイメージするような奥行きのある楽曲で、舞台となる工場の建つ丘のファンタジー感にぴったり。トレヴァー・ホーンとハンス・ジマーが作曲した劇伴やフランキー・ゴーズ・トゥー・ハリウッドが提供した[Welcome To The Pleasuredome]にもアイリッシュアレンジが加わっているので、レヴィンソン監督が意図的に世界観を揃えようとした印象もあります。

『カル』

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一転して血みどろの連続猟奇殺人事件を描いたハン・ソッキュ主演の韓国産サスペンスホラー映画『カル』にエンヤが挿入曲として提供したのは[Boadicea]。
ヒーリングサウンドとは真逆を行く重いシンセリズムにエンヤのハミングだけで終始するこの楽曲が、まさに陰鬱で凄惨な『カル』の世界観にフィットするのだから凄い。過去に恋愛関係にあった男性が次々とバラバラ死体で見つかった猟奇殺人事件の渦中に脆そうにしんと佇む女性スヨンと、疑いの掛かる彼女の背負った過去を垣間見る中で新たな事件が発生、容疑者と対峙しやがて地獄のような結末を見ることになるチョ刑事。チェとスヨンが互いに惹かれ合いながらそれすらも引き裂かれる結果となるからこそ、エンヤが醸し出す音楽の世界観がずしんと重く圧し掛かります。

『グリーン・カード』

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ピーター・ウィアー監督、ジェラール・ドパルデュー、アンディ・マクダウェル主演のラブコメディ『グリーン・カード』。ゴールデングローブ賞作品賞とドパルデューが主演男優賞を受賞した本作にエンヤは[River][Watermark][Storm In Africa]の3曲を提供。
片や目当ての部屋への入居審査パスのため、片やフランスから渡米しグリーンカード(外国人永住権)取得のため、と利害関係が一致したことから偽装結婚したブロンディとジョージ。入国管理局の疑いの目を逸らすためあの手この手で策を企てる二人がやがて本当の恋に落ち……という王道パターンのロマンティックコメディにエンヤの楽曲と聞くと最初は違和感を覚えますが、これが見事に効果的に活きてくるのはさすがエンヤの豊かなメロディセンスと名匠ピーター・ウィアー監督の手腕といったところでしょうか。
初期作品でありエンヤサウンドの原型とも言える[River]、美しいピアノの音色とコーラスの[Watermark]、アイルランド・ゲール語曲でありこれぞヒーリングミュージックという[Storm In Africa]と聴き応え十分の一本です。

まとめ

エンヤが楽曲を提供している映画は意外に多く、ここで紹介しきれていない作品やTVドラマもあり、今後もエンヤが映画の主題歌を手掛ける可能性もあるかもしれません。エンヤはレコーディングの際にほとんどの楽器を自分で演奏し多重録音を行うマルチプレイヤーのアーティストでもあり、もともと楽器それぞれの音色や特性を知り尽くしているので、いつか劇伴にも挑戦して欲しいところでもありますね。

(おまけ)

実はエンヤの実姉、モイヤ・ブレナンも歌手活動をしていて、ジェリー・ブラッカイマー製作、アントワン・フークァ監督の『キング・アーサー』に主題歌[Tell Me Now(What You See)]を提供しています。こちらは劇伴を担当したハンス・ジマーとの共同作曲で、ブレナンは劇伴にもソロコーラスとして参加しています。
キング・アーサー (字幕版)

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

(文:葦見川和哉)

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    葦見川和哉

    葦見川和哉 映画が好き。旅が好き。小説が好き。 映画開眼と同時に映画音楽の魅力にも取りつかれたサウンドトラック収集家。

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