80年代アイドル映画のノリを楽しく継承する『中野JK 退屈な休日』

中野JK 退屈な休日01

©2015「中野JK 退屈な休日」製作委員会

ここ最近、多くのアイドル・ユニットが登場してはいるものの、意外にアイドル映画そのものは多く作られておりません。せいぜいAKB48や乃木坂46などのドキュメンタリー映画群や、ももいろクローバーZの『幕が上がる』くらいでしょうか。
かつて、特に80年代は量産されていたアイドル映画、そろそろ今の日本映画界でも復活しても良いのになあと思っていた矢先……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.162》

まるでアイドル映画の王道のごとき作品がお目見えしました。
さんみゅ~主演映画『中野JK 退屈な休日』です!

ある夏の日、学校をさぼった
女子高生たちのまったりした日常

中野JK 退屈な休日02

©2015「中野JK 退屈な休日」製作委員会

さんみゅ~は、かつて桜田淳子や松田聖子、早見優など多くのアイドルを育ててきたサンミュージックが久々に世に出した、現在6名(西園みすず、木下綾菜、小林弥生、新原聖生、野田真実、長谷川怜華)のアイドル・ユニット。

映画『中野JK 退屈な休日』は、ある朝、急に登校するのが面倒くさくなった女子高校生3人(木下、西園、野田)が学校をさぼり、中野の街を闊歩する姿を映し出す、何ともシンプルな内容です。

全体的にドラマチックな大事件が起きるわけでもなく、何となくのほほんとしたエピソードが劇中お目見えしては、見る者をまったりほっこりさせてくれるという微笑ましい脱力系作品ともいえるでしょう。

監督は中田圭。大の映画マニアが昂じて映画界入りし、特に『ホーク/B計画』(98)『新宿インシデント』(98)など数々の香港映画に出演して現地の映画人の信頼も厚い彼ですが、2001年に『ワイルドナイト』で監督デビューを果たして以来、俳優と映画監督の二足の草鞋を履いて活躍中の彼は、今回初のアイドル映画演出に際して、1980年代アイドル映画の復権を目指した節が大いにあります。

80年代アイドル映画は、単にアイドルの可愛らしさのみを捉えるのではなく、その中から映画人個々の作家性を描出させた優れものが多いのが特徴ともいえます。

一方、さんみゅ~も岡田有希子の大ヒット曲『くちびるNetwork』でメジャーデビューを果たすなど、80年代アイドルの復権を掲げながら活動している雰囲気もあるだけに、この監督このアイドルユニットの邂逅はまさに、どんぴしゃりであったといえるでしょう。

さんみゅ~の健気な存在感の源は?
エリック・ロメールか鈴木則文か?

中野JK 退屈な休日04

©2015「中野JK 退屈な休日」製作委員会

さて、80年代アイドル映画は、相米慎二監督、薬師丸ひろ子主演の大ヒット作『セーラー服と機関銃』の影響もあって、長廻し撮影の作品が多いのも一つの特徴ですが、ここでも冒頭の登校風景をはじめ、少女たちの行動を長廻しメインで捉えています。

これには演じる俳優の技量も大いにモノをいうわけですが、さんみゅ~の面々は難なくその問題をクリアし、映像の中で魅力的にそれぞれの個性を放っています。

実は私、この映画の撮影現場に幾度かお邪魔させていただいたのですが、そのとき中田監督の即興的演出の要求の数々にさらりと応えるさんみゅ~の度量に感心したものでした。
(とはいえ、待ち時間や休憩時間、みんなで台本の読み合わせなどの稽古を怠ることはありませんでした)

おそらくは長廻し撮影の連続もかなりのプレッシャーがあったことでしょうが、そういった緊張を表に出すことなく、作品のテイストに合わせてほんわか感を醸し出す彼女らのプロ意識には感服するものがありました。

また80年代アイドル映画は、今見直すと意外にHな描写が多いのも特徴なのですが、ここではそういった描写こそ皆無ながら、80年代にっかつロマンポルノ作品で活躍した志水季里子や、ピンク映画の帝王・久保新二などが登場しては、彼女たちの青春を慈愛深く応援しているのも、また微笑ましいところです。

中田監督は撮影中、やはり80年代のミニシアター・ブームを大きく牽引したエリック・ロメール監督作品のような淡い雰囲気を醸し出せたらと言っていましたが、難しい要求にさんみゅ~が応え続けてくれるのが嬉しくなってきたのか、次第に要求が(監督本来の好みでもある⁉)ドタバタコメディ調になっていき、これではロメールではなく鈴木則文監督のノリではないか! と、はたで見ていてヒヤヒヤしてしまったものです。
(70年代に『トラック野郎』シリーズなどで世を賑わした鈴木監督は、80年代は『パンツの穴』『伊賀のカバ丸』など元気のいいアイドル映画を量産し続けていました)

ところが出来上がった作品を見ますと、そういったドタバタ描写が多々あるにも拘わらず、最終的にはロメール作品的なしっとりした情感が心に残る仕上がりになっているのが不思議といえば不思議です。

おそらくは、さんみゅ~という80年代を継承するアイドルユニットそのものの魅力の根幹に、淡く眩しく、そしてしっとりとした情感が携わっているからと思われます。

本作は昨年秋に撮影されているため、その後ユニットを卒業した山内遥の姿も劇中見られるのも、ファンには嬉しいところでしょう。

さんみゅ~の歌もふんだんに使われ、まったりほっこり感を携えながら、少女たちのどこかけだるい真夏の一日を活写してくれている、肩ひじ張らない作品です。

そしてエンドタイトルは、ちょっとしたお遊びも。キーワードは『時をかける少女』なのでした!
(もちろん大林宣彦監督版ね)

『中野JK 退屈な休日』は9月24日(土)よりシネ・リーブル池袋にて上映。イベントなども企画されているとのことなので、劇場ホームページなどをチェックしてみてください。

(文:増當竜也)

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    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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