「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」を面白くした、「6つの条件」とは?

行定勲監督 ジムノペディに乱れる 日活ロマンポルノ1

『ジムノペディに乱れる』(C)2016日活

「日活ロマンポルノ? ふつーの日本映画じゃないですか」

先輩 1971年11月20日。この時君は、何をしていた?

女の後輩 はあああ?私、まだ生まれてませんよ。

先輩 嘘をつくと、エンマ様に舌を抜かれるぞっ!!

女の後輩 だから、まだ母親のお腹の中にもいませんって。信じてくださいよお。で、何なんですか?その日付は。

先輩 日活ロマンポルノがスタートしたのが、1971年11月20日なんだよ。

女の後輩 ロマンポルノ?ああ・・・。

先輩 知ったかぶりしてしゃべってるんじゃないだろーな?

女の後輩 見てますよ。ロマンポルノは何本か。

先輩 どこで見た?

女の後輩 ユーロスペースとかで。数年前のことですが。

先輩 今ではロマンポルノを女性が抵抗なく見る。そんな時代になったんだなあ・・・。

女の後輩 別に抵抗ないですよ。ふつーの日本映画じゃないですか。

新しい時代のロマンポルノには、
オマージュもノスタルジーも必要なし!!

行定勲監督 ジムノペディに乱れる 日活ロマンポルノ3

『ジムノペディに乱れる』(C)2016日活

先輩 日活が「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」と題して、5人の監督たちにロマンポルノの新作を撮らせたのも、そういう風潮を受け止めて、ということかも知れない。

女の後輩 そのプロジェクトについては聞いていますが、面白い試みですね。かつてのジャンル・ムービーを現代の監督と女優たちで甦らせるという。

先輩 日活ロマンポルノを製作するに当たって、当時の日活は色々と規制というかルールを設けたんだ。それは「10分に1回の絡みシーンを作る」「上映時間は70分程度」といったこと。それに倣ってか今回の「リブート・プロジェクト」でも「上映時間80分前後」「10分に1回の濡れ場」「製作費は、全作品一律」「撮影期間は1週間」「完全オリジナル作品(脚本)」「ロマンポルノ初監督」と、6つの製作条件が設定されている。

女の後輩 今回のほうが、厳しくなったわけですね。

先輩 僕は試写で行定勲監督の「ジムノペディに乱れる」と塩田明彦監督の「風に濡れた女」を見たけれど、この6つの製作条件がむしろ、監督と作品の個性を際立たせることになったね。

女の後輩 どういうことですか?

先輩 行定監督も塩田監督も、白石和彌監督も園子温監督も、中田秀夫監督も、皆この条件という枷をはめられるわけで、そうなるとひとりひとりの監督の演出力や作品作りのスタンスが、いつもよりハッキリ見えてくる。

女の後輩 例えば行定監督と塩田監督が、同じロマンポルノを撮っても、その違いが出てくるってわけですか?

先輩 そう。面白かったのは、行定、塩田両作品に共通していることがあって、それは男がだらしなくて、女が主導権を握っている(笑)。

女の後輩 今、男女の関係をドラマとして撮るのであれば、そうならざるを得ないんじゃないですか?それだけ男は頼りなくて、だらしなくて、ひ弱でわがままで・・・。

先輩 君の男性観を聞いているわけじゃないよ(笑)。それと、もうひとつこの「6つの条件」で効果を上げたのは「ロマンポルノ初監督」ということ。これはとても大切なことだ。

女の後輩 かつての名物シリーズを復活させるとなると、どうしても過去の作品の縮小再生産になりがちですよね。

先輩 そうなんだ。常々それは、苦々しく思っていた。作り手の人たちが、かつて親しんだジャンルに関われることを喜ぶあまり、過剰なオマージュを捧げたり、当時の自分をノスタルジックに投影してみたり。

女の後輩 正直、先人たちへのオマージュとか、どっちでもいいわけですから。観客としては。

先輩 だから今回も、日活ロマンポルノに青春を捧げたような熱狂的ファンが監督したり、かつてロマンポルノをたくさん撮ったベテラン監督が再登板したら、ちょっとかなわんなあ・・という気分はあった。ところが40~50代の働き盛り、しかも今、新作を続けて撮っている元気で意欲的な監督たちが抜擢されて、これは面白い!!と。もうひとつ「面白い!!」と思った理由は、6つの条件のうちのひとつに「完全オリジナル作品(脚本)」という項目があることだ。

女の後輩 今や日本映画の多くが原作ものですからね。本当に自分のやりたいストーリーがある監督にとっては、オリジナル作品を撮る、願ってもないチャンス到来ってわけですね。

「健康な気分になれる」塩田監督のロマンポルノ?

塩田明彦監督 風に濡れた女 日活ロマンポルノ2
『風に濡れた女』(C)2016日活

女の後輩 で、どーだったんですか?行定監督と塩田監督のロマンポルノは?

先輩 うん。行定監督の「ジムノベティに乱れる」は、売れない映画監督という設定の板尾創路が、あちこちの女性の間を彷徨っていく話なんだけど、板尾の無表情な演技と、彼を翻弄する様々な年齢・職種の女性たちの乱れる演技が対照的で面白かった。

女の後輩 塩田監督の「風に濡れた女」は?塩田監督とはお友達なんでしょ?

先輩 今回も監督自ら試写状を送ってくれたので、お礼のメールを出したら「見終わると、健康な気分になれる映画ですよ!」との返事が来て、「ロマンポルノなのに、ムラムラしないのか?」と(笑)。見たら確かにその通りだった。つーか塩田監督、楽しそうに撮ってます。

女の後輩 主演は間宮夕貴。石井隆監督作品に続けて出演して注目された女優さんですね。

先輩 もうファーストカットから、彼女が元気なヌードを見せてくれて・・唐突に画面に出てきたかと思ったら、ぱっとTシャツを脱ぎ、そこに「風に濡れた女」というタイトルが出る。ちょっと唖然としたけど、なるほどムラムラするよりも元気な気分になるロマンポルノだわ・・と。

女の後輩 だいたいが、今ロマンポルノを女性が見る理由って、ムラムラしたいからじゃなくて、男女のドラマを見たいからですから、それは遅れてますよ、先輩。

先輩 まあそのあたりは、男と女ではモチベーションの差があるわな。「風に濡れた女」にも複数の女性が登場して、世捨て人のような生活をしている男(永岡佑)と体を交わすわけだけど、セックスシーンも「いやらしい」感じではなく、なんかスポーティーな感じ(笑)。それと、その手のシーンの合間が面白いんだ。何というか「間」の演出が、そこはかとなく笑いを誘って・・。

女の後輩 健康的な気分になれる上に、笑いのシーンもあるんですか?

先輩 これ以上詳しいことは言わないけど、塩田監督がロマンポルノというフォーマットを使って、楽しく遊んだ作品というのが僕の感想だ。御本人にもメールでそう伝えたよ。

女の後輩 やっぱり監督の個性やロマンポルノで何をしたいか?という志向の差が、ストレートに出るみたいですね。だとしたら、6つの条件を適用したことは正解ですね。

先輩 これから白石和彌監督の「牝猫たち」、園子温監督の「ANTIPORNO」、中田秀夫監督の「ホワイトリリー」も続けて見るつもりだから、どんな作品になっているか楽しみだよ。

女の後輩 公開は11月26日から、「ジムノペディに乱れる」を皮切りに、2~4週交代で新宿武蔵野館。ちょっと見に行ってみっかな。

先輩 おいおい、女性ひとりで正月にロマンポルノを見るのかい?

女の後輩 なんすか? 何か文句ありますか? 先輩に迷惑かけましたか?

先輩 い、いや・・別に。

女の後輩 だいたいねえ、そんなに気構えないんですよ、私たちがロマンポルノを見るのって。繰り返しますが、ふつーの日本映画でしょ?別にAVを見るわけじゃないし。

先輩 ロマンポルノの中でも実社会でも、女性たちがリードする世の中なんだなあ。ついでに言うと、この「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の宣伝担当も、3人の若き女性たちだ。

女の後輩 それは面白い。今回、日活さんの戦略は徹底してますね。女性が抵抗なく見られるロマンポルノを復活させて、女性たちの手で宣伝していく。ファッショナブルな女性誌の表紙や特集を、ロマンポルノが飾るかもしれませんよ!

先輩 ますます男たちは、肩身が狭くなってくるわけだなあ・・・。

(文:斉藤守彦)

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    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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