映画コラム

REGULAR

2016年01月28日

こんな風に年齢を重ねた夫婦でありたい 『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』

こんな風に年齢を重ねた夫婦でありたい 『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』

■「キネマニア共和国」

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります


(C)2014 Life Itself, LLC All Rights Reserved


正月気分もようやく抜けて(まだ抜けてなかったんかい! という声はさておき)真冬にほんわか温かい人間愛の映画を見たくなるのが人情というもので……
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~》

『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』も、そんな人間愛に満ちた1本です。

こんな風に年齢を重ねた夫婦でありたい
『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』


画家の夫アレックス(モーガン・フリーマン)と元教師の妻ルースは、ニューヨークでもっとも注目されているエリア、ブルックリンの最上階の部屋で長年暮らしてきましたが、一見申し分のない暮らしの中、唯一困ったことがありました。

このマンション、エレベーターがない!

さすがに歳を重ねてきて、階段の上り下りがきつくなってきた夫妻は、この“眺めのいい部屋”を売却することに決め、新たな部屋を探すことにしたのですが……。

ロングセラー小説『眺めのいい部屋売ります』を原作に、リチャード・ロンクライン監督が手掛けたこの作品は、喜びも悲しみも幾年月と言わんばかりに、長年連れ添った夫婦の心の機微を繊細に、ときにコミカルに描き出していきます。

もうそれだけで夫婦やカップルで見るのに最適な作品と言えるでしょうし、またモーガン・フリーマンとダイアン・キートンの息の合った演技と存在感は、ナチュラルな芝居を尊しとするアメリカ映画ならではの味わい深さがあります。

また、部屋の売買をめぐる不動産とのやりとりや、家を下見に来る人々との交流などなど、何となくこういうものはどこの国でも同じようなものなのだなあといった感慨もありますが、それでもやはり一等地での売買ゆえ、部屋の売値を聞いただけで一般庶民としてはゲゲッ! といった驚きもあり、さりげなくもゴージャス感を醸し出すアメリカ映画ならではの豊かさに、ちょっと嫉妬の念まで芽生えてきそうなほど。

しかし一方で、夫婦が買っている愛犬が病気になって動物病院に入院し手術することになるエピソードや、何とマンハッタンの橋ではテロ騒動まで勃発し、それらの事象と部屋の売買の労苦とが、なぜか不思議に絡み合いながら映画的臨場感を高めてくれるのが、実に不思議ではあります。

どちらかといえば小品の部類に入る本作ですが、それでも見る者をゴージャスかつ心豊かに、そしておしゃれな気分にさせてくれた上で、夫婦愛の素晴らしさを際立たせてくれるという、アメリカ映画の懐の深さを改めて感じさせてくれる秀作です。

未だに独り者の、この私が断言するのですから、間違いありません……ううっ⁉

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)

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