かつてポケモンを見ていた「元」子どもたちへ、今度のポケモン映画は必見だ!

ポケモン・ザ・ムービー XY&Zボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ ポスター (C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon  (C)2016 ピカチュウプロジェクト

 夏休み映画の風物詩として久しい大人気ファミリー・シリーズ“ポケモン”映画も最新作『ポケモン・ザ・ムービー XY&Zボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ』で19作目となりますが……

キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.144

ポケモン映画20周年記念を目前に控え、これがまたシリーズ屈指の傑作として屹立しており、今の子どもたちのみならず、かつてポケモンを見て育った「元」子どもたちも必見なのです!

ポケモンVS人間の構図で迫る
『ボルケニオンと機巧のマギアナ』

『ポケモン・ザ・ムービー XY&Zボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ』のお話は……旅を続ける主人公サトシたちの前に、幻のポケモン・ボルケニオンが空から降ってきて、そのときサトシとボルケニオンは不思議な鎖でつながれてしまい、離れたくても離れられなくなってしまいます。

人間嫌いのボルケニオンは、機械仕掛けのカラクリ都市アソッド王国へ向かおうとしていました。なぜなら、そこには500年前に王国で生み出されるも、とある事情で行方不明となり、その後ネーベル高原でひっそり暮らしていた人造ポケモン・マギアナが連れ去られていたからです。ボルケニオンはマギアナの奪還をはかり、彼から離れられないサトシたちも否応なく協力することになるのですが……。

今回は人造ポケモン・マギアナをめぐるポケモンVS王国という図式で構成されていて、はっきり言って人間は悪役といってもいいでしょう。そんな中で、数少ない善としてボルケニオンに協力するサトシのキャラクターがいつも以上に引き立ち、ひねくれ者のボルケニオンとの奇妙な友情をはぐくんでいく姿が躍動的かつユーモラスで感動的に映えています。

出色なのは、これがまた実に愛らしい土偶のようなマギアナのキャラクター・デザイン。フィギュアでも出たら思わず購入したくなるような可愛らしさで、無骨なボルケニオンとの対比もすこぶる上手くいっています。

ボルケニオンの声を担当しているのは市川染五郎ですが、彼のイメージからは想像つかない荒くれキャラながら、いざ画と声を合わせてみるとそこに何の違和感もなく、彼の声だと気付かない人も多いのではないかと思えるほどの上手さでした。
(ただし、王女を演じる松岡茉優の声は、残念ながら少し硬かったかな。実写では若き演技派として定評のある彼女も、声の仕事はまだ不慣れなようです)

ポケモン・ザ・ムービーXY&Z「ボルケニオンと機巧のマギアナ」_サブ03 (C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku
(C)Pokemon  (C)2016 ピカチュウプロジェクト

ポケモン映画20周年を目前に控えて
長寿シリーズを手掛けるスタッフの誇りの発露

かねがねポケモン映画を見ながら唸らされるのは、背景美術など作画スタッフの秀逸さですが、これにはやはりヒット作ならではの予算的ゆとりもさながら、アニメーション監修に『アルプスの少女ハイジ』(74)のキャラクターデザインや『風の谷のナウシカ』(83)原画など、初期の高畑勲&宮崎駿監督作品に参加しつづけ、あの伝説的人気ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』のキャラクターデザインも担当した小田部羊一が毎回入っていることも大いに関係しているのでしょう。

もっとも1998年の劇場版第1作『ピカチュウ・ザ・ムービー ミュウツーの逆襲』の興収72.4億円を頂点に、毎年興行ベスト・テンに入る大ヒットを収め続けてきたシリーズも、マンネリズムこそないものの、いつも安定した無難な出来栄えといった印象もなきにしもあらずで、第17作『破壊の繭とディアンシー』(14)で興収29.1億円と30の大台を割り、昨年の第18作『光輪の超魔神フーパ』(15)は興収26.1億円と、深夜アニメの劇場版『ラブライブ!The School Idol Movie』(15)の最終興収28.6億円にも及ばず、シリーズ初の邦画興収ベスト・テン圏外となってしまいました。
(まあ、それでも20億以上いっているだけでもすごいことではありますが。ちなみにこの17&18作、近年のポケモン映画の中ではかなり面白い出来ではありました)

こういった背景もあってか、今回の『ボルケニオンと機巧のマギアナ』は、長寿シリーズとしての誇りをなくしてはいかんとでもいった作り手たちの意地と熱意が大いにうかがえ、かなり気合が入った快作となっています。ストーリーテリングも快調でテンポもすこぶるよく、クライマックスのバトルの昂揚感と、少し涙腺を緩ませる箇所もあったりして、日本のファミリー・アニメーション映画のクオリティの高さをまざまざと見せつけるに足るものとなっています。

そもそも『ミュウツーの逆襲』は99年11月に全米約3000館の劇場で公開され、興収8000万ドルを記録し、しかも日本映画初の全米週間興行ランキング初登場第1位を成し遂げたほどのものだけに、この文字通りのモンスター・シリーズ、今後も決してあなどれません。

来年でポケモン映画は20周年となります。それはすなわち、第1作をリアルタイムで見ていた幼児がもう20歳を越えているということで、では、そういったポケモン世代の若者たちが最近のポケモン映画を見たらどのような感想を抱くのか、非常に興味があるところですが、たとえば本作を見たら、そのクオリティの高さに改めて衝撃と感動を受けるのではないでしょうか。もしかしたら既にお子さんをお持ちの方もいらっしゃることでしょう。ぜひ親子でご覧になって、あのころのときめきなどを思い起こしていただけたらと願います。

そういえば本シリーズの湯山邦彦監督も、今年久々にポケモン映画以外に手掛けた新作3DCGアニメ映画『ルドルフとイッパイアッテナ』が8月6日に公開されます。やはり作り手も20周年を目前にして心機一転、勢いが再び増してきているようです。

(文:増當竜也)

    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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