今生きるこの世界を新鮮に魅せる映画『ルーム』、親子の再生と成長に涙する

先月下旬アカデミー主演女優賞を引っさげ来日したブリー・ラーソンとジェイコブ・トレンブレイの出演作『ルーム』がいよいよ公開されました。
実話の監禁事件を基にしているものの、監禁事件そのものはあまり描かれず、むしろそこから脱出した先の親子の再生を描いている感動作品です。

ルーム ポスター

(C)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015

部屋の世界

ジェイコブ演じるジャックは、舞台となる部屋で生まれ、外を知りません。彼の世界は部屋の中だけ。テレビの中の世界は虚構のものと思っています。¥彼に転機が訪れるのは5才の誕生日。母親のジョイから世界は広いということを知らされ、世界に出て助けを求めるように言われるのです。しかし、5才はまだまだ子供。当然ながらそれまでの世界が小さな場所だったなんて信じられません。現実を受け入れられずジャックはパニックに。

それまでの外界との接点はたまに現れる謎の男のみ。その男が生活に必要なものを1週間に1度だけ持ってくるのです。ジャックが逃げるチャンスはそこにありと母親に諭され、外の世界を知らないまま逃げ出すことに。

世界が新鮮に見える演出が素晴らしい!

ジャックにとって部屋の外は初めて見るものばかり。でもその見せ方がとてもうまく、ありきたりな風景なのに、初めてだとこんな風に見えるんだ、と新鮮に感じられました。空の色なんて見慣れてるはずなのに、そう感じさせてる演出や見せ方の上手さですね。電線や落ち葉、犬にしてもそうです。初めて世界に出ると、いろいろなものについて知っていかなければいけません。ジャックが世界のことを知っていく様子は自分も知っているものなのに、好奇心を刺激してわくわくしてしまいます。ジャックが利発でいい子だからついつい感情移入してしまうという点もあるでしょう。

また部屋の中ではなく、部屋を出てからがこの作品の本番とも言えるでしょう。大切なのは悲劇ではなく、そこからどうやって立ち直っていくか、どのように回復していくかという点なのです。映画の原作はそこをフューチャーしており、監督もそこに感動したから映画化したと言っています。

ジャックはまだ子供なので、世界について勉強していくだけで、世界に適応できるのですが、母親のジョイはそういうわけにはいきません。家族とのわだかまりや、監禁されている間の世界の変化などなど。監禁されるまでの世界を知っているからこその大変さがあります。

さらに、被害者を見たいという好奇心に満ちた近隣の住人の目にもさらされます。またマスコミもニュースにしようと殺到します。しかし、マスコミのインタビューなどに応じることで彼女も立ち直っていくのです。

ジャックは最初はジョイ以外ほとんど喋らなかったのが、だんだん祖父母と喋るようになったり、近所の子供と遊ぶなどして世界と向き合い、ジョイの回復はそれほど早くないもののジャックの助けもあり、ゆっくりと回復していきます。主人公たちの回復と立ち直りの一番の要因は、やはり家族愛なのです。お互いがお互いを助け合おうと成長・立ち直っていくところがとても綺麗です。

監禁事件は日本でも度々起こり、つい先日も無事保護をされつつも傷跡を残しました。現実で起きる事件と現実はもちろん違いますが、被害者も映画の主人公同様、逃げられたからといってすぐに平穏が訪れるわけではありません。まだ報道も続いていますし、過去を引きずらざるを得ないでしょう。そんな中でも、少しでも立ち直り、回復されることを祈ります。そしてこのような事件が日本でも世界でも起こらないことを願います。

映画でも再生と立ち直りが大事な根幹であり、一番重要なポイントであり、その過程が見せ場となっております。そして改めて世界を見つめ直したとき、身近なものも新鮮に見えてきます。嫌なことも多い世の中ですが、まだまだ捨てたもんじゃない。この映画はそんなことを教えてくれます。

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(文:波江智

    ライタープロフィール

    波江智

    1978年生まれ。映画ライター。シネマトゥデイややcinema Ala Carteなどに寄稿。ジョージ・ルーカスとガイ・リッチーを敬愛。ベストムービーは『ロックストック&トゥースモーキングバレルズ」。

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