『セルフレス/覚醒した記憶』をより楽しむ5つのポイント

セルフレス 覚醒した記憶

(C)2015 Focus Features LLC, and Shedding Distribution, LLC.

現在公開中の『君の名は。』は、高校生の男女の“中身”が入れ替わってしまうという物語。よく知っている人の見た目をしているのに、その中身が違うという要素は、クスクス笑えるコメディや、深みのある人間ドラマへとつながっていました。

では、『君の名は。』では他人の身体に意識が入ることが“ときどき”であったのに対して、“一生”になってしまった男が描かれた作品が公開されていることをご存知でしょうか。今回はそんな映画『セルフレス/覚醒した記憶』をご紹介します。大きなネタバレはありません。

1.大富豪が若い身体を手にしてわかったことは?

本作の物語は、ガンで余命わずかとなった大富豪が、若き身体を手に入れた矢先に命を狙われるようになる、というSFスリラーです。

重要となるのは、この初老の大富豪が娘と仲違いをしていて、かつ小切手を書いて娘との問題を解決しようとしていた(解決できなかった)こと。つまり、彼にはたっぷりのお金があるものの、家族の愛を手にできていないのです。

では、新しい身体を手に入れた彼は、家族の愛を得られるのか……ということが本作のおもしろいところ。主人公が新しい価値観を知っていく過程が、感動的に描かれているのです。

また、老いた人物が若者の身体を手に入れようとするプロットは、楳図かずおの名作マンガ『洗礼』や、藤子・F・不二雄のSF短編『未来ドロボウ』をほうふつとさせました。本作が気に入った方は、こちらも読んでみてほしいです。

2.監督はターセム・シン、あの“トラウマ”が蘇るシーンも?

本作の監督は、インド出身の映画監督のターセム・シン。『落下の王国』や『インモータルズ -神々の戦い-』などで、絵画のような美しい映像が高い評価を得ています。ターセム監督が手がけたPVを観ても、その独特の魅力がわかることでしょう。

(R.E.M.の「Losing My Religion」の公式動画)

今回は現代を舞台としたSFスリラーであり、ヴィクトリア調の内装の美術以外はあまりターセム監督らしさを感じなかったのですが、ただひとつだけ“馬”というモチーフが作中で2回出てきたのにはドキドキしました。

なぜなら、ターセム監督の長編第1作『ザ・セル』はR15+指定でグロテスクな画が多く、中でも“馬の◯◯◯”がトラウマ級のインパクトだったから!そのため、『ザ・セル』を観ている人は別の意味でドキドキしてしまうのです。ただ本作はG(全年齢)指定であり、グロテスクな画はほぼないのでご安心(?)を。

3.批判しているのは人身売買?

本作で明かされるとある事実は、世界中で秘密裏もしくは公然と行われている、臓器または人身売買を批判しているのではないか、と思わせるところがあります。

現代でも貧しい地域の人が、臓器や子どもを売ることを余儀なくされることがままあります。買うほうは買うほうで“出どころを知らずに”臓器を手にいれることもあるでしょう。

しかし、誰かの命を救うからと言って、ほかの誰かの命や大切な人を奪うなんて(たとえ知らなかったとしても)もってのほかです。本作の“新しい身体が何者かがわからない”という要素は、そんな臓器(人身)売買をしている現代世界への、痛烈な批判であり皮肉なのではないでしょうか。

4.不老不死をも扱っている?

老いた身体を捨て、若い肉体を手に入れるというのは、ある意味で“不老不死”の手段とも言えます。もっと長く生きたい、老いたくないというのは、究極の人類の夢。実現してほしいと考える人は決して少なくはないでしょう。

しかし、“何のために不老不死になるのか”と考えると、思いのほかその理由は少なくなるのではないでしょうか。愛する人がもうこの世にいなかったら?自分が生きることで誰かを不幸にしてしまっていたら?不老不死はいいことばかりではないように思えるのです。

本作では、こうして不老不死を扱いながらも、“限られた命であっても、大切な人に伝えられることがある”という尊いメッセージを送っています。観た後は、多くの人がパートナーや子どもにやさしくなれるのかもしれませんね。

5.他人の身体を手に入れてみたい?

『君の名は。』では、「あー自分も女子高生になってみてーよー」と、主人公をうらやましく思っていました。しかし、本作の主人公は、イケメンで肉体派の身体であろうとも“絶対になってみたくない”と思ってしまいました。

というのも、彼は別人として、しかもせっかく手に入れた命を狙われるようになってしまうから。当然、いままでの社会での立ち位置や人間関係はリセットされてしまっているので、柔軟な対応が求められたりもするのです。

何より、主人公は、新しい身体には“過去”があり、“愛していた家族”がいたことを知るのです。彼が“他人の人生を奪ってしまっている”苦しみが伝わってきて、何とも切なくなってしまいました。

この映画からは、“誰かになりたいと思っても、いまの人生がいちばんよい”という教訓を得られるかもしれません。他人の芝生が青く見えたとしても、自分の人生を大切にしたいものです。いい映画でした。

(文:ヒナタカ)

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