インドネシアの女性監督による血みどろホラー「鮮血のレイトショー」!

前回レポートした、「東京スクリーム・クイーン映画祭」初日プログラムに続いて、二日目の夜に上映されたのが、この「鮮血のレイトショー」だ。
今年インドネシアで公開されてスマッシュヒットを記録したばかりの新作スラッシャー映画が、今回特別招待作品として上映されると聞いて、早速鑑賞してきた。

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(c)SQFFT

本作の監督は、これが長編デビュー作となるインドネシアの女性監督、ギナンティ・ロナ・トゥンバン・アスリ。日本でも話題を呼んだあの「レイド」シリーズにスタッフとして参加していた彼女は、日本とインドネシアの合作映画で一部に熱狂的ファンを持つ「KILLERS キラーズ」でも、実は助監督を務めている。

ホラー映画が興業的に難しいインドネシアにおいて、本作は異例のスマッシュヒットを記録!女性の初長編監督作とは思えないほど、残酷で血みどろの描写にあふれているにも関わらず、その根底に女性ならではの「母親としての視点」が存在する本作は、単純なホラー映画とは一線を画す作品となっている。

今後、国内の劇場での上映や、ソフト化発売の可能性もあると思われるが、現状ではこの映画祭でしか見る機会のないこの作品。今回来場出来なかった方のために、是非ここで紹介しておきたいと思う。さて、本作の内容と出来は、果たしてどうだったのか?

ストーリー

舞台は1998年のインドネシア。ジャカルタのとある映画館で、レイトショー上映が間もなく始まろうとしていた。上映作品は、15年前に起きた一家惨殺事件の犯人とされた、ある少年の実話を元に製作された「チャイルド」という映画。
生憎の雨模様の中、映画館に集まる観客たち。やがて上映が始まるが、客席に紛れ込んでいた本物の殺人鬼によって、観客達は次々と惨殺されて行く。映画の元となった事件に隠された驚愕の真実とは?そして、意外な犯人の正体とは?

過去の名作ホラー映画のエッセンス満載!
女性監督ならではの描写にも注目!

本作を監督したのは、これが初長編作品となる女性監督ギナンティ・ロナ・トゥンバン・アスリ。

当初、ロマンス映画を撮るために監督を探していたプロデューサーが、女性ならロマンス映画が好きだろうと彼女にオファーしたところ、迷わず「私が撮りたいのは、血がいっぱい出るホラー映画!」と答えただけあって、そのディテールへのこだわり方は、正に撮りたい映画を撮っている、という喜びの表れだと言えるだろう。

特に本作で注目したいのが、過去の名作ホラー映画のエッセンスを上手く取り入れて、インドネシアの観客に合うように再構築させた点だ。
一番影響が大きいのは、何と言っても「13日の金曜日」シリーズだろう。印象的な音楽(人のささやき声をサンプリングした例の音楽に上手に似せてある!)や犯人の設定などから見ても、「13日の金曜日」1作目からの影響が強いのは明らかだ。

次に影響が大きいのが、「ソウ」と「スクリーム」のシリーズ。犯人の格好や、犯人が反撃に会って意外とダメージを負う描写などは、「スクリーム」シリーズを見ている観客なら思わず「ああ!」と納得する所だろう。両シリーズからゲーム性を排除し、そこに横溝正史的「ドロドロ怨念の世界」を持ち込むことで、インドネシアの風土にマッチさせた監督の狙いは、終盤の盛り上がり方を見ても見事に成功している。

その他にも映画館が舞台となったり、エンディングの感じや血の流れ方などから、アルジェント監督作品を思い出す方もおられる筈だ。
観客の「ホラー映画マニア度」が試される!そんな楽しみ方も出来るこの映画、オススメです!

入場料金や売店のお菓子の種類などなど、
インドネシアの映画館事情も勉強できる!

1998年当時の映画館が舞台となるため、当時のインドネシアの映画館事情が良く分かる本作。ちょっとだけ、その描写を紹介しておこう。

*売店のお菓子はキャンディがメイン。ポップコーンは無くて、袋入りのスナックが幾つか繋がった状態の物が売られている。
*チケットを買う時に、なんと係りの人が両手を合わせて合掌して迎えてくれる!
*座席は指定して購入可能。指定なしでも買うことが出来る。
*レイトショーの開始時刻が23時半とかなり遅い。
*座席はかなり豪華で革張りの椅子!

この他にも映写室とか劇場ロビーの様子や、ポスター張替え作業など、どれも映画ファンには興味深いものばかりなので、一般公開実現の際には是非お見逃しなく!

主演俳優にして本作のプロデューサー、
ガンディ・フェルナンド氏も登壇!

今回の上映終了後、本作の主演とプロデューサーを務めた、ガンディ・フェルナンド氏がトークゲストとして登壇。
製作当時の苦労話や、インドネシア映画界の現状などの貴重なお話を聞くことが出来た。

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本作の舞台となった映画館は、実際に使用されておらず廃墟となっていた物件を使用。そのためか、撮影中に度々不思議な現象が起こり、出演俳優二人が幽霊に憑依されて様子がおかしくなったり、主演女優が本気で撮影を中止して帰ろうとしたことも!幸い、祈祷師にお払いをしてもらったお陰で、その後はこうした不思議な現象は起こらなかったとのこと。
ちなみにその祈祷師は、本作の冒頭に俳優として出演しているそうだ。

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まだ20代と若いながらも、「インドネシアで最も若い映画プロデュサー」として、既に5本の作品を制作しているガンディ・フェルナンド氏。将来的に日本の映画会社「日活」と仕事がしたい、と笑顔で語った彼。その願いが実現して、将来的にこの映画祭で上映される日も近いかも知れない、そう思わずにはいられなかった。

最後に

インドネシア映画=「レイド」シリーズに代表される格闘アクション、そんな印象が強かった中で見た今回の「鮮血のレイトショー」。

前半部分を見た印象では、よくある設定の低予算のホラー映画に思えたのだが、後半犯人の正体が明かされてからの更にもう一ひねりには、完全に意表を突かれてしまった。あまりに残酷で救いのない犯人の行動と、それでも犯人に感情移入したくなるこの設定!そしてラストで描かれる「母親の我が子への愛が与える力」こそ、女性監督でなければ描けない部分であり、本作が本国でヒットを記録した要因なのではないだろうか。

主人公が生き残って「あー。良かった!」では終わらない、本作のラストシーン。しかし、考え方によっては続編への引き?とも取れるだけに、PART2の製作を是非実現して欲しいところだ。今回、残念ながら映画祭期間中の2回の上映でしか見る機会がないのだが、一般公開やソフト化の際には是非ご覧頂ければと思う。

(文:滝口アキラ)

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    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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