君は「シン・ゴジラ」を見たか。その2 サービス! サービス!!

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前回の記事:君は「シン・ゴジラ」を見たか。

「こんなに恐いゴジラは久しぶり」

爺 いやあ、恐かった。映画館でこんなに恐い思いをしたのは、何年ぶりだろう?

後輩 「シン・ゴジラ」ですか?

爺 そう。わしゃ君の年齢の2倍ぐらいの年数、映画を見ているが、今度のゴジラは恐かった。こんなに恐いゴジラを見たのは、昭和29年の第1作以来じゃよ。

後輩 見てらっしゃるんですか!? 最初の「ゴジラ」を映画館で!!

爺 当時わしは子供だったけど、故郷で親父と一緒に、満員の映画館で見たよ。その時も、ゴジラがぬっと海中から姿を現す、あのシーンの音楽とゴジラが恐くて恐くて・・。

後輩 だったら「シン・ゴジラ」も恐かったですか?

爺 確かにゴジラの造型は恐かったけど、映画としては面白かった!!ゴジラ・シリーズでこんなに面白い映画は、第1作以来じゃないか?

後輩 そこまで誉めますか!?

爺 なんじゃ、若い君は面白くなかったのか? 「シン・ゴジラ」。

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「オリジナリティがないじゃないですか」

後輩 僕はそれほどでもないんです。確かによく出来た映画ですが、オリジナリティがないじゃないですか、どのシーンも。あるシーンはエヴァのままだし、またあるシーンはこれまでのゴジラ映画のイメージの再現、それと政治家や官僚たちが早口で応酬する、あの会議シーンだって岡本喜八監督の「日本のいちばん長い日」のタッチじゃないですか。

爺 そうだけど・・・それが何か?

後輩 ああもう!!気になりませんでしたか!? ストーリーのベースは84年版の「ゴジラ」と似ていますし、石原さとみの特使もアスカ・ラングレーで、作品の中で延々と作戦が描かれているあたり「機動戦士ガンダム/逆襲のシャア」の構成にそっくりだし、その割に被災者の描写がほとんどない。しかもヤシオリ作戦の開始時に流れるのが伊福部昭の音楽!!

爺 ゴジラの音楽といえば伊福部昭!! いやあ、あそこで流れる伊福部ミュージックには燃えたなあ。

後輩 先輩たちが絶賛していた、あの長い会議シーンにしても、「ひとつひとつの台詞は専門用語も多く、何を言っているか分からないけど、編集のタッチで、何か大変なことが起こっているという緊張感を与えている」って。そもそも僕たちは、高い料金を払って映画館に映画を観に来ているわけです。映画を楽しむために。映画を見て緊張なんてしたくありませんよ!

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「監督とは、思想のストリッパー、究極のサービス業である」

爺 おい、若僧!! よく聞けよ!! お前たちが映画を見ながら緊張したくない。シネコンのシートの上にだらっと体を預けて映画を見たい。それはそれで良いだろう。高い料金を払ったんだからな。

後輩 は、はあ・・。

爺 だがな、覚えておけ。映画をあら探しするような見方をするんじゃないっ!! 別に三つ指ついて「拝見させていただきます」と言って恭しく見る必要もないが、だからと言って監督やスタッフ、キャストを試すような姿勢で見るな!! 作り手たちを信じろ!

後輩 だったら余計に、その監督ならではのオリジナルな世界観や映像表現を見たいじゃないですか。そもそもゴジラというキャラクター自体、昔の人が作ったものを受け継いだんでしょう? 外見はともかく、その設定や性格付けに庵野総監督のオリジナリティは、どこまで反映されたんですか?

爺 だって、ゴジラ映画なんだから。ゴジラが出なければ始まらないし、観客が認識しているゴジラと違ったゴジラを出してしまえば、ローランド・エメリッヒ監督の「GODZILLA」の時のように「これはタイトルだけで、中身はゴジラじゃない」という評価になってしまうさ。

後輩 それは・・・そうですけど。

爺 ではオリジナリティとは何ぞや?ということになってしまう。映画が発明されて100年以上経ち、物語やキャラクターの歴史は、さらに長きに渡っている。世界中どこにも前例のない、完全無欠なオリジナルのストーリー、オリジナルなキャラクターを出すのは、極めて困難だ。

後輩 だからといってパッチワークのようにオマージュや、どこかで見たような映像を繋げただけの映画を面白いとは思えませんよ。

爺 監督という存在は、1本の映画をリードするイメージ・リーダーであり、ストーリー、キャラクター、そして世界観を創作して、創り上げる立場にある。いわば思想のストリッパー、究極のサービス業だ。もちろん作品を通してだが、監督は観客の前で全裸になり、自分の思想をすべてさらけ出さなくてはならない。羽海野チカさんも言っているじゃんないか。「表現者に最も大切なことは、嘘をつかないこと」って。

後輩 誰ですか? 羽海野チカさんって?

爺 「3月のライオン」の作者だよ、漫画の。知らない?

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三層構造が醸し出すリアリティの連鎖。

後輩 ではご隠居が「シン・ゴジラ」にオリジナリティを感じられる、その決定的なポイントとはどこですか?

爺 それはだな、この映画は三層構造になっていて、3つのレイヤーに別れている。まず第一に、背景となる我が国の描写。特に国の意思決定機関である政治家や官僚たちが、いかなる環境でどのように仕事をしているかをリアルに描いている。2016年における・・まあ撮影は2015年なんだが・・事例を綿密な取材に基づき、こと細かに描写した。その上で、身長118.5メートルの大怪獣を登場させる。これはいわば、まったくの虚構。創造の産物だ。

後輩 それが第二のレイヤーってことですか?

爺 そう。2016年の日本に、この大怪獣が出現するという大嘘を、あらゆる技術を駆使して描く。そして第三のレイヤーは、ではゴジラをどう退治するか。事態の収拾だな。これをまたリアルに描いている。

後輩 確かに今回は、現実にはあり得ない特殊兵器やGフォース、スーパーヒーローや巨大ロボットも空飛ぶでかい亀も出てきませんね。

爺 そこが重要なところで、世界中の協力と米軍のサポートこそあれ、日本人が自分たちで作戦を立案して、現実に存在している装備や兵器でゴジラを退治しようとする。その兵器類の描写も現実に即している。つまりこの映画は、現実のリアリティの中にゴジラという虚構の存在を登場させた。ゴジラはつまり、サンドイッチの具だ(笑)。

後輩 まさに「現実対虚構」!!

爺 2つの階層が虚構を挟み込む形で、リアリティを持って刺激する。またそれだけでなく、例えば無人の電車に爆弾を積んでゴジラにぶつけるのは、電車という観客にも身近なモノを出しているのは、生活者視点のリアリティと言えるだろう。

後輩 確かに・・・・。

爺 わしも長いこと怪獣映画の類いは見て来たが、こうした構成を取っている作品は初めてだよ。あえてこの映画に近い作品を探すならば、最初の「ゴジラ」だろうな。劇中で「ゴジラが来るんなら、また疎開しなくちゃ」という台詞があるが、それが戦後9年という時点のリアリティだった。ただし昭和29年版「ゴジラ」は、事態の収拾にオキシジェン・デストロイヤーという架空の装置を用いている。このあたりが「シン・ゴジラ」と違うところかな。

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大サービス商品「シン・ゴジラ」

爺 君の言うように、確かにひとつひとつのカットには、オマージュやいつかどこかで見た映像はあるものの、作品としては見事なオリジナリティを感じないか?少なくとも庵野総監督は今回、正直な仕事をした。自分が55年間の人生で得たもの、感銘を受けたもの、大きな影響を受けたものをゴジラという古き革袋に詰めこんだ。その上で作品として完成させた。自分の持っているものをすべてさらけ出し、全裸になり、そして過剰ではないかと思えるほどのサービスをして見せたんだ。

後輩 エヴァのTVシリーズの予告で「サービス! サービス!!」と言ってましたものね。

爺 なんたって監督は、究極のサービス業だからな。「シン・ゴジラ」に関して言えば、大サービス商品だよ。

後輩 いや、それでも僕は・・・僕は!!

爺 分からん小僧だなあ。とにかく君が、落ち着きたまえ(と、手に持ったペットボトルを後輩の胸の前に差し出す)。

後輩 い・・・泉ちゃん渡し・・・・・!?

爺 (ニヤリ)。

●予告:「君は『シン・ゴジラ』を見たか。」第三談「永い会議」。近日アップデイト!!

(企画・文:斉藤守彦)

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    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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