「渥美清ほど奥の深い役者はいない」落語家・立川志らくが語りつくす寅さんへの思い

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9月1日、東京・渋谷のHMV&BOOKS TOKYOにてトークイベント「俳優 渥美清 没後20年を迎えて」が開催。落語家、映画評論家として活躍する立川志らくさんが登壇しました。

「俺より詳しいぞ」と山田監督を唸らせ“寅さん博士”に

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学生の頃はハリウッド映画ばかり見ていて、大人になってからはフランキー堺さんの映画が好きだったという志らくさん。しかし、師匠である立川談志さんが渥美清さんと仲がよく、また、周りに『男はつらいよ』を敬愛する人があまりにも多かったことから、シリーズ全48作を続けて観たところ、「こんな面白いんだ」と気がつき、以来、渥美清さんの映画を徹底的に観て、「何年かしたら、“寅さん博士”みたいになっちゃった」とのこと。その後、志らくさんが『男はつらいよ』全48作を語る独演会を開催したとき、な客席に山田洋次監督がいて、志らくさんのことを「寅さんのこと俺より詳しいぞ」と話したそうです。

俳優・渥美清は「全部同じで全部寅さんだけれど、全部うまい」

とがった映画マニアというのは、いわゆる国民的人気作や、わかりやすい映画を避けるところがなきにしもあらずですが、映画マニアで映画オタクの志らくさんいわく、映画マニアも全部虜にするのが『男はつらいよ』と俳優・渥美清さんの魅力であり、「渥美清ほど奥の深い役者は、日本に他にはいない」のだそう。

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「日本で最高の名優は志村喬さんだと思っているんですが、技巧派だから、役によって作って変えてまったく別人に見える。だけど、渥美清さんは全部同じ。昔の作品を見ると、みんな寅さんで全部同じだけど、全部違う。何をやっても渥美清だけれど、全部うまい。こういう役者はハリウッドにもいないんじゃないでしょうか」と語った志らくさん。筆者も『男はつらいよ』が好きで、渥美清さんのよどみない口上、温かみを感じさせながらも凄みのある演技に何度も感激したことがあり、それだけに志らくさんのトークにうんうんとうなずくばかりでした。

立川志らくさんがおすすめの渥美清出演映画4作品を紹介!

『男はつらいよ』も含め多数の作品に出演している渥美清さん。この日は、志らくさんセレクトのおすすめ4作品が紹介されました。

『拝啓天皇陛下様』

1963年公開の野村芳太郎監督作品。戦争時代の日本を舞台に、兵隊に扮した渥美清さんが天皇陛下に手紙を書く物語です。
志らくさんコメントより:「戦争批判でも賛美でもなく、日本人はこんなだったんだよという映画。寅さんが兵隊に入ったらこんな感じだったんじゃないのという感じで、本来、渥美清の顔は怖い顔なんですが、本当にかわいく見える。これがこの人のもっているすごさですね。」

『キネマの天地』

1986年公開の山田洋次監督作品。1930年代の蒲田の撮影所を舞台に、『男はつらいよ』おなじみキャストが総出演。渥美清さんはヒロイン・小春(有森也実)と長屋で暮らす父親で元旅回りの役者・喜八を演じ、『男はつらいよ』で寅さんの妹・さくらを演じた倍賞千恵子さんが、喜八と小春の隣人の奥さん・ゆきを演じています。
志らくさんコメントより:「ここでの渥美清のすごさは、わざと髪形も変えないし、しゃべり方も同じ。寅さんそのままで、倍賞さんも芝居を変えてこないで、さくらのまま。映画というのは技術に走って変えなくともちゃんとした世界が作れるということ。渥美清は寅さんのままで何ひとつ文句がない」

『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』

1975年公開作品。多数のマドンナの中でも寅さんの本命といわれ、全4作に登場した歌手のリリー(浅丘ルリ子)との物語2作目。イベントでは、寅さんが喧嘩したリリーを駅まで迎えに行き、ふたりで相合傘で歩く名シーンが紹介されました。
志らくさんコメントより:「このシーンで(寅さんが)やせ我慢していたり、本当は行きたくてしょうがないのに「誰が行くかい」と言ったり、日本で生まれて日本で育った人ならこの気持ちが痛いほどわかるはず。これが、見た目じゃなくものすごくかっこいいんです」

『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』

1983年公開作品。備中高梁のお寺の住職の娘・朋子(竹下景子)に恋をした寅さんが住職の代わりをつとめて大活躍するストーリーです。
志らくさんコメントより:「48作ある中で一番結婚に近づいた作品。この竹下景子さんに関しては、ふたりが愛し合って一緒になったら幸せになるのが見えるんです。見ていて一番一緒にしてあげたいなと思った作品」

実は恋愛の達人?だった寅さん。観るなら第1作から続けてがおすすめ!

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今回のイベントで紹介されたように、別作品への出演もありましたが、渥美清さんの代表作といえば、やはり『男はつらいよ』。1969年から1996年まで、26年もの長い年月寅次郎を演じ続けた渥美清さんの役者人生について、志らくさんは「『男はつらいよ』に出ていなかったら、違う形でいろいろな芝居をやって、日本の邦画界のトップの名優として名が残った可能性は本当に大きい。でも、どちらかといえば、『男はつらいよ』の寅さんを残したことのほうがやっぱり大きいのではないか」話しました。

そして、志らくさんは、『男はつらいよ』について「飛び飛びで見るよりも、第1作から順番に見ていくのが一番面白い」と断言。「寅さんが恋愛をたくさんして振られて、やがて惚れられることもあるし、相思相愛になったり恋愛指南にまわったりして、30作を過ぎると恋愛の達人になってくる。一回もうまくいってないのに達人になるんです」という流れが順に追っていくとよりよくわかるのだそう。確かに48作を通してさまざまな形の恋愛をしている寅さんですから、恋の遍歴を順に観ていくだけでも十分楽しめそうです。

短い時間の中で、本当にたくさんの言葉で渥美清さんの魅力を語ってくれた志らくさん。最後は、渥美清さんの作品の楽しみ方について、「ひとつは渥美清さんの芝居を中心に観ること、あとは映画として楽しむ。二度観れるんです。渥美清の芝居だけに集中して観て、楽しいなという役者ですね」と締めくくり、トークイベントは終了しました。

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さて、今もなお多くのファンに愛されている映画『男はつらいよ』シリーズですが、2016年9月10日の夜9時からの「世界ふしぎ発見!」(TBS系)では、「笑って泣いた・懐かしき寅さんワールド」が放映。唯一の海外ロケを行ったウィーンの謎にせまります。そして、昨年、寅さんの故郷である葛飾柴又で行われたイベント「寅さんサミット」(http://torasan-summit.jp/)が、今年も11月26(土) 27(日)の2日間で開催決定。『男はつらいよ』ファンが寅さんと親しめる機会がこれからもまだまだあり、とても楽しみです!

(取材・文:田下愛)

    ライタープロフィール

    田下愛

    田下愛

    フリーランス・ライター。雑誌、書籍、Webメディアで、幅広いジャンルの仕事をこなして活動中。ファンタジー映画が大好物で、『オズの魔法使い』『ナルニア国物語』『アリス・イン・ワンダーランド』など、魔法やおとぎの国を扱った作品にはすぐ飛びついてしまいますが、一方、『レインマン』のような人間をきっちり描いたドラマも好き。石ノ森章太郎先生をリスペクトする昭和特撮フリークでもあります。

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