『ボーダーライン』を“麻薬カルテルもの”初心者にこそオススメしたい10の理由

ボーダーライン
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本日4月9日(土)より、映画『ボーダーライン』が公開されました。

この映画の感想をひと言で表すのであれば“(いい意味での)地獄”でした。そして、“麻薬カルテルもの”の映画を観たことがない人にこそオススメしたい、と強く思ったのです。その理由を、以下に挙げてみます。

1. 開始5分が“地獄”である

詳しくは言えませんが、映画が始まってからの5分間では、この世の地獄のような光景が目の前に広がります。説明はほとんどなく、観客をいきなり“最悪の状況”に導いてくれるのです。

その残虐性は、R15+指定であることが大いに納得できるでしょう。しかし、この“地獄”こそ、作品に重要なものであるとも感じられるはずです。

2. 主人公は“ほとんど何も知らずに麻薬捜査に同行する”女性FBI捜査官である

この映画で秀逸なのは、主人公の女性が麻薬捜査について“ほとんど何も知らない”新米であるということです。

主人公は、所属不明の男と同行し、メキシコの市の惨状や、麻薬カルテルの残虐性を目の当たりにします。
しかも、男からは捜査の説明もほとんどされないため“私は何のためにここにいるのか”、“捜査の本当の目的は何なのか”ということも、彼女はよく分からなくなっていきます。
この主人公の感情は、(麻薬捜査のことに詳しくない)観客とシンクロしていると言っていいでしょう。

麻薬カルテルをテーマとした映画には『ノーカントリー』や『悪の法則』などもありましたが、それらはどちらかといえば娯楽性は少なく、内容も玄人向けでした。
しかし、『ボーダーライン』は“ほとんど何もわかっていない女性が麻薬捜査に翻弄される”という物語ですので、とても感情移入がしやすくなっているのです。

しかも、メキシコの現状を“地獄のような光景”として知ることができるのですから……麻薬カルテルの恐ろしさを知る“教材”としても逸品といえるでしょう。

3.“何が起こるのかわからない”緊張感がある

主人公は麻薬捜査についてほとんど何も知らないわけですから、同行する男が“つぎに何をするのか”もわかりません。男の行動は、悪い意味で型破りであり、一般的な常識なんて通用しない、とても酷いものです。
主人公の「なぜこんなことをするの!」という訴えにも、感情移入をしてしまうでしょう。

おかげで、映画には“一歩先の展開が予想できない不安さ”を存分に感じられるでしょう。それは、下手なホラー映画よりもはるかに怖いものでした。

4.『灼熱の魂』や『プリズナーズ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督最新作である。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は人の心の闇を深くえぐる描写や、緊張感のある画に定評のある方です。
監督のファンにはもちろん必見ですし、『ボーダーライン』の物語は決して複雑ではないので、今回初めてドゥニ監督作品を観る人にとってもオススメといえます。
監督の前作『複製された男』はよくも悪くも難解な内容だったので躊躇するかもしれませんが、今回はそのようなことはないので安心してください。

ちなみに、ドゥニ監督は『ブレードランナー』の続編でもメガホンを取ることが報道されています。いま、もっとも注目を集める監督のひとりでしょう。

5.不安感を最大限に高めてくれる重圧な音楽

本作の音楽はとにかく“重圧”です。多数の弦楽器、打楽器、パイプオルガンなどの音色が、さらに観客の“不安感”を高めてくれるでしょう。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、本作の製作において、「妙なことだが、音楽のイメージが沸かなかった、その代わりに感じたのは“脅威”だった」と語っています。
作曲を手掛けたヨハン・ヨハンソンは、この“脅威”を提供してほしいという期待に応え、悲しさと厳粛さを合わせ持った、存在感のある音楽を作り上げたのだそうです(そこには、『ジョーズ』の音楽からの影響もあるのだとか)。

また、劇中には、“ヘリコプターの回転翼の音が、音楽として機能している”シーンもあります。ヘリの音が音楽の一部になる様子を、よく聴いてほしいです。

6.躍動感のあるカメラワーク

本作の撮影監督は、『ビューティフル・マインド』、『007 スカイフォール』などを手掛けてきたロジャー・ディーキンス。この『ボーダーライン』でもアカデミー撮影賞にノミネートされたベテランです。

そのカメラワークは見やすいだけでなく、躍動感も抜群。ヘリコプターから撮った“空撮”シーンのこだわりも、しっかりと見届けください。

7.ベニチオ・デル・トロの怖すぎる演技を堪能しよう!

これもまた詳しくは言えませんが、ラスト15分のベニチオ・デル・トロの演技は圧巻です。その表情はもちろんですが、その一挙一動に、このうえのない恐怖を感じられるでしょう。

展開そのものも、先ほど紹介した“開始5分の地獄”とは別の、さらなる地獄が待ち受けています。ぜひ、心を平静に保って観てください。

ちなみに、ベニチオ・デル・トロは同じく麻薬カルテルをテーマとした映画『トラフィック』でも捜査官を演じており、アカデミー助演男優賞を受賞しています。

8.原題の『SICARIO』と、邦題の『ボーダーライン』の意味とは?

本作の原題は『SICARIO(シカリオ)』。それはスペイン語で “殺し屋(暗殺者)”という意味です。
観た後はこの“SICARIO”が誰であったのかを考えてみるのもいいでしょう。

そして、邦題の『ボーダーライン』も内容にとてもマッチしたものになっています。
劇中ではアメリカとメキシコの国境(ボーダー)でとんでもない事態が起きますし、主人公が“何が善で、何が悪であるのか”という“境界線”が分からなくなっていく、という描写もあるのですから。

9.はじめはわからなかったセリフにも意味がある!

わかりやすい物語ではありますが、作中の会話にはいくつも「何を言っているんだろう?」、「どういう意味だ?」と思わせるものがあります。

じつは、これは意図的に観客には理解できないようにしているセリフであり、物語の終盤にその意味が明かされるようになっているのです。
よく会話を覚えておくと、後半の展開にさらに“納得”できるかもしれません。

10.“現地の親子”の目線からも描かれている

本作には、麻薬捜査をするという基本のプロットラインのほかにも、メキシコの現地にいる父親と、その子どもの描写があります。
それは“子どもがサッカーの試合を見に来て欲しいと父親に願っているのに、仕事が忙しいために断られてしまう”という、普遍的にどこの世界にもある親子の関係です。

これにより、メキシコがただただ恐ろしい場所ということだけでなく、“私たちと変わらない、ふつうの人々が生活している”こともわかります。これも感情移入がしやすい要素と言えるでしょう。

この親子がどのように物語と関わるのか……それは秘密です。ぜひ、最後まで見届けてください。きっと、この物語が何を訴えているのかが、わかるはずですから。

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(文:ヒナタカ

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    ヒナタカ 映画ブログ「カゲヒナタのレビュー」運営中。All Aboutでも映画ガイドとして執筆中。映画に対しては毒舌コメントをしながら愛することをモットーとしています。

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