園子温監督の魅力は人を見下さないこと。『園子温という生きもの』上映特別講座開催、将来の映画監督候補70人が受講

映画監督の大島新は21日、日本大学芸術学部江古田キャンパスで『園子温という生きもの』上映特別講座を行い、学生70人が集まった。

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同作は、園子温監督の新しい映画の企画の打ち合わせや、アトリエでの自由な絵描き、ライブや新作映画『ひそひそ星』の撮影現場を追ったドキュメンタリー映画。
まず大島監督は「若い人に、特に作り手に見てもらいたかった」とあいさつ。

園監督について「撮っていくうちに距離が近くなってきた。多面体の人だった」と話した。

テレビのドキュメンタリー番組とドキュメンタリー映画の撮り方について「取り方も違う。見せ方も違う。映画は座ったら余程のことがない限り見てしまうという前提。テレビはいつチャンネルが変わるかわからないという前提がある。園子温という被写体で、『情熱大陸』も取ったが飽きさせないつくりというものがあった。映画はその作法から解放された面もあるし、難しかった部分もある」と違いについて説明。

また「情熱大陸」で園子温監督を撮った後にもう一度映画で撮ったことについて「もう一度撮りたいと思った。そういう被写体は珍しい満足しなかったわけではないが、テレビサイズの被写体ではない。もっと面白いと思った。もう一点は情熱大陸を撮ってたときはメジャー系を撮っていた。それは本来の園子温ではないだろうと思った。その次に園子温プロダクションで『ひそひそ星』がやるということで、僕も映画という手段でやってみたいと思った」と園子温監督の魅力ついて語る。

撮影時の苦労は「『ひそひそ星』の福島の撮影。人間的にリスペクトしてるし、園さんも僕のことを信頼してくれていた。我々が取材班というスタンスだが、映画の現場ってメイキング班がいる。園さんはメイキング班ではない僕らがいたことに若干居心地が悪かったかと思う。そこがストレスだったかと思う。一緒に酒を飲んでいるときに『そういう撮影はどうなんだ?』という話は出た。翌日謝りにいった」と苦労を話した。

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また学生から「ドキュメンタリー監督と劇映画監督では作っているジャンルは違うが、撮影することで発見したことや学んだことは?」という質問があがると「園子温は、特殊な映画監督であると思う。だから取材したいと思った。劇映画とドキュメンタリーというのは思ってなかった。園子温のピュアなところやものづくりの心について教わった。精神性を学んだと思う」と精神を学んだと回答。

「撮影時間が170時間をこえた撮影だが、映画は90分。選び抜く苦労は?」という質問には「編集でこんなに時間かけたのははじめて。編集マンがいて、彼と僕とでやっていった。多くは編集マンに託す。基本的に映像を全部見てもらい、編集していく。半年近くかかった。一回できたものを一校として通して見てみる。最初は120分だった。でも撮影が終わってなかった。全部繋いで自分たちがどう思うかと考える。そのあとスタッフに見てもらい。意見をもらう。多分、20校はこえていて、こだわりはちゃんと170時間でもちゃんと見せるところと見せないところの緩急をつけるところを意識した。ちょっと長いなと思う箇所もある。普通はここまでというのが何箇所かありそれは守ろうと思った」と編集方法について語った。

「最後のカットが前半にも同じカットを使っていて。そこに園子温の意見が詰まっており、最後にもいれたと思う。私は、不自然だなと思った。何を伝えたかったのかがいろいろ受け取り方があると思うが、監督は何を伝えたかったのか聴きたい」という質問には、「これはいい意見」と質問者を賞賛。続けて「何を伝えたかったというより、どう終わろうかという選択だった。あれじゃない場合はどういう終わり方があったか。カットとしても大きな意味を持つし、伝えたかったことでもある。ドキュメンタリーの面白いところは考えていても思い通りにならないし。奥さんの神楽坂さんの絵を描くのは最後のロケにしようと思っていた。その映像を持って帰り、どうやって終わろうか?と話していた。それが編集構成の面白いところである。僕としてはベストなチョイスをしたと思っている。しかしそうでもないと思われるのが面白いところ」とドキュメンタリー映画の面白さを話した。

園子温監督について質問が飛ぶと「いろんな側面がある人なんでいろいろ言えるが、すごい才能のある人。僕が好きなところは、人を簡単に尊敬しないかわりに見下さない。福島で、被災地のおじさんと喋ってる感じが園子温っぽい。まともな感覚を持ちながら、全部が変。制作のエネルギーもなかなかいないと思う」とフラットな人であると説明した。

同作を見た園子温監督の感想は「正視できないといっていた。ほんとに勘弁してほしいといっていた。この話をされるのも嫌だといっていた。自分がいやなシーンばかり面白いといわれる。被写体が喜んでるところは客が力がなかったりする。正視できないっていうのはよかったと思っている」と褒め言葉と捉えている。
上映特別講座を受講した学生は、監督と直接質問ができいろいろ勉強担った様子。受講生の中から何人かは映画監督としてのちに作品を見ることになるのかもしれない。

『園子温という生きもの』は5月14日から、『ひそひそ星』と同時公開。

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(取材・文:波江智

    ライタープロフィール

    波江智

    1978年生まれ。映画ライター。シネマトゥデイややcinema Ala Carteなどに寄稿。ジョージ・ルーカスとガイ・リッチーを敬愛。ベストムービーは『ロックストック&トゥースモーキングバレルズ」。

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