死ぬことを描き、生きることを考えさせられる映画「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」

松竹が新たに始めた洋画レーベルPiccadilly Prime Label(ピカデリープライムレーベル)
新宿ピカデリーを拠点に、ジャンル・製作国にとらわれることなく女性に向けた良質でバラエティに富んだラインナップを展開している。このレーベルの2016年のラインナップ第二弾が今作「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」だ。

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(C)2015 SURPRISE FILMPRODUCTIE VOF / VARA / PRIME TIME/ RIVA FILM / FASTNET FILMS

あらすじ

オランダの貴族で大富豪の一人息子ヤーコブは広大な敷地にあるお城に住んでいる。アストン・マーチンを筆頭に高級車を何台も所有しているが、一切感情を持ったことがなく、楽しみを感じない人生に嫌気が差していた。

さらに自分を残して、母親が死ぬ。いよいよ人生に意味を見いだせなくなった彼は自殺を試みるが、常に邪魔が入り死ぬことができない。

そんな時、偶然拾ったマッチ箱に記された謎の代理店のあるベルギー・ブリュッセルへと向かう。その店は“最終目的地への特別な旅”のプランを提案する旅行代理店だった。それは“あの世への旅”であり、事故に見せかけた自殺幇助のサービスを提供しているのだった。

ヤーコブは喜んでサービスを依頼し、“いつ、どこで、どうやって死ぬか分からないサプライズコース”を申し込む。ついでに自分が入る予定の棺桶を物色していたヤーコブは、同じコースを申し込んだというアンネと出会う。

そのアンネとの出会いで彼の感情は揺さぶられ、もう少し生きていたくなってしまう。アンネもまた、同じ思いを抱きキャンセルを申し出た。しかしながら既にプランは実行中であり、中止はできないと告げられてしまう。

ヤーコブとアンネは、謎の代理店の激しい追跡をかわしながら逃避行の旅に出るが、さらに思いもよらない真実が明かされていくのだった…。

素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店
(C)2015 SURPRISE FILMPRODUCTIE VOF / VARA / PRIME TIME/ RIVA FILM / FASTNET FILMS

あえて逆の要素を入れることで光る本質

例えばお菓子を作る時、目当ての味を引き立たせるために、ひとつまみの塩など逆の要素を隠し味としていれることがある。塩キャラメルなどはわかりやすい例だろう。

「素敵なサプライズ  ブリュッセルの奇妙な代理店」は映画のそれと言える。

本作の主人公ヤーコブもまた死を望んだ時に生きることを強く意識し、ポジティブに動き出す。

物語の描かれ方はブラックな部分もあるが、出てくるキャラクターが全てユーモアを身にまとった人々たちであり、全体的にはやはり“人間への優しさ”が作品を覆ってくれている。

主人公が大富豪ということもあって、出てくるものがすべて高級であったり凝ったものであったりするのも見どころだ。建物、ファッション、インテリア、小物の数々まで、デザインや色合いがかわいらしい。そういった視覚的な魅力も本作の見所と言えるだろう。

本作の宣伝では、マイク・ファン・ディム監督を“オランダのウェス・アンダーソン”と謳っているが、なかなか的を射た表現の仕方だと思う。

オランダ映画だが舞台はベルギー・ブリュッセル。特にその土地に特化したような文化・風習が出てきたりすることもなく、テーマも普遍的なものである。つまり物語への入りにくさは全くないのだ。

上映時間も2時間を切っており、気軽に鑑賞することができる。ゴールデンウイークと夏休みの大作ラッシュの間になる5月末、チャーミングな一品はいかがだろうか。

最後に、本作の予告とは別に劇場用マナーCMが作られているが、これが実に秀逸である。機会があれば、こちらもぜひ!

「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」は5月28日より公開。

http://sutekinasurprise.jp/

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[付録] 「死を意識した時に生を感じる」映画たち

甘さの中に塩味が程よく聞いた作品たちを少しばかりご紹介。

「生きる」
「素晴らしき哉、人生!」
「おくりびと」
「死ぬまでにしたい10のこと」
「エンディングノート」
「最高の人生の見つけ方」
「母の身終い」
「落下の王国」
「永遠の僕たち」
「桃さんのしあわせ」
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
「RENT/レント」
「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」
「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」
「リップヴァンウィンクルの花嫁」
「追憶の森」
「世界から猫が消えたなら」
「或る終焉」
「君がくれたグッドライフ」
「彦とベガ」

(文:村松健太郎

    ライタープロフィール

    村松健太郎

    村松健太郎

    村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年目に入った映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。

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