実際のところどうだった?第29回東京国際映画祭

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(東京メトロからの直結連絡口メトロハットも期間中はオリジナルデコレーション)

知ってた?知らなかった?
行った?行かなかった?
良かった?悪かった?今年のTIFF

今年も芸術の秋に合わせて東京国際映画祭(TIFF)が開催。来年は節目の30回ということで、歴史も感じるようになりました。

ネットニュースに安倍首相とメリル・ストリープと松山ケンイチと東出昌大のレッドカーペット上の4ショットをちょっとはご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、はたから見れば映画祭なのかジャパンプレミアや完成披露イベントなのかはわかりません。最終日に六本木ヒルズに人があふれていて、おおぉ、最終日盛り上がっているなと思ったら、東京メトロ主催のリアル脱出ゲームイベントの参加者でした。

開催期間中は毎日、何かしらのイベントが行われていてそれなりにメディアに取り上げたりもしているのですがどれも単発の記事で10日間ぶっ通しでやっているという連続性は感じられないのが正直なところですよね。

昨年は審査員のとして参加。
http://cinema.ne.jp/recommend/filmfes2016080317/

今年は取材者として参加、さらに遡ればメイン会場のTOHOシネマズで働いていたので運営のお手伝い側にもいて、もっと言えば映画ファン=一般人でも行っていたのでいろんな見方ができる中で、今年のTIFFを“あれやこれや”です。

知らなかった人に知ってもらえて、行かなかった人が来年は行ってみようかなとちょっとでも思ってもらえれば・・・・。

東京国際映画祭は日本ではもちろんアジアでも一・二を争う大規模な“国際”映画祭です。
と言ってみても「君の名は。」で久しぶりに映画館に行った!みたいな人にとってはやっぱり敷居の高い、マニアックな集まりにしか見えないのが現実ですよね。

これは映画祭の在り方を左右することで、難しいことなんです。それこそかつては王手の新作映画の先行有料試写会に近い形だったこともありました。ライトな映画ファンにはこっちのほうがストレートに響くし、華やかなイベントになります。

ですが、それはそれで映画祭としてはどうなの?ということになってしまいます。TIFFと名乗っているからには何かしらの“色&顔”がないと存在意義がなくなってしまいます。

そこで、20回目あたりから改めて映画祭の顔であるべき“コンペティション部門”の底上げとアジア映画に特化したライナップに少しずつ変革を進めていって、だいぶ映画祭の“色&顔”が見えてくるようになり、必然的に映画祭としての格も上がってきました。

もちろん、国際映画祭の最高峰というべきカンヌ映画祭みたいに華やかさも、映画祭としての“色&顔”も常に兼ね備えちゃっているような映画祭もありますが、これはごくごくまれな存在です。カンヌの実績は日本公開時にうたい文句として使い続けられてきて、ブランド化しているのも大きいですね。ちなみに今年、カンヌである視点部門審査員特別賞を受賞した「淵に立つ」の深田昇司監督によるとカンヌのお客さんというは殆どが業界人だそうです。となると時々予告編にも使われる公式上映後のスタンディングオベーションをしている人はほとんど業界人なんですね。

だから、いきなりこれなろうというのはちょっと無理があります。未知の映画・才能を発掘・発信することで“色&顔”を作っていくのがまず優先項目でしょう。

深化をとるか?拡散をとるか?映画祭の在り方について永遠について回る課題ですね。

だけど良かった今年のTIFF

嫌なことを先に言ったほうがいいので、残念だった話を先に。

やっぱり、言わないわけにいかないのがオンラインチケット販売トラブル。最初にトラブルが起きて、さらにアナウンスした復旧予定に間に合わないという二重の“やっちまった”は、映画祭のスタートにミソをつけてしまいました。

レッドカーペットに来る予定だったヒュー・グラントの来日もなくなってしまったり、ニコ生の中継も何にもやってない時間からスタートして真黒な画面を延々と放送したりと始まる前のゴタゴタは見事に出鼻をくじかれた感じです。

実際に開幕してみると今年から会場になった六本木EXシアターは舞台演劇・音楽ライブの劇場ということもあって、やっぱりずっと映画を見るにはちょっと辛い椅子でした。六本木ヒルズとEXシアターの導線の案内もなくて、ちょっと優しさがない気がしました。チケットの当日券販売所も場所が変わっていてこちらの案内は厚めでしたけど、それは案内されなくても何となく行きつけるなぁという感じです。

国際映画祭ということで外国からの来場者も多かったのですが、外国語表記も六本木ヒルズにもともとあるものは充実していましたが、映画祭用の表記が少ないのは気になりました。いわゆるホスピタリティーの充実はもっと進めたほうがいいですね、“お・も・て・な・し”の国ですから。

海外からのゲストと触れ合える場が少ないのももったいないですね。中には上映がある内に関係なく10日間六本木に滞在している方もいたので、もっとコミュニケーションが取れれば楽しかったでしょう。関係者用のラウンジに行けば結構会えるんですが、ここに入るには特別なパスが必要になってしまいます。今年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に行った時のゲストとの距離の近さを思い出すと、ちょっと寂しいですね。

EXシアターが映画向きなのか?MX4D劇場の特別仕様の椅子で普通の映画を普通に見るのはどうなのか?はちょっと意見が分かれるところでしょうが、それにしても久しぶりに六本木に開催地を一本化できたのは何よりよかったことでしょう。過去には大人の事情があって日本橋でやったり、新宿でやったりと開催地が分かれたことも何度もありました。

やっぱり“お祭りごと”なんで一極集中してこそ盛り上がります。ただでさえ、都心は娯楽が入り乱れているので間にいろんなものが挟まってくれば、自然とそのイベントのインパクトは薄まってしまいます。これは映画祭に限らずどんなイベントでも開催地が飛び地になるのはあんまり良いことではないですよね。しかもご存知の方はわかるかと思いますが、六本木はほかの都心の繁華街へのアクセスが意外と不便な陸の孤島で、いざ渋谷や日本橋、新宿地区へ行こう!としても意外と手間がかかって“会場のはしご”はちょっと難しいところでした。

六本木で開催が完結するのは映画祭の運営する側も、関係者枠で参加する側もスムーズにことを進めやすいでしょうし、トラブル対応や把握もスムーズになっていくでしょうから

誰にしてみてもよかったと思います。

これからは余計な大人の事情はあまり持ち込まず、六本木一極集中で行くことを願います。いずれは“六本木の国際映画祭り”として定着していくことでしょう。映画祭に限らずイベントごとは何より“定着”が肝です。定着が進めば知らなかった人の耳にも話が届くこともあるでしょうし、来たことのない人が足を向けてくれるようになっていくでしょう。

そういうことでいうと同じ時期のハロウィンなんかはTIFFより後からやってきてあっという間に抜き去っていった感じがあります。10月末までは実際に会場からちょっと外れてみると映画はどこへ行ったのか?というぐらいカボチャであふれていました。

定着が進めば、例えば音楽フェスで好きなバンドをお目当てにして行ってみたら、一緒に登場した知らないアーティストの楽曲に触れるような感じで、映画のイメージのない国の映画にも触れてもらえて、映画祭全体に気持ちが向いていくようなこともあるでしょうね。

あの映画とも、あの人ともTIFFが最初の出会いの場

日本の映画祭なので邦画、日本人俳優をのぞいてみてもトム・クルーズ主演で「ヴァニラスカイ」としてリメイクされた「オープン・ユア・アイズ」。今や「バードマン」「レヴェナント」で二年連続オスカー監督となったアレハンド・ゴンザレス・イニャリトゥの長編デビュー作「アモーレス・ペロス」をグランプリにしています。今回のTIFFで映画ファンにとっては最大級事件といっていいデジタル・リマスターでの復活を果たしたエドワード・ヤン監督の「牯嶺街少年殺人事件」や韓国映画ベスト1に押す人も多い「殺人の追憶」も受賞。他にも「ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」の時点でガイ・リッチーに監督賞をオスカー前に「リトル・ミス・サンシャイン」観客賞を贈ったりしています。

過去にはヤング部門でブラアン・シンガーやジャン=ピエール・ジェネを選んでいたりもしています。ブラアン・シンガーに至っては前回28回では審査員長として凱旋しました。

遡っていってびっくりするのが06年の19回のグランプリ。「OSS117私を愛したカフェオーレ」。映画自体は“??”でしょうが、監督は後にあの「アーティスト」でオスカー5部門を制したミシェル・アザナヴィウスだったりします。

昨年のTIFFコンペティション部門の作品からも4本の映画(「神様の思し召し」「ブルーに生まれついて」「ヒトラーの忘れ物」「ニーゼ光とアトリエ」)が公開済&待機中です。これらの買い付けはTIFFの場で固まったものなので、やはり出品され好評を受けたことが日本公開の大きな後押しになったのは確かでしょう。TIFFで話がまとまって、日本で公開されて大ヒットというある意味究極の結果を生んだのがあの「最強の二人」ですね。これぐらいのヒット作が2年1作品ぐらいのペースでコンペティション部門作品から出てくればいうことがないのですが・・・・。
ちなみに、今年の各賞の結果は御覧の通りとなりました。昨年の結果を見ても日本公開の確率は高いでしょうから、名前を覚えておいても損はないですよ。

東京国際映画祭 001
(C) 2016 Tokyo International Film Festival All Rights Reserved.

【コンペティション部門】
東京グランプリ 『ブルーム・オブ・イエスタディ』
審査員特別賞 『サーミ・ブラッド』
最優秀監督賞 ハナ・ユシッチ監督『私に構わないで』
最優秀女優賞 レーネ=セシリア・スパルロク『サーミ・ブラッド』
最優秀男優賞 パオロ・バレステロス『ダイ・ビューティフル』
最優秀芸術貢献賞 『ミスター・ノー・プロブレム』
WOWOW賞『ブルーム・オブ・イエスタディ』
観客賞 『ダイ・ビューティフル』

【アジアの未来部門】
作品賞 『バードショット』
国際交流基金アジアセンター特別賞『ブルカの中の口紅』

【日本映画スプラッシュ部門】
作品賞 『プールサイドマン』

【ARIGATŌ(ありがとう)賞】
新海誠(映画監督)、高畑充希(女優)、妻夫木聡(俳優)、ゴジラ

【SAMURAI(サムライ)賞】
黒沢清、マーティン・スコセッシ

(文・撮影:村松健太郎 写真提供:東京国際映画祭)

    ライタープロフィール

    村松健太郎

    村松健太郎

    村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年目に入った映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。

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