『君の名は。』に続く2017年のアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』って、どんな映画?

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? メイン

©2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

今年、興収200億円を突破する大ヒット作となったアニメーション映画『君の名は。』の東宝プロデューサー川村元気氏が、2017年夏の新作アニメーション映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の製作を発表しましたが、思わずはっとされた映画ファンのかたもさぞ多かろうかと思われます……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.188》

そう、これって、あの岩井俊二監督の出世作のアニメ化なのです!

若き日の岩井俊二監督が手掛けた、
90年代を代表するテレビドラマ『打ち上げ花火』

そもそも『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』とは、フジテレビ系列のドラマシリーズ『if もしも』シリーズの1本として1993年にオンエアされたテレビ・ドラマです。

『ifもしも』は、ドラマの途中でAとBふたつの選択肢が提示され、それぞれの道を描きながら、右へ向かうか左へ向かうかで、人間の運命が大きく変わっていくことを示唆した人気シリーズでした(ストーリー・テラーはタモリが担当)。

『打ち上げ花火』の場合、小学生の典道と祐介が、ひそかに恋い慕う少女なずなが転校することになったのを知らぬまま、夜には花火大会が行われる夏の登校日、プールで競争することになります。

たまたまその場に居合わせて、審判を引き受けることになったなずなは、勝った方と駆け落ちしようと、ひそかに心の中で思っていました。

そして勝敗が決まるとともに、ふたつのドラマが展開されていくのです……。

原作・脚本・演出を手掛けた岩井俊二監督は、当時は若手ドラマ演出家として台頭していた時期でしたが、これが大いに話題を集めるとともに高い評価を受け、テレビドラマとしては異例の日本映画監督協会新人賞を受賞。

思春期にさしかかる頃の少年少女の幼くも繊細な心情をセンチメンタルに捉えた演出、VTR撮影ながらフィルムっぽい映像に腐心した撮影の妙、REMEDIOSの美しい音楽、また浴衣で大きなカバンを引きずるように持ち歩く姿も印象的なヒロインなずな役の奥菜恵は本作でブレイクし、人気若手女優の道を歩んでいくことにもなりました。

そして95年には、ストーリーテラーのシーンなどをカットして再編集した版が劇場公開。またこの年、岩井監督は初の長編映画『Love Letter』を大ヒットさせ、一気に映画界へ躍り出ることにもなりました。

「アニメ界の三池崇史」こと
新房昭之総監督の手腕に期待!

さて、2017年のアニメーション映画版は、なずな役に広瀬すず、典道に菅田将暉、祐介に宮野真守と、人気俳優&声優チームによる布陣となります。

現在発表されているイメージイラストや特報などから察するに、原作のTV版が小学生だったのに対して、今度は中学生か高校生かに年齢が引き上げられているようですね。

岩井俊二の原作を基に、『モテキ』などの監督・大根仁が脚本を担当、音楽は『涼宮ハルヒの憂鬱』をはじめ大ヒット・アニメ作品に欠かせない神前暁、そして総監督には『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズなどでアニメ・ファンから絶大なる信頼を置き続けている新房昭之。

まるで「アニメ界の三池崇史」と呼びたくなるほど休みなく作品を連打し続けていく新房総監督は、さまざまな技巧を凝らしながらアニメーション画面の奥に見え隠れする光と闇の描出に長けた才人で、2017年1月には新作映画『傷物語Ⅲ』が公開予定ですが、まだ一般的なところでの知名度は薄く、しかしながらその意味では『君の名は。』の新海誠監督に続いての大抜擢ともいえるでしょう。

川村プロデューサーは「今、本当に才能のある人はアニメ界にいる」と断言していますが、新房総監督はそんな彼の言葉を確信たらしめる存在です。

少なくとも彼が構築する映像世界は一度見たら忘れられないほどの強烈な個性に満ちあふれていますので、今度の『打ち上げ花火』も期待せずにはいられません。

それにしても漫画やアニメの実写映画化は今や当たり前のものと化して久しいものがありますが、ここにきてアニメの逆襲ではありませんが、実写のアニメ化、特に劇場用映画のアニメ映画化というのはさほど多くないだけに(細田守監督の『時をかける少女』も、あれは実写版リメイクとかではなく、大林宣彦監督版の続編的資質を湛えた作品でした)、これまた革命的な事象が期待できそうですね。

またTV版は50分ほどの中編でしたが、今回は長編映画としての制作になるので、どのような新しい要素が加わるか、なども注目したいところです。

いずれにしましても、『君の名は。』や『聲の形』『この世界の片隅に』などなど、大躍進となった2016年に続き、2017年も国産アニメーション映画の勢いはとどまるところを知らなそうですね。

長編アニメーション映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』は、2017年8月18日公開予定です。

(文:増當竜也)

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    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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