清純派から国際女優の道へ、そして……と波瀾の人生を歩み続ける島田陽子

写真家『早田雄二』が撮影した銀幕のスターたちvol.29

現在、昭和を代表する名カメラマン早田雄二氏(16~95)が撮り続けてきた銀幕スターたちの写真の数々が、本サイトに『特集 写真家・早田雄二』として掲載されています。
日々、国内外のスターなどを撮影し、特に女優陣から絶大な信頼を得ていた早田氏の素晴らしきフォト・ワールドとリンクしながら、ここでは彼が撮り続けたスターたちの経歴や魅力などを振り返ってみたいと思います。

島田 陽子さん

最近では菊地凛子をはじめ国際的に活躍する日本人女優も徐々に増えてきていますが、1980年代初頭、海外テレビドラマ・ミニシリ-ズ『将軍 SHOGUN』(80)のまりこ役で全米を沸かせた島田陽子こそは、日本人国際女優としての象徴といってもいいかもしれません。

もっとも、それゆえに彼女の人生は波瀾に満ちたものになってしまっているような気もしないではありません……。

1970年代の清純派女優としての
順風満帆なキャリア

島田陽子は1953年5月27日、熊本県熊本市の生まれ。小学2年生のときに東京都府中市に家族で引っ越し、中学時代は劇団若草に在籍しながら、バレリーナをめざして牧阿佐美バレエ教室に通っていました。なるほど、彼女のスタイルの良さはこの時期に培われたものなのでしょう。

70年、『おさな妻』でテレビドラマ初出演し、71年にはファッション・デザイナーの大関早苗に勧められてテレビドラマ『続・氷点』の薄幸のヒロイン陽子役のオーディションを受け、12740人の中から選ばれて出演。

また同年春より始まった『仮面ライダー』にレギュラー出演し、子どもたちの間では早くも綺麗なお姉さんとして慕われていきました。

続けて72年のドラマ『わが恋の墓標』『愛子よ眠れ』などにも起用され、また同年『愛のナレーション』で歌手デビューも果たし、河原崎長十郎主演の舞台『屈原』のヒロインにも抜擢され、さらには森谷司郎監督が小椋桂の歌を効果的に用いた恋愛映画『初めての愛』(72)のヒロインで映画デビューするなど、順風満帆のスタートを切りました。

その後も『銀座わが町』(73)『花ぐるま』(74)『ほおずきの唄』(75)『おおヒバリ』(77)など多数のテレビドラマのヒロインに扮して、若手ドラマ女優としての地位を築き上げていきます。

特に青春シリーズの決定版『われら青春!』(74)でのマドンナ先生の清楚なイメージは、当時の若者たちを虜にしていきました。

一方で映画のほうは、『喜劇・日本列島震度0』『流れの譜』2部作(73)を経て、松本清張原作、野村芳太郎監督の名作『砂の器』(74)で野心を抱く作曲家の愛人を演じて注目され、75年には同じ松本原作作品『球形の荒野』でヒロインを、また『夜霧の訪問者』ではヒロインと悪女の二役を演じ分けています。

76年には人気シリーズ『トラック野郎・望郷一番星』のマドンナと、市川崑監督による角川映画第1弾『犬神家の一族』ヒロインを演じ、この時期になると清純派女優としての立場が定着するとともに、演技力や存在感も備わってきます。77年の野村監督の超大作『『八つ墓村』(77)では「『砂の器』のお礼に」と、山﨑努扮する32人殺しの犯人に最初に惨殺される妻役でノンクレジット出演しています。79年には『白昼の死角』で従来のイメージを覆す悪女を熱演し、続く『黄金の犬』では疾走した愛犬ゴロを探す未亡人を演じました。

大ヒット海外ドラマ『将軍 SHOGUN』が
島田陽子にもたらした光と影

こういった順調な活動から、島田陽子がさらなる大飛躍を遂げることになったのは、アメリカNBCで80年9月15日から19日まで5日間連続で放送された長時間ドラマ『将軍 SHOGUN』(80)でした(日本では80年に再編集された劇場版が公開され、81年3月30日から4月6日にかけてドラマもオンエア)。

戦国乱世が終わってまもない17世紀初頭、日本(のような国? と言いたくなるほど、西洋人の眼から見すえた日本が描かれます)に漂着した西洋人ウイリアム・アダムスをモデルとするイギリス人航海士(リチャード・チェンバレン)と愛し合うようになる日本側のヒロインまりこ役に大抜擢された島田陽子は、ドラマの大ヒットによって全米で空前の“SHOGUN”ブームが巻き起こっていく中、彼女も大きくスポットが当てられ、ゴールデングローブ賞テレビドラマシリース部門女優賞やゴールデンアップル賞を受賞するとともに、“まりこ”は西洋から見据えた日本女性の象徴ともみなされるようになりました。

一躍国際女優として躍り出た島田陽子は、女性マラソン・ランナーのミチコ・ゴーマンの半生を描いたアメリカ映画『リトル・チャンピオン』(81)に主演します。

もっとも、この後彼女の女優としての活動は、正直に申してどこか出し惜しみしているかのように少なくなっていき、伊藤俊也監督のミステリ『花園の迷宮』(88)での久々の映画主演は貫録を示すに足るものでしたが、このとき共演した内田裕也との不倫によってマスコミが彼女を追いかけ続けたことなども含めて、どこかスキャンダラスな女優としてのイメージが定着していったのは残念な限りで、国際女優としての名声を手に入れたがゆえに、何かが失われてしまったような気もしないではありません。90年代に入っても、ヘア・ヌード写真集の発売など、女優業以外の話題ばかりをマスコミは書き立てていました。

その伝では、むしろ、現代ソード・アクション映画の隠れた怪、いや快作『ハンテッド』(95)や、日本のバイオレンス漫画原作の『クライング・フリーマン』(95)といったアメリカ映画への出演や、日中合作『国姓爺合戦』(01)のほうが、国際女優としても、また彼女ならではの存在感を放っていたようにも思われます。

そんな流れの中、ちょっと面白い作品がありました。2010年のいまおかしんじ監督作品『島田陽子に逢いたい』です。ここで彼女は島田陽子自身を演じ、不本意なラブシーンを演じるのがいやで撮影現場を飛び出した彼女が、末期がんの男性と出会い、愛を育んでいくという何とも不可思議な面白みに満ちた作品で異彩を放っていました。

かつての国際女優としてのキャリアなどもほんわかとぼかすように包み込み、これからは映画やドラマに素の魅力を発してくれるのではないか。『島田陽子に逢いたい』には、そう思わせてくれる楽しさがありました。

最近では宇宙葬の生前申し込みも済ませたという(⁉)、そんな島田陽子のことを知る人の話では、本来の彼女はほんわかしたマイペースなキャラクターで、ちょっと浮世離れしたところはありつつも、そこに嫌味などはまったくないと聞いたことがあります。

今やベテランの域に達している彼女の今後の活動に期待したいものです。

※「東京スポーツ」「中京スポーツ」「大阪スポーツ」は毎週月曜、「九州スポーツ」は毎週火曜発行紙面で、「生誕100年 写真家・早田雄二が撮った銀幕の名女優」を好評連載中。

(文:増當竜也

    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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