『ズートピア』、あまりにも深すぎる「12」の盲点

2.ジュディは“見た目”で判断して、“中身”を知ろうとしなかった

一見“正しい”性格をしているようなジュディでしたが……じつは、ほんのすこしの差別(偏見)意識が作中でみえています。というよりも、彼女は“自分は見た目で判断されるのを嫌う”くせに、“とても物事の見た目を気にしている”のです。

ジュディの“見た目を気にする”性格がもっとも表れていたのが、 レンジでチンした“おひとりさまにんじん”の中身を見たシーンでしょう。
彼女はそのにんじんの小ささにがっかりして、食べようとはせず、そのままゴミ箱に捨ててしまうのです。

この“おひとりさまにんじん”の対比になっているシーンがあります。
それは、後のMr.ビッグの娘の結婚パーティにて、ニックが“ネズミサイズのプリン”を食べたときのこと。彼はプリンが小さいからといってがっかりせずに、スプーンでていねいにすくって、味わいながら食べて笑顔になっていました。

このふたつのシーンで、ジュディはじつは物事の見た目を重視するあまり“中身を知ろうともしない”、ニックは物事の“中身をちゃんと知ろうとする”性格であることがわかるんです。

そのほかにも、ジュディは小さくてジメジメした住まい(うるさい隣人もいる)を「いいじゃない!」と肯定していたようでしたが、玄関前にはカラフルでかわいらしいマットを敷いていたりもしました(少しでも見栄えをよくしたかったのでしょうが、セメントまみれになった足で汚してしまうのが切ない……)。

さらに、ジュディはヌーディスト(はだかで暮らす人々)たちにも拒否反応を覚えていましたね。彼女はなんとか堂々とした態度でいようとするけど、やはりところどころで目を塞いでしまっていました。

さらにさらに、ギャングに捕らえられたとき、ジュディはつぎつぎに出てくるシロクマたちのことを「あれがMr.ビッグね!」などと、その名前から“決めつけ”をしていました(本当のMr.ビッグは、名前に反して小さなネズミだった)。

これはクスクス笑えるコメディーシーンというだけでなく、ジュディの性格をしっかり示していたんですね。

ジュディの“表面上だけをみている”ということは、中盤のあの悲劇にもつながってきます。
彼女は肉食動物だけが凶暴化するという事実を、“生物学的な共通性がある”という客観的な視点で答えていたようですが、それが“多くの肉食動物を傷つける”という重大なことに気づけなかったのです。

そして、一度は持って行こうとしなかったコンスプレー(キツネ撃退用のスプレー)を携帯していたこと、それをとっさに使おうとしていたことをニックに指摘され、ジュディの“(ニックの)表面上ばかりを捉えていたこと”は決定的となるのです。

ズートピア 本編映像

 

(C)2016 Disney. All Rights Reserved.

3.ジュディは“職業差別”をしていた?

そのほかにも、ジュディのセリフや行動には、こんな差別(偏見)がみえてきます。

・ジュディが初めて警察に来たとき
ジュディは新任で駐車違反の切符をきる仕事を申し付けられるが、「私は警察学校でトップの成績だったんですよ!」とボゴ署長に反論する。

・ひどい1日が終わって両親にテレビ電話をしたとき
父親に「駐車違反の切符をきる仕事の制服だ!」と指摘されると「これは今日だけなの!」とごまかそうとする。

・切符をきる仕事をして、市民から罵詈雑言を吐かれたとき
「私は本当の警官、私は本当の警官……」と頭を打ちつけながら自分に言い聞かせる

どうでしょうか、彼女に職業差別的な意識が見えないでしょうか?
新任であればそれほど重くない仕事(切符をきる仕事)を任されるのも当然、というのが普通の認識だと思うのですが……ジュディはそれを突っぱねて「自分にはもっとふさわしい仕事がある」と考えていたりするのです。
彼女は努力して警官になったということもあり、“(自分が思う)立派な仕事”でないと、自己肯定ができないようになっていたのではないでしょうか?

振り返れば、ジュディの両親は“夢を諦めたからこの(農家の)仕事ができているんだ”“にんじんはただ売るだけでいい、これも大切な仕事だ”と幼いころのジュディに言っていました。
初めてのウサギの警官を目指すジュディにとって、“努力を伴わないような両親の仕事”を、どこか見下していたところもあるのかもしれません。

4.ベルウェザー副市長にあらわれている自己顕示欲とは?

黒幕のベルウェザー副市長の“心の闇”は、作中で何度かあらわれています。

・ジュディがウサギ初の警察官となって写真を求められたとき
ベルウェザーはカメラの前に出て自分をアピールしようとする。

・ジュディとニックの捜査に協力したとき
「(副市長というのは)名前だけ、実際は秘書なの。選挙で羊の票を集めるためよ」と言っており、さらに上の役職を狙っていることが示されている。しかもそばに置いてあったマグカップには“世界でいちばんの副市長(パパを書き換えた)”と書かれていた……。

・ジュディが肉食動物だけが凶暴化する事実を発表したとき
ベルウェザーは笑顔でジュディに「とてもよかったわよ」と言っている。

ベルウェザーは、“誰かに認められたい”という自己顕示欲が旺盛なばかりか、たとえ誰かを傷つけようとも、自分の地位を守ろうとしていた悪しき人物だったのですね。
これは、ジュディが出した結論とは対照的になっています。

5.ジュディは、自身にあった差別意識と、大切な仕事を知る

ジュディは、チーターのクロウハウザーが、せっかく受付の仕事を気に入っていたのに、肉食動物が凶暴化する報道のために異動を命じられたことを目の当たりにします。
ジュディは警官という“望んだ仕事”のために努力してきたのですから、それが奪われてしまうことを知ったときのショックは大きかったことでしょう。

そして、ボゴ署長に“こういうときこそ立派な警官が必要だ、お前のような”と言われようとも、ジュディはずっと憧れていたはずの警官のバッジを返します。
市民を守ることが自分の信じていた仕事であったはずなのに、思慮のない行動で、自分自身が多くの人の差別意識を産んだこと、そして肉食動物たちを傷つけてしまったことを知ったのですから。

そして、故郷に帰ったジュディが出会ったのは、立派にパンの販売の仕事をしていたキツネのギデオンでした。
ギデオンは子どものころに、“ウサギが警官になれるわけがない”という理由でジュディをいじめていたことを「あのころは自分に自信がなかったんだ」と謝り、ジュディは「私も似たようなものだから」と答えました。

ここで、ジュディは“正しい”と思っていた自分にも、差別意識があったことを認め、はっきりと言葉に出しています。
彼女が認めた差別意識とは、“見た目で判断する”ものだけなく、職業差別をも差していたのかもしれません。
幼いころに自分をいじめていたギデオンが、大切な仕事をしていたことを知ったのですから。
これは、彼女が“表面上だけでない、物事の中身”を知った瞬間でもあるのかもしれませんね。

    ライタープロフィール

    ヒナタカ

    ヒナタカ

    ヒナタカ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」運営中のフリーライター。All Aboutでも映画ガイドとして執筆中。映画に対しては毒舌コメントをしながら愛することをモットーとしています。

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