TIFF監督特集“原田眞人の世界”『KAMIKAZE TAXI』トークショー
と、ここでさらなるゲストが。野良猫のようなヒロイン、タマ役の片岡礼子と、達男の仇となるヤクザの親分亜仁丸役のミッキーカーチスのサプライズ登場で、一斉に場内が沸く!
ミッキー「最初この役は安岡力也だったんですけど、たまたま俺も台本読んで、亜仁丸をやりたくなって、力也に俺に譲れと電話で頼んだら、駄目だと(笑)。でも、そのうち力也が舞台のスケジュールで急に出られなくなっちゃった」
原田「危うく血生臭い話に突入するところでしたね(笑)」
ミッキー「俺が力也を殺すか? てね(笑)。それでもうひと押しと思って監督のところへ行ったら、ちょうどサックスの音を録音(プレスコ)しているところで、そこに自前の仕込み杖を振り上げて『亜仁丸は俺だあ!』ってスタジオに殴り込んだら、即、俺に決まりました(笑)」
原田「誇張も多分にありますけど、大方そういうことです(笑)」
ミッキー「でもサックス大変だったよ。一晩で覚えなきゃいけなかったから」
原田「だって最初からできるって言ってたじゃないですか⁉」
ミッキー「そういわないと雇ってくれないと思ってさ!(笑)。車がぶつかりそうになって、亜仁丸が寒竹さんと初めて出会うシーン。実はあそこで初めて役所さんと会ったんですけど、そのとき“役所広司の風”を感じましたね。ものすごく彼のことを気に入っちゃって、だからあの後で『食事にでも誘ったらどうですか』『いや、照れ臭いだろ』みたいな台詞がとても言いやすかった(笑)。で、あの後ラストでようやく彼と再会して、そこでまた面白いことになるんだよねえ。この映画で初めてキネマ旬報助演男優賞をいただきました」
片岡「私は当時デビュー2、3年目くらいで、この作品もオーディションだったんですけど、何回か受けて最後のふたりまで残ったんですよ」
原田「え、最初から片岡礼子ってイメージだったけどなあ」
片岡「違う!(笑)」
原田「もうひとりって誰?(笑)」
片岡「有名な劇団の看板女優の方でした。ああ、もうだめだなと思ったんですけど、台本がとにかくショックを受けるほどに素晴らしくて、これは誰にも手渡したくない! と。そして最後、演技テストの相手役に本当の寒竹さん(役所広司)がいらっしゃって、もう既に役のままでいらしたんですね。そのとき私も“風”を感じましたし、すっと台詞を言えていました。それからしばらくして、私に決まったと連絡を受けたのですが、そのときも何だかあの“風”を受けての浮遊状態が続いていましたね」
ミッキー「(ぼそっと)あ、そうですか(笑)」
一同「(笑)」
ミッキー「役所さんの台詞『あ、そうですか』が現場で流行ったんですよ。役所さん、撮影が終わって家に帰って奥さんが『おかえりなさい』って言ったら『あ、そうですか』と(笑)」
原田「最初にみんなでホン読みをやったとき、役所さんは既に寒竹さんになっていて、最初の一言を発したとき、本当にみんな“風”を感じましたね」
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