あなたも知ってる?耳と心に残る数々の映画音楽の名曲たちを振り返る2

■「映画音楽の世界」

みなさん、こんにちは。

前回の記事では映画音楽作曲家の大御所ジョン・ウィリアムズ、エンニオ・モリコーネ、ジェリー・ゴールドスミスの三人を紹介しました。

今回の「映画音楽の世界」でも引き続き、オリジナルスコアを作曲する現代の人気作曲家をご紹介していきましょう。

映画音楽界を席巻する作曲家、ハンス・ジマー


現在の大作映画、話題作でもっとも名前を見る機会が多い作曲家がハンス・ジマーではないでしょうか。

ジマーは映画音楽界においてシンセサイザーとオーケストラを融合させた先駆者と言われ、単独作曲デビュー作の『レインマン』ではいきなりのアカデミー作曲賞ノミネートを果たしました。以降、アクションからドラマ、アニメーションまで多くの作品を手掛けてきました。
ジマーのスタイルは、叩きつけるようなロック調のリズムと勇壮なメロディが有名で、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『マン・オブ・スティール』などでその持ち味が発揮されています。

監督やプロデューサーからの信頼も厚く、『 ダークナイト』シリーズなどのクリストファー・ノーラン監督や、パイレーツシリーズのゴア・ヴァービンスキー監督、ジェリー・ブラッカイマーとのコラボレーションは現在も続いています。

また、一時期はリドリー・スコット&トニー・スコット兄弟も揃って自身の作品にジマーを指名していました。
アニメ作品では『ライオン・キング』でオスカーを獲得し、以降『カンフー・パンダ』『マダガスカル』シリーズなどのドリームワークスアニメや、『リトル・プリンス 星の王子さまと私』などを手掛けています。

ジマーは日本が関係する作品も幾つか手掛けていて『ブラック・レイン』『シン・レッド・ライン』『パール・ハーバー』『ラスト・サムライ』では和楽器も取り入れています。。
最新作 は『マッド・マックス 怒りのデスロード』のジャンキーXLと共作した、『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』。


独創的な世界観、ダニー・エルフマン


ティム・バートン監督作品でお馴染みのダニー・エルフマンも現代の人気作曲家の一人。

『バットマン』『スパイダーマン』『ハルク』『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』などアメコミ作品でヒロイックなテーマを作り出し、『シザー・ハンズ』や『ビッグ・フィッシュ』など、ドラマ性の高い音楽も作曲しています。

エルフマンはボーカリストとしてオインゴ・ボインゴというロックバンド出身であり、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』ではジャックの歌唱パートを担当し、『チャーリーとチョコレート工場 』でのウンパルンパの歌も、エルフマンの歌唱の多重録音という離れ業まで披露しています。



エルフマンのメロディーもキャッチーでいて独特の世界観を持っていますが、デヴィッド・O・ラッセル監督の『アメリカン・ハッスル』やガス・ヴァン・サント監督の『ミルク』など作家性の強い監督からの支持も受けています。
エルフマンは積極的にコンサートを行うことでも知られていて、日本でもティム・バートン作品をプログラムにしたコンサートを二年連続で実施し、エルフマン自身もステージに立ち歌声を披露しています。

手堅いスコアメーカー、アラン・シルヴェストリ


前述の二人ほど押しの強いメロディを持つわけではありませんが、アラン・シルヴェストリもまた堅実なオーケ ストレーションで人気の作曲家です。

シルヴェストリは古き良き映画音楽を現代の向きに合わせた作曲方法と、例えば『プレデター』や『“アイデンティティー”』など、オーケストレーションよりも映画の雰囲気に合わせた楽器の選び方で聴かせる音楽も得意としています。

シルヴェストリもまたロバート・ゼメキス監督とのコンビが有名で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『ロジャー・ラビット』、『フォレスト・ガンプ 一期一会』など人気作を手掛け、ゼメキス監督の最新作『ザ・ウォーク』のスコアも担当しています。
アクション映画では勇壮なオーケストラで聴かせることが多く、マーベル作品ではフェーズ1にあたる『キャプテン・アメリカ ファースト・アベンジャー』や 特大ヒットとなった『アベンジャーズ』も手掛けています。

それ以外にも『ヴァン・ヘルシング』や『G.I.ジョー』などではまた一味違ったヒロイックな音楽を作り出しているので、さすがベテラン中のベテラン。その多才ぶりは健在です。

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現代日本映画を代表する作曲家、久石譲


映画音楽に詳しくなくとも、久石譲の名前を知っている映画ファンの方は多いのではないでしょうか。

久石譲は現在の日本映画音楽界の先頭に立つ人物で、宮崎駿監督や北野武監督作品などのスコアを手掛け、親しみやすいそのメロディは映画音楽の枠を超えて純音楽としても確立しています。
さらに宮崎駿作品では、『となりのトトロ』や『崖の上のポニョ』などで愛嬌にあふれた主題歌も作曲し、映画同様に話題となりました。また、2013年には宮崎駿引退作品『風立ちぬ』と高畑勲監督作へ初登板となった『かぐや姫の物語』も手掛けています。

北野武監督とは『あの夏、いちばん静かな海』から『Dolls』まで作曲を担当し、こちらでは劇伴に徹しながら『キッズ・リターン』や『菊次郎の夏』などの名曲も生み出しています。特に[Summer]は多岐に渡って使用され、耳にする機会が多かったのではないでしょうか。
ほかにも『男たちの大和/YAMATO』『おくりびと』『天地明察』などの話題作を担当し、新作は山田洋二監督の喜劇『家族はつらいよ』になります。

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極上のサウンドセンス、坂本龍一


テクノポップスグループ、YMOとしての活動や、他アーティストへの楽曲提供、ピアニ ストとしての活動が多く語られる教授(愛称)ですが、実はベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』で米アカデミー作曲賞を獲得するなど映画音楽においてもその実力は証明済み。

映画音楽作曲家としての坂本龍一が誕生したのが、デヴィッド・ボウイと共に自身も出演を果たした大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』になります。。現在の坂本龍一映画音楽作品では弦楽を主体にしたオーケストラが中心ですが、この作品ではYMOで培われた電子音楽が見事に生かされたサウンドに仕上がっていて、哀愁感の漂うテーマ曲は見事に映画の雰囲気とマッチしていました。

オスカーを獲得して以降、坂本龍一のフィルモグラフィーは日本映画と海外作品を行き来する形となり、邦画では『御法度』 『鉄道員(ぽっぽや)』『星になった少年』などを、海外作品ではベルトルッチ監督の『シェルタリング・スカイ』やブライアン・デ・パルマ監督の『スネーク・アイズ』などを担当しました。
最新作は坂本龍一ファンを公言するアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の『レヴェナント 蘇りし者』。

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明瞭なメロディライン、佐藤直紀


久石、坂本両氏より若い世代で佐藤直紀をご紹介。
佐藤直紀は羽住英一郎監督の『海猿』シリーズでドラマ版から映画版まですべての作品を担当、知名度を上げました。

近年では『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズをはじめ『BALLAD 名もなき恋のうた』『永遠の0』『STAND BY ME ドラえもん』、『寄生獣』と山崎貴監督作品に登板 、『るろうに剣心』シリーズでは大友啓史監督とタッグを組んでいます。

佐藤直紀サウンドの特徴として日本映画離れした大胆な曲調があり、BALLADではオーケストラをメインに合戦などのバトルシーンで重厚かつ勢いのあるスコアを、『ストレンヂア 無皇刃譚』や『DOG&POLICE 純白の絆』などではシンセサイザーをメインに疾走感あふれるサウンドを披露しています。

テレビドラマも多く手掛け、『ウォーターボーイズ』の[モウイチドBON-BA-YEAH!]はCMやテレビ番組でもたびたび使用されています。NHK大河の『龍馬伝』ではデッドカンダンスのリサ・ジェラードをオープニング曲のボーカリストに招いています。
最新作は羽住監督の『暗殺教室 卒業編』、山崎 監督の『海賊と呼ばれた男』、大友監督の『秘密 THE TOP SECRET』がそれぞれ控えています。

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本来ならば名前を挙げなければならない、或いは注目の映画音楽作曲家がまだまだ大勢いますが、ひとまずここで一区切りを付けまして。

映画音楽作曲家もメロディメーカーとしてはロックミュージシャンやアイドルと変わりはありません。しかし映画を観ている中で音楽はなかなか意識しないもの。そんな中、耳に残る劇伴、心に響く音楽と出会うということは奇跡的なことなのかも知れません。それならばせっかくの機会です。好きな作曲家や好みの音楽スタイルを見付けるというのも、一つの映画の楽しみ方になるのではないでしょうか。

ここまで読んでいただき、ありがとう ございました。

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(文:葦見川和哉)

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