インタビュー

2016年04月11日

開館10周年!映画好きの夫妻がはじめた手作りの名画座「シネマヴェーラ渋谷」

開館10周年!映画好きの夫妻がはじめた手作りの名画座「シネマヴェーラ渋谷」

シネマズby松竹公式ライターの東京散歩ぽです!


全国各地の名物映画館を訪問し、その魅力をご紹介していく《ちょっくら映画館に行ってきました。》

今回は渋谷円山町で今年開館10周年を迎えた名画座「シネマヴェーラ渋谷」へ取材を行って参りました。

渋谷円山町で10年「シネマヴェーラ渋谷」


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シネマヴェーラ渋谷はJR渋谷駅から徒歩10分。Shibuya O-EASTなど多くのライブハウスが立ち並ぶ円山町の一角にあるビルの4階にあります。こちらのビルには3階に映画館のユーロスペース、2階はライブハウスのユーロライブ、地下1階と1階には映画美学校入っていて総合的な文化芸術ビルになっています。
今回はシネマヴェーラ渋谷の支配人、内藤由美子さんにお話を聞きました。

──シネマヴェーラ渋谷を開いたキッカケを教えてください

内藤由美子さん(以下:内藤):私と館主の内藤はもともと単なる映画好きの夫婦だったんです。このシネマヴェーラ渋谷を始める10年くらい前から名画座が少しづつ減ってきていて、だんだん観たい映画が見れなくなってきました。その頃、館主の内藤が映画館を開きたいという野望がありまして、このビルの3階のユーロスペースの代表の方と知り合いで、もともと桜丘町にあったユーロスペースを移したいというお話がありまして、じゃあ一緒に場所を探しましょうということでここが見つかって10年前の2006年1月14日にオープンすることになりました。

──ということは内藤さんご夫妻が中心になって運営されているんですね?

内藤:はじめはちょっとした人事とか事務の仕事していて私はほとんどタッチしてませんでした。そのうちチラシを担当するようになって洋画の番組を組むようになり2、3年前からは支配人をやらさせていただいてプログラムもほとんど決めています。

──番組の内容は邦画、洋画新旧問わず上映してるんですか?

内藤:最初の頃は邦画だけだったんですが、だんだん洋画が増えてきました。

今月は(取材時の3月)ミュージカル映画の特集をやっているのですが、年に2回は古いクラシック作品の特集をやっていて、たまにフィルム・ノワールをやってみたりとか監督特集をやってみたりしてます。

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──渋谷円山町は若い人たちが多く渋谷のディープなエリアというイメージがあります。若い人たちに人気があるライブハウスがたくさんある中で10年間名画座としてやられていますが、どういうお客さんがいらっしゃいますか?

内藤:とにかく若い人に来て欲しくて渋谷でやりたいというのがありました。
なので入場料は一般1,400円ですが学生料金(大学生と高校生)は800円、中学生以下は500円に設定しています。提携校(映画美学校、立教大、東京藝術大)の学生さんは学生料金よりも200円安い600円で見ることができます。常連さんの学生や美学校出身の監督さんがよく見に来られてます。

特集によりますが洋画は若い人が多く、邦画の旧作はシニア層が多いですが、かなり多くの若い人に来ていただいています。「名画座で映画を観る」ということが少し定着してきているのかなという印象です。

いつまでフィルム上映ができるか、という危機感


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↑映写室には35mmフィルムの映写機(日本電子光学FX-5000CA クセノンランプ2000W)とともにデジタル上映もできるプロジェクターが

──たくさんのクラシック作品を上映する名画座ですが、近年では次第にフィルム上映が減ってきていてDCP用プロジェクターでのデジタル上映が増えてきていると聞きます、シネマヴェーラ渋谷さんではどういう状況ですか?

内藤:今は35mmフィルムと16mmフィルムでの上映をやってますしデジタル上映もやってます。16mmフィルムは映写機をもう製造していませんし、35mmの映写機のメーカーもこの3月に撤退が決まりました。

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↑この日はクラシック作品をデジタル上映中でした

内藤:機材がなければ上映できませんし、配給さんもフィルムを保存していくのも次第に難しくなってきます。いつまでフィルムでの上映ができるか、という危機感は開館当初からありました。

今は古い洋画をデジタル素材でコレクションし、そうした事態に備えています。

字幕は館主自らつけることも


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↑フィルムを保管したり編集作業をする編集室

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↑フィルム上映時は配給から1週間に6本取り寄せる

──シネマヴェーラ渋谷で所有しているフィルムがたくさんあるんですか?

内藤:昔は16mmのフィルムをたくさん買ってたんですね。それに投影式の字幕を付けてやってたんですが、それもほとんど処分してしまいました。

今は海外からブルーレイディスクを購入して、独自に字幕を付けています。館主の内藤は著作権や知的所有権が専門の弁護士で字幕翻訳者ではないんですが、本業の仕事をしつつ自ら字幕付をやっている作品もあります。作業はいつもギリギリで、上映の前日に最終版が届いて「これから試写するぞ!」ってなることもあります。

──館主のご主人が自ら字幕を付けられているんですか?

内藤:はい。上映の最後に「字幕翻訳 シネマヴェーラ」と表示しているのは館主の内藤が字幕を付けているものです。字幕の権利はシネマヴェーラが持っているので、他館さんに作品を貸し出すこともあります。

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↑編集室には16mm映写機の編集機やビューワーでフィルムを確認する機材なども未だ現役

内藤:なので字幕は館主が作って番組作成やチラシやポスターや解説は私が作っていてと、ほとんど外注なしで夫婦でやってます。

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↑シネマヴェーラ渋谷のロビー。コンクリート打ちっぱなしのビルは美術館のような雰囲気

──最近では動画配信など様々な映画の見方があると思います。今この名画座で映画を見ることの意義はどの辺りにあると思われますか?

内藤:フィルムじゃないとという方もおられますし、どんなに状態が悪くてもフィルムがある限りはフィルムでやってほしいと言われる方もいます。

しかし、どちらかというとフィルムの状態が悪いくらいならデジタルで上映した方がいいと思っています。「名画座に来ればフィルムで観られる」というのがひとつあると思うんですが、それだけではないしょうし、ソフト化されてない作品が観られるというのもありますし、クラシックのものだと日本未公開のものとかも入ってきます。

私自身も家で観ることはありますが、映画館に行くっていうのはひとつの癖で時間が空いてれば大きなスクリーンでみんなと一緒に観るというのが映画じゃないかなと思ってます。こういった名画座があれば、若い人の中から次の映画界を盛り上げる人が出てきて、今後も映画館に来るお客様が育ってくれればいいなと思います。

今の映画人を応援できるような形で今後も続けたい


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↑シネマヴェーラ渋谷の座席数は142席の1スクリーン。中には毎日最終回を見に来る常連さんもいるとか(写真提供:シネマヴェーラ渋谷)

──最後に今後、シネマヴェーラ渋谷をどのように運営していきたいと思いますか?

内藤:フィルムの作品がかけられなくなる日が明日になるかもしれないという認識でいます。それでも回していけるようになりたいなと思います。ハリウッド映画以外にもヨーロッパ映画やアジア映画もかけていきたいですし、現役の若手監督さんの特集も少しづつやっていきたいなと思います。

どんな形でできるかは分かりませんが今の映画人を応援できるような形で今後も続けていきたいと思います。

──シネマヴェーラ渋谷支配人の内藤由美子さん、どうもありがとうございました!

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映画好きがキッカケで10年前に内藤ご夫妻が始めた「シネマヴェーラ渋谷」は近い将来、フィルム映画が観られなくなってしまうという強い危機感が生んだ名画座でした。映写機メーカーが撤退するなど環境が悪化していく中でもデジタル上映で古き良き作品をより多くの人たちに見てもらいたいという気持ちがここ渋谷でこの10年間支持され続けたのだと思います。

この名画座で映画を観た若い世代の中から、次の映画界を担う多くの人材が出ることでしょう。

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(取材・文:東京散歩ぽ)

(撮影協力:宮)

シネマヴェーラ渋谷


住所:東京都渋谷区円山町1‐5 KINOHAUS(キノハウス)4F(地図

電話番号:03-3461-7703

公式HP:http://www.cinemavera.com/

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