「羽生選手がいるので僕は」千葉雄大の言葉に観客は…『殿、利息でござる!』初日舞台挨拶

殿利息でござる 公開日1



本作の舞台となった宮城県の7劇場で先行公開し、大ヒットとなっている映画『殿、利息でござる!』がついに全国公開となりました。初日を迎えた2016年5月14日、丸の内ピカデリーでは舞台挨拶が行われ、満席の観客を前に主演の阿部サダヲをはじめ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、千葉雄大、松田龍平、中村義洋監督、さらには原作者の磯田道史先生が登壇しました。

本作は絶対に他言してはならないとされ、子孫にも多くは語られていなかったという破産寸前の宿場町・吉岡宿を救った感動の実話を基にした時代劇。家計を切り詰めて貯めた銭を藩に貸し付け、利息をもらって貧乏から抜け出すという、庶民とお上の知恵比べが見どころのひとつになっています。

撮影現場の楽しさが伝わってきた舞台挨拶に


舞台挨拶では各自の挨拶に始まり、質問は撮影で苦労した点へ。

造り酒屋の穀田屋十三郎を演じた主演の阿部サダヲは物語の途中で断食をする設定があったといい、
「プチ断食をしましたね。最初は酵素から、途中で水に。一瞬、水をかぶるシーンがあるんですが、あそこのシーンのためだけにやったんです。あ、これ、こういうところで言わなくてもいいんじゃないかな(笑)」と、照れながらも半ば言いたそうな様子で隠していた努力を明らかに。裸にふんどし姿で自ら水をかぶる場面がそれで、作品をこれから観る人はぜひチェックしてみてほしいです。

殿利息でござる 公開日2



宿場町の再生を計画する菅原屋篤平治を演じた瑛太は
「総髪(そうはつ)かもしれないということで髪を伸ばし始め、これは地毛で総髪がいけるかもしれないと。地毛で総髪をつくると楽なんですけど、でも、自分の髪の上にもうひとつ髪を付けなきゃいけない状況になりまして、僕だけ2時間も前に入らなきゃいけなくなったのが誤算でしたね。どうせならカツラでやればよかった」と、良かれと思って伸ばしておいた髪のせいで逆に苦労した点を挙げていました。篤平治(瑛太)の頭はそうなっていたのか〜と気になってしまいますね!

殿利息でござる 公開日3



瑛太のことを「えーた」と呼んでいる中村義洋監督は
「えーたとはけっこうぶつかったんですよ。でも、一番最初にぶつかったのは本当に髪の毛のところで、『伸ばしたのに足すんですか?』とさっきのこのテンションで静かに起こってるなと。それが一番最初にやり合ったところですね」と言うと、瑛太は「やりあってないですよ〜」と反論。ステージ上では“銭バトル”ならぬ、“やったやってないバトル”が始まりそうでしたが何とか未遂に。

殿利息でござる 公開日4



また、阿部が演じる十三郎の弟・甚内を演じた妻夫木は兄弟という設定について
「僕と阿部さんが似てないんじゃないかっていうのが心配でした」と言って周囲を笑わせると、中村監督と初めて仕事をしたことについて「ぜひ御一緒したいと思っていましたと監督に言ったら、『でも、オファーはもう4回くらい出してるからね!』と文句を言われて、ホリプロめ〜と思いましたね」と、まさかの事務所にあたる場面も。今回は念願かなって撮影できたことに妻夫木も監督も嬉しそうな様子でした。

殿利息でござる 公開日5



男性が多いなかで紅一点の竹内結子は撮影現場の雰囲気について
「冷房が効いてる部屋が1つしかなくて、全員男性なのでそのなかに私入れないんですよ。なので、その脇にある機材置き場にずっとひとりで座ってました。それで暑かったのが苦労した点です。まぁ、それくらい慎むべきですね」と、本作のテーマになっている“慎み”を使ってコメント。

殿利息でござる 公開日6



そんな竹内について阿部が
「スタッフさんたちも男ばっかりだったので、ずっと男ばかりで山形に泊まってたので、キレイな人(竹内)が来るとみんなでそわそわしましたね。ちょっとイイ服でも着ようかなとか」といった男性目線のコメントに会場は爆笑に包まれました。

殿利息でござる 公開日7



壁のような存在と言われた松田龍平は自分の役について
「この映画のなかの壁だな〜と」そのままのコメント。「今、起きてる状態だよね?」と阿部から突っ込まれる場面も(笑)また、完成した本作を観た瑛太が「(松田に)良い意味で気持ち悪かったことを伝えたかったのに、良い意味で気持ち悪いと何回も連呼してたら龍平がちょっと怒っちゃいましてね、実際に気持ち悪いんで観ればわかるんですけどね」と、褒めているのかけなしているのかわからない微妙さにマスコミ陣からも笑いが起きていました!

殿利息でござる 公開日8



武士に憧れる百姓の千坂仲内を演じたは千葉雄大。千葉は本作の舞台となった宮城県の出身と紹介されると
「この実話を知らなかったのでこんなお話があったんだと誇りを持って演じていたんですけど、まぁ、でも今回は宮城代表には羽生選手がいるので、僕はあまり取り上げていただかなくても大丈夫です」と、まさかの“慎みコメント”!MCが「そんなことないですね皆さん!宮城の星ですよね!」と言うと、会場からは大きな拍手が送られました。直後に千葉は「慎みすぎ」と突っ込まれていました(笑)劇中だけでなく、ついリアルな場でも“慎み”が出てしまうなんて、本作が持つストーリーの濃さが伺えます。

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どんな思いで映画化したのか、と聞かれた中村義洋監督は
「初時代劇どうですかと毎回質問されるんですけど、映画を観ていただくとわかるんですが時代劇感がないですよね。なくていいというか、本当に伝えたいことというか、メッセージ、こういった人がいたというところだけを強く思っていただければ。楽しく観ていただければいいかなということに一生懸命でしたね」と、時代劇っぽいイメージを持たずに観てほしいとの思いを言葉にしました。

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この心温まる原作を世に送り出した磯田道史先生は
「この話は闇に消えていくはずだったんですよ。なぜかというと本人たちがしゃべっちゃいけないことになっていたから。だけど、ひとりの吉岡宿のお坊さんがこれじゃいけないと生涯に一冊だけ本に残したんですね。それをみんなには見せないようにし、家族でさえ女性には見せないようにして、桐箱のなかに入れて一年に一回だけ数限られた人たちだけで管理され続けていたんですね何年間も。ところが『武士の家計簿』が映画化されたときに、こんな実話があったのかと、私のところに見ず知らずのおじいさんがメールをしてきて、それが本当にここにいる9人のような勢いだったんですよ。書いてください、映画にしてくださいと。おかしいんじゃないか頭が、と最初は思ったですが、その熱意を見てたら何かが裏にあるんじゃないかと思って。僕はその“国恩記(こくおんき)”を活字化したことがあって、東大の図書館に行って読んだらワンワン泣いてしまいました。何十年も古文書の調査をしていますけど、古文書を読んで泣いたのは初めてだったので、自分が生きている間に何かしておかなくちゃと思って本にしました」と、原作の執筆にあたった経緯を語ってくれました。

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吉岡宿のあった宮城県黒川郡大和町吉岡のおじいさんは自分の町で密かに伝えられてきたこの事実の書籍化を磯田先生に託し、この話が記されている古文書『国恩記』を読んだ磯田先生が『無私の日本人』(文春文庫)を執筆。中村監督が脚本を書いて映画化し、こうして作品が公開となったわけです。

全国で実施してきた「ゼニ集め」の結果は!?


さて、お金がストーリーの大きな柱になっている『殿、利息でござる!』ですが、約1ヵ月前の4月6日に東京で開催した完成披露試写会(http://cinema.ne.jp/recommend/tonorisoku2016040712/)では募金のように観客から5円玉を集めまくる「ゼニ集めプロジェクト」をスタートさせていました。実はこれ、東京以外に、宮城、大阪、名古屋、広島、北海道など今日までに全国各地でコツコツと5円玉を集めてきたんだそうです。そして、初日舞台挨拶のこの場で、ゼニ集めプロジェクトの結果が発表されました!

「目標は3万円だった」と言う阿部は台に乗って運ばれてきた想像以上に多くの5円玉を見て「これ、上げ底?」と疑うと、会場は爆笑。MCが「そんなことないですよ」と、すかさず突っ込んでいました。

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さて、いくら集まったのでしょうか!?なんと、集まったお金は目標をはるかに超える総額11万7835円(2万3567枚の5円玉)!!すごくたくさん集まりましたね。

このお金は古文書「国恩記」の保存にあてるために使われるとのことで、ここで吉岡宿にあたる現在の宮城県黒川郡大和町の浅野元町長が登壇。重量にして88キロもあるということで、阿部から目録が手渡されました。

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浅野町長は
「(国恩記は)慎みの掟、あるいは人前で話してはいけないといった言い伝えがありました。保管するにあたり、私たちは小さい頃おじいさんから『女子どもは見るもんじゃない、見ると目が潰れるぞ』と言われていました。素晴らしい映画にしていただきましたし、これからはみなさんにこの意義を知らせていきたいです。国恩記も大事に保管していきたいと思います。今日はありがとうございました」とコメントすると、筆者はまるで歴史的瞬間を見ているかのような熱い気持ちを覚えました。

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庶民とお上が銭バトルを繰り広げる『殿、利息でござる!』はエンターテイメントでありつつも、誇ることをせず、何の栄誉も受け取らず、子孫には先祖が偉いことをしたと言わないという“無私の想い”が描かれた作品です。涙なしには語れない真実の物語をぜひ劇場で観ていただきたいと思います!



公式サイト:http://tono-gozaru.jp/

(C) 2016「殿、利息でござる!」製作委員会

(取材・文:アスカ

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