映画コラム

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2016年10月06日

ダーシー役サム・ライリーに全女性観客が落ちた!「高慢と偏見とゾンビ」は全女性必見!

ダーシー役サム・ライリーに全女性観客が落ちた!「高慢と偏見とゾンビ」は全女性必見!

高慢と偏見とゾンビ


(C)2016 PPZ Holdings, LLC


あの不朽の名作「風と共に去りぬ」に匹敵する、イギリスの名作古典文学「高慢と偏見」の世界に、なんとゾンビを登場させて話題となった小説「高慢と偏見とゾンビ」。現在日本でも公開中の本作は、その待望の映画化だ。

本作の元となった小説「高慢と偏見」は、イギリスの女性作家ジェーン・オースティンの2作目の長編小説であり、時代を超えてなお多くの女性の共感を呼ぶ、人気古典文学として名高い小説。そのため過去に何度も映画化されており、今回のような二次創作やパロディ作品も数多く存在するなど、未だに根強い人気を誇っている。

例えば、女性に大人気の映画「ブリジットジョーンズの日記」。実はこれの原作小説も「高慢と偏見」を元に書かれているくらいだ。(映画に登場した、コリン・ファレルの役名もダーシー。ちなみに彼は1995年イギリスBBC製作のテレビドラマ版「高慢と偏見」でも、ダーシーを演じている)

映画製作中からオリジナル小説のファンはもちろん、ホラー映画ファンの間でも話題となっており、「ゾンビ」というタイトルにも関わらず、劇場では女性同士のグループや男女カップルでの鑑賞が目立った本作。全国で45館という小規模での公開ながら、自分が鑑賞した公開3日目の午後の回はチケット完売の人気!さあ、果たして、その出来はどうだったのか?

ストーリー


謎のゾンビウィルスが蔓延する19世紀のイギリス。片田舎で暮らすベネット家の5人姉妹は、裕福な男性との結婚を夢に見ながら、淑女のたしなみとして身につけた得意の「武術」で、襲い来るゾンビから身を守る日々を送っていた。
ある日、ベネット家の屋敷の隣に資産家のビングリーが引っ越して来る。ビングリーの友人で大富豪、そして凄腕のゾンビハンターであるダーシーも出入りするようになる中で、ベネット家の長女ジェインとビングリーは互いに恋に落ちることに。一方、次女リズはダーシーの「高慢さ」に反感を抱くのだが、ダーシーの方はゾンビを見事に倒すリズの姿に、知らないうちに惹かれつつあった。だが、運命は彼らをイギリス帝国を裏から壊滅させようとする、恐ろしい計画に巻き込もうとしていた。。今、イギリスの存亡を賭けた、ゾンビVS人類の最終決戦の幕が切って落とされる!

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実は、ほぼ原作小説に忠実な本作、ゾンビ要素が作品に与えた新たな魅力とは?


「タイトルに「ゾンビ」って、コワい映画なんじゃ?」 はい、実は、そんな貴女にこそ強くオススメしたいのが本作!

自分も鑑賞前は、てっきり「ヴァン・ヘルシング」や、「リーグ・オブ・レジェンド」の様な、CG全開の騒がしい映画だと思い込んでいたのだが、その予想は見事に裏切られた。実は原典である「高慢と偏見」の世界に、驚くほど忠実に描かれた本作の世界観は、ゾンビという全く異質の要素が入っても全く壊れることがなかったからだ。いや、実はこの「ゾンビ要素」によって、古典小説の世界をさらに深く掘り下げ、現代に通じる物へと見事にアレンジすることに成功していると言っていい。

実は、「高慢と偏見」が書かれた当時のイギリスでは、女性にとって結婚は今よりも遥かに重要で、金持ちで家柄の良い相手を見つける事は一生の問題とされていた。なぜなら、父親の遺産を女性が相続することが出来なかったからだ。

こうした当時のイギリスの結婚事情を理解して観ると、男性からのプロポーズを2回も断る主人公リズが、どんなに勇気のある女性かが判ると思う。

本作では、結婚相手を見つけるための花嫁修業の代わりとして、ゾンビと闘うための「戦闘技術」が女性のたしなみとして描かれているのだが、これが実に面白い!しかもその修行先にもランクがあって、何故か日本で武術修行をした方が、中国で拳法を学ぶよりもランクが上とされており、映画の中でも漢字で書かれた武術の本が家に置いてあったり、女性の登場人物が日本語!や中国語で喋ったりするシーンがあるほどだ。

このように、社会的に弱い存在であった当時の女性に、「自分の身は自分で守る」アクティブな設定を加え、自立した女性として描こうとした点。実はこれこそが、本作成功の重要な要素だと言える。

恋愛には消極的で、文字通り「恋する乙女」でありながら、いざゾンビが襲ってきたら対等に闘って見せる彼女達!このギャップも全女性にこの作品をオススメしたい理由の一つだ。

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「アウトランダー」や、「ダウントン・アビー」など。最近増殖中の海外ドラマファンにもオススメ!


海外の人気ドラマがDVDレンタルだけでなく、動画配信サイトの出現により気軽に鑑賞出来るようになった現在、若い女性層を中心に急速に広まっているのが、「海外ドラマ」を観て楽しむというライフスタイル。

中でも、第二次大戦中の看護婦が1700年代にタイムスリップする「アウトランダー」や、第一次大戦頃のイギリス貴族を描いた「ダウントン・アビー」などは、若い女性層にも人気を誇っている。後述するように、本作の主要キャストはこれらの歴史物テレビシリーズへの出演経験者が多く起用されており、映画の世界観にピッタリ合っていて全く違和感が無い。更に、主要キャスト陣に有名なスターが起用されていないのも、今回は逆に先入観や既存のイメージに惑わされず、観客が安心して作品世界に没入できるので、正に大正解だったと言えるだろう。

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実力重視の魅力的なキャスト!まずは闘う女優陣に注目!


一般的な知名度は低いキャスト陣だが、ご心配なく!今回全ての登場人物のキャラが立っているため、映画鑑賞中に確実に彼らに魅了されてしまうのも、本作の特徴だと言えるからだ。まずは女優陣だが、同じく歴史物のテレビドラマ「ダウントン・アビー」や、「ゲーム・オブ・スローンズ」の主要キャストを起用するなど、知名度よりは時代物のイメージに合う実力重視で選んだキャスト陣が揃っている。

主役である次女のリズには、映画「シンデレラ」の主役で知られるリリー・ジェームズ。姉である長女ジェインを、ティムバートン監督「ダーク・シャドウズ」の主演であるベラ・ヒースコートが演じている。その他にも、イギリス最強の女性ゾンビハンターであるレディ・キャサリンを、テレビドラマ「ターミネーター・サラ・コナーズ・クロニクル」のサラ・コナー役や、リメイク版「ジャッジ・ドレッド」の冷酷な女ボス役で、強烈な印象を残したレナ・ヘディが演じるなど、アクション映画ファンにも見逃せない顔合わせとなっているので、要注意だ!

19世紀のドレスに身を包んだ美しい彼女達が、次々繰り出す見事なカンフーの技!そして剣によるアクションの数々!その雄姿を見逃すな!

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魅力的な男優陣!ダーシー役のサム・ライリーに、今若い女性の人気が集中!


過去の映像化作品でも、名優ローレンス・オリヴィエやコリン・ファレルなどの人気俳優が演じた登場人物「ダーシー」を今回演じているのが、本作で本格的なブレイクを果たした、サム・ライリーという俳優だ。元々「10,000 Things」というバンドのボーカルだったが、その後俳優に転身。まだ出演作品数は少ないが、映画「マレフィセント」で手下のカラスであるディアヴァルを演じていた俳優と言えば、「あぁ」と思い出す方もおられるのでは?

その他にも、イギリスの人気SFドラマ「ドクター・フー」で、11代目ドクター・フーを史上最年少で演じ、次のベネディクト・カンバーバッチとも噂されているマット・スミス、先頃全米公開されたリメイク版「ベンハー」で主役を演じたジャック・ヒューストン、ウォシャウスキー兄弟の「ジュピター」に出演したダグラス・ブースなど、イギリスが誇る次世代のイケメン俳優が大集結!タイトルに「ゾンビ」と入っていながら女性観客が多いという現象も、こうした豪華男優陣を鑑賞出来る「眼福」の時間が過ごせるとなれば、納得がいくというものだ。

ちなみに今回の主役ダーシーを演じたサム・ライリーの過去作品で、今年の1月に日本でも公開された映画「フランス組曲」が6月にDVD化されてますので、本作を観て彼の眼差しに射抜かれた貴女!是非こちらもオススメです。

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最後に


上映終了後、観客の様子をそっと見ていたのだが、女性観客の表情が正に「ウットリ」としか言いようの無い、幸せと満足感の入り混じったものだったのが印象的だった。女性グループで鑑賞していた方も多かったが、おそらく原作、或いはテレビドラマのファンなのだろうか?終わってもすぐに席を立つことなく、皆で感想を言い合っている様子。

ロビーの売店でパンフを購入した際も、見本のパンフを熱心に読んでいる男性を発見!しばらく観察していたが、続々と鑑賞後にパンフを買う人が売店に列を作る状態。なるほど、確かに今は公開規模は小さいが、この反応なら口コミやリピーターにより、今後熱心なファンを生み出すのは間違いないし、本作をきっかけにしてまた多くの新たな人気スターが誕生するに違いないと確信した。

特に主演の二人は、偶然にも「マレフィセント」、「シンデレラ」という、ディズニー実写映画への出演経験があるため、本作は「ゾンビ要素」に加えて「ディズニー要素」も加わった、正にデートからホラー映画ファンまで、全天候型のオススメ映画と言えるだろう。ただ、売店には映画関連のグッズが一切無く、劇場パンフのみの販売だったことだけが、非常に残念だったと言っておく。

なお、2005年には原典である「高慢と偏見」を映画化した、キーラ・ナイトレイ主演による映画「プライドと偏見」も製作されているので、より深く世界観を楽しみたい方は、是非この機会に見比べてみては?

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(文:滝口アキラ)

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