映画コラム

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2017年04月19日

「こんがらがって生きるのがつらい」大人になりきれない大人へ。映画『永い言い訳』西川美和監督がエール

「こんがらがって生きるのがつらい」大人になりきれない大人へ。映画『永い言い訳』西川美和監督がエール


監督に応える、本木雅弘の覚悟とは


── 幸夫は劇中でたびたびダメ男っぷりを発揮します。かと思えば子供にひたむきに向き合うかわいらしい一面を見せたりして、見ているこちら側もまさに愛憎入り乱れます。そのバランスは意識されましたか?

それは本木さんがすごく気にされていたところです。“僕が幸夫を演じることで、観客から映画が見放されるかもしれない”と心配されていました。私もそれはよくわかるんです。

でも初めから“許せる範囲の嫌な奴”だと、物語の先が見えてしまうし、面白くない。俳優さんでも、守りに入る人はたくさんいるんですよ。嫌な奴を演じてほしいのに、無意識に自分を救うようなお芝居になっちゃうような。

永い言い訳 サブ3


(C)2016「永い言い訳」製作委員会


その点、本木さんは自虐的なまでに嫌な奴を演じきってみせるという覚悟がありました。そのさじ加減を客観的に調整するために、監督が存在しているわけですし。

100%の悪人はいないし、嫌な奴でも愛すべきところはある。その両面をきちんと描くためにも、本木さんとタッグを組んでやりたいと思いました。

── “人生は他者である”という結論に、幸夫は物語の最後にたどり着きますが、監督がその考えに至ったのはいつごろでしょう?

この作品を書きながらです。私も幸夫と一緒にそのことに気付いた節があります。私ひとりではこの作品は書き得なかったし、常に誰かの影響を受けて、自分の出会った誰かを糧にしながら物語を紡いでいったわけですから。

他者といることは、いいこともあるし、悪いこともあります。でも、それが人生ですからね。

── 幸夫のような“大人になりきれない大人”はこの世に多く存在してると思います。彼らに向けて、メッセージをお願いします。

元気を出しましょう! ただ、それだけ(笑)。“自分が役に立ってない”とか“無力感”って、誰しもが抱えている問題かもしれない。でも、誰でもみんな、意外と生きてていいんですよ。

ーーーーー

にこやかに、そして凛としたたたずまいで、真摯に制作秘話を語ってくれた西川監督。おしゃれな猫柄のカーディガンも相まって、偉大な存在ながらも、とっても笑顔がチャーミングでした!

映画『永い言い訳』のBlu-ray&DVDは、2017年4月21日(金)発売。インタビューにも出てきた『ちゃぷちゃぷローリー』完尺版(一部アフレコ用線画シーンを含む)や、あーちゃんが大泣きするメイキングも収録された特典DVDは、Blu-ray版の限定です。『ちゃぷちゃぷローリー』ファンや、あーちゃんファンも見逃せません!
西川美和(にしかわ・みわ)
1974年、広島県出身。早稲田大学第一文学部卒。在学中に是枝裕和監督作『ワンダフルライフ』(99年)にスタッフとして参加。フリーランスの助監督として活動後、平凡な一家の転覆劇を描いた『蛇イチゴ』(02年)でデビュー。以降、一貫してオリジナル脚本での作品作りを続け、小説・エッセーの執筆でも活躍中。そのほかの作品に、『ゆれる』(06年)、『ディア・ドクター』(09年)、『夢売るふたり』(12年)などがある。





映画『永い言い訳』
価格:Blu-ray 5200円、DVD 3800円
発売日:2017年4月21日(金)
出演:本木雅弘/竹原ピストル 藤田健心 白鳥玉季 堀内敬子/池松壮亮 黒木華 山田真歩/深津絵里
原作・脚本・監督: 西川美和
挿入歌:手嶌葵 『オンブラ・マイ・フ』

製作:『永い言い訳』製作委員会(バンダイビジュアル株式会社、株式会社AOI Pro.、株式会社テレビ東京、アスミック・エース株式会社、株式会社文藝春秋、テレビ大阪株式会社)
原作:「永い言い訳」(文春文庫刊) 挿入歌:手嶌葵「オンブラ・マイ・フ」
制作プロダクション:株式会社AOI Pro. 配給:アスミック・エース 
(C) 2016 「永い言い訳」製作委員会


(取材・文:NI+KITA)

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