映画コラム

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2019年06月28日

『ハッピー・デス・デイ』は殺される誕生日をループしまくる快作ホラー!爆笑と感動の理由とは?

『ハッピー・デス・デイ』は殺される誕生日をループしまくる快作ホラー!爆笑と感動の理由とは?



(C)Universal Pictures


本日2019年6月28日より、映画『ハッピー・デス・デイ』が公開されます。結論から申し上げれば、「ホラーなのにゲラゲラ笑えるコメディだった!」「ホラーなのにまさかの感動のドラマもあった!」そして「“ループもの”の面白さも全開!」などを期待すれば最高に楽しめる、万人に文句なしにオススメできる快作に仕上がっていました!その魅力をネタバレのない範囲で以下に紹介します!

1:ホラーでありながら“ループもの”!
圧倒的なエンタメ性に満ち満ちている理由はこれだ!


本作は同じ時間を繰り返してしまう“(タイム)ループもの”です。ループものの映画は『恋はデジャ・ブ』や『ミッション:8ミニッツ』といった名作の他、ライトノベルおよびアニメでも『涼宮ハルヒ』シリーズの短編“エンドレスエイト”や『Re:ゼロから始める異世界生活』などがあり、その設定の時点で一定以上の面白さがある、若者からの人気も高いジャンルの1つと言っていいでしょう。

この『ハッピー・デス・デイ』がユニークなのは、そのループものの魅力をマスクを被った殺人犯に狙われまくるというホラー映画に落とし込んでいるということ。主人公の女子大生は殺されるたびに誕生日を繰り返してしまうのですが、その時の記憶が残っているため「犯人の正体はどこのどいつだ!」「次は殺されずに生き残ってやる!」という向上心たっぷりに奮闘または逆襲するという流れになるのです。

当たり前のことですが、ホラー映画で殺人鬼に殺されてしまうと、その被害者は二度と生き返りません。そのため次からの殺人犯への対処方法はどうしても別の人間からの視点になってしまう、もしくは知らぬ存ぜぬの状況になってしまうのですが、『ハッピー・デス・デイ』では何度殺されようが本人だけ記憶を保ったまま時間が戻るので、主人公は身をもって殺人犯への対処法を“学習”していくことができるのです。ある意味では「死んで覚える」というテレビゲーム的な面白さに満ちていると言ってもいいでしょう。

そして、殺人鬼に殺されるということ以外にも、繰り返す同じ1日には様々な“イベント”が用意されています。そのイベントを繰り返すことで「あの時のアレがこうなるのか!」「これはこういうことだったのか!」などと新たな事実や真相が明らかになっていくという、ミステリー的な面白さも備わっているのです。「誰がマスクを被った殺人鬼なのか?」と推理しながら観てみるのも良いでしょう。

『ハッピー・デス・デイ』の魅力は、「同じ時間を繰り返すことで学びや気づきを得ていく(そしてループから脱出する)」というループもののツボが押さえられいることはもちろん、ひと時たりとも退屈をさせない工夫が随所に込められており、とにかく圧倒的なまでに“面白い”ということ、エンターテインメント性に満ち満ちているということを、まずは強く訴えておきたいのです。

ちなみに、本作はホラーでありながら残酷描写がほぼほぼなくG(全年齢)指定となっています。「グロいのは苦手だなあ」という方も大丈夫、ホラーでありながら基本的にはカラッと明るい雰囲気もあるので「精神的にキツイのは嫌だなあ」と思っている方にも問題なくオススメできます。少しだけ性的な話題はありますが、それもどぎついものではないので抵抗なく観られるでしょう。


(C)Universal Pictures



2:時を駆けるビッチが大奮闘!
主人公の性格が悪いのに応援したくなる理由とは?


“ホラー映画”דループもの”という時点でアイデアの勝利なのですが、さらに“主人公の性格が悪い”という要素までもが、この『ハッピー・デス・デイ』では重要になっていました。女子大生の彼女は「世界は自分中心に回っている」とマジで思ってそうな自己チューで、パーティで騒ぎまくって見知らぬ男子生徒の部屋のベッドで目を覚ますのは序の口、不機嫌な態度のまま飛び出し、ルームメイトが誕生日祝いに作ってくれたカップケーキもゴミ箱にポイ、果ては教授とも不倫をしていて、後に次々と迷惑行為を白状すると「私だって完璧じゃないわよ!」と正当化したりもするという、とんでもない“ビッチ”だったのです。

ともすれば「こんな主人公を応援できるかよ!」になりそうなところなのですが、いつの間にか誰もが彼女を「頑張れ!」と応援できるようになるということが素敵です。なぜかと言えば、彼女は自己チューで自分の幸せを最優先にしているからこその唯我独尊的なパワーがあり、殺人鬼に殺されまくる悲惨な状況にもたくましく立ち向かっていくのですから。そして、ビッチだったはずの彼女がいつしか自分の行いを反省し、人生を正しく生きるという意味でも学びを得ていく過程、そして彼女を取り巻く人々のドラマには、確かな感動もあるのです。

この「(ちょっと)浅はかな考えをしている女性がタイムループを繰り返して学びを得ていく」というのは、アニメ映画版『時をかける少女』にも似ています。そのためか「時を駆けるビッチに明日は来るのぉぉぉ?」という大胆かつ思い切りの良い(褒めています)キャッチコピーもつけられていたりしますが、実際に本編を観てみるとそれはとっても納得できる触れ込みでもありました。

ちなみに、主演を務めたジェシカ・ローズは『ラ・ラ・ランド』でエマ・ストーンの友人役として出演していた実力派女優です。監督のクリストファー・ランドンによると彼女を選ぶことには全く悩みがなかったそうで、それは“どこからどう見てもイヤな女”である一方で、“自分の人生に思い悩む少女”の要素もあり、さらには“正体不明の殺人鬼に追われる恐怖が表現できる”ことはもちろん、“反撃に打って出るパワーも持ち合わせていなければならない”という振り幅のある条件を全て兼ね備えていたからなのだとか。「ビッチのはずなのに応援したくなる主人公」として、これ以上の人選は考えられないでしょう。他キャストも(特に日本では)ほぼ無名でありながら、それぞれの持ち味を生かした愛すべきキャラクターを生き生きと演じていますよ。



(C)Universal Pictures



3:ホラーなのに笑えて泣ける!
ネタバレ厳禁の展開を衝撃の見逃すな!


本作は殺人鬼に狙われまくるホラー映画……なのですが、初めに掲げた通り“ゲラゲラと笑えるコメディ要素”も強い内容になっています。具体的な爆笑ポイントはネタバレになるので秘密にしておきますが、その笑いがループものの面白さとも不可分になっているということはお伝えしておきましょう。

主人公は何度も何度も殺されて同じ誕生日を繰り返してまた繰り返して……という想像するだにキッツイ状況であるがゆえに、それこそが「もうええわ!」なギャグにつながっているのです。これはいわゆる“天丼”、ループをするごとに笑いが倍増していき、時には突発的に悪意たっぷりなギャグもぶっこまれるため、もう楽しくって仕方がないのです。

ノリの良いポップミュージックに乗せて、ダイジェストのように“ひどい1日”を次々に見せていくなど演出および編集にも手込んでおり、そのスピード感溢れる描写もまた笑いにつながっていました。前述したように主人公の性格が悪いことは「バリエーション豊かな殺され方をしても同情せず笑って観られる」「そのビッチであるがゆえの打たれ強さにも笑ってしまう」という点でも重要だったと言えますね(笑顔)。

そして、そんな風にゲラゲラと笑っていると、これまた思いもよらぬ感動のドラマまでもが展開していきます。それは前述したビッチな主人公の成長物語と密接に絡んでいることであるのですが……やはり具体的にはネタバレになるので書けません!この観客の予想を裏切ってくる“意外性”も『ハッピー・デス・デイ』の大きな魅力ですよ。



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おまけその1(超重要):続編はまさかの感動大作!
連続公開される『ハッピー・デス・デイ 2U』も絶対にセットで観て!


ここで、とても重要なことをお伝えします。この『ハッピー・デス・デイ』が公開されてからたったの2週間後、2019年7月12日より続編である『ハッピー・デス・デイ 2U』が連続で公開されるということです!


(C)Universal Pictures


実は、『ハッピー・デス・デイ』は2017年の公開作で、週末興行収入でNo.1に躍り出た上に、意外な(と言っては失礼な)高評価で迎えられていました。そうにも関わらず2年も日本での公開が遅くなったことにホラー映画ファンからは不満の声もあがっていたのですが……結果としては上映が遅れて良かった、『ハッピー・デス・デイ 2U』と合わせて連続公開されることはまさに僥倖、「配給会社さんと宣伝会社さんありがとう!」と心から感謝を告げたくなったのです。

なぜかと言うと、『ハッピー・デス・デイ 2U』は物語、設定、キャラに至るまで“完全に続編”と呼べる内容であり、前作『ハッピー・デス・デイ』を観ていることはほぼ絶対条件、その記憶が鮮明なまま観たほうが楽しめる作品であったから!続編まで2年の隔たりがあった本国よりも、すぐにこの続編が観られる日本のほうが恵まれていると言っても過言ではなかったのです!

そして、『ハッピー・デス・デイ 2U』の内容を具体的にここで書くのはやめておきます。なぜなら、この続編は初っ端からネタバレ厳禁の「え〜っ!?」と驚く展開の連続だから! しかも、前作で“回収されなかった伏線”や”明かされなかった謎”も今回で明らかになるという、“前作を補完する”タイプの続編でもあったのです。例えば、前作では「なぜそもそもタイムループをするのか」という疑問は解決されなかったのですが、今回はそこにもアンサーを投げていたのですから。前作の二番煎じにはしない、新鮮な展開を届けるという点でも、意義のある続編だったと言えるでしょう。

さらには、この『ハッピー・デス・デイ 2U』は前作をはるかに超える感動のドラマも用意されているのです。もう筆者はまさかまさかの意外な展開に涙腺決壊してしまったんですよ!さらにさらに前作以上に悪意のあるギャグも絶好調で、もう泣きながらゲラゲラ笑うという最高の映画体験になりました!多数の要素が詰め込まれているおかげもあり、「ホラー要素どこ行った?」「その行動はさすがにちょっと」なツッコミどころもなくはないですが、そんなのは些細OF些細なことですよ!

断言します。『ハッピー・デス・デイ』と『ハッピー・デス・デイ 2U』はセットで観てこそ真の快作、いや傑作になると!キャッチコピーにある「こんな続編観たことない!まさかの泣けるホラー降臨!」は伊達ではありません。二度とはないであろう、「連続で観ることで得られる最高の映画体験」をぜひ劇場で味わってください!

おまけその2:映画の始まりと終わりも観のがさないで!


そんな最高の映画体験を与えてくれる『ハッピー・デス・デイ』および『ハッピー・デス・デイ 2U』ですが、「遅れずに席に座っておくこと」「エンドロールが始まってすぐに席を立たないこと」も重要であるとお伝えします。

これまたネタバレになるので具体的には書けないのですが、それぞれ映画の初めと終わりに“おまけ”というかなんというか……とにかく、観逃し厳禁の何かがあるということだけお伝えしておきます!(注:これは劇場公開時の情報です。『ハッピー・デス・デイ』のエンドロール後には『ハッピー・デス・デイ 2U』の予告というおまけがあったのですが、配信ではないようです。なお『ハッピー・デス・デイ 2U』には配信でも、とあるおまけ映像がありますよ)



(C)Universal Pictures



おまけその3:同監督の『ゾンビーワールドへようこそ』も要チェック!


『ハッピー・デス・デイ』のクリストファー・ランドン監督が手がけた『ゾンビーワールドへようこそ』も観てみたのですが、これがやはり「ホラーなのに笑える」要素がたっぷりの快作!“B級”ではあるのですが、極上のB級ゾンビ映画でしたよ!





ゾンビから逃げ惑うシチュエーションには様々なアイデアが込められており、悪意たっぷりの上にしょうもない(褒め言葉)ギャグも楽しく、終盤のカッコいい“キメ”シーンにも感動できます。主人公はもう子供じゃないのにスカウトを続けている、自分たちのイケてなさを卑下しているオタク少年なのですが、ゾンビに立ち向かっていくことを通じて彼らのチームの友情を描いていく過程にも泣かされました。

『ハッピー・デス・デイ』と『ゾンビーワールドへようこそ』は、とにかく「観客を飽きさせてたまるか!」というエンタメ性に満ちていること、ホラーだけでなく青春物語や友情や恋心など多数の要素が上手くまとめあげられていることなどが共通していますね。こちらにはゾンビ映画ならではの残酷描写もありますが、やはり基本的にカラッと明るい雰囲気なのでそれほどトラウマになったりはしないはず。超オススメですよ!

おまけその4:オススメのループものの映画厳選5作品を紹介!


先にも少しタイトルを挙げましたが、最後にオススメのループものの映画を5本紹介しておきましょう!

1.『恋はデジャ・ブ』





自尊心ばかりが強く意地の悪い天気予報官が、同じ日を何度も何度も繰り返してしまう様が描かれています。その姿ははじめは滑稽に思えるのですが……やがてとても切なく、苦しく、恐ろしく、そして泣けるという、人生すべてを包括しているテーマ性があることに気づくでしょう。安っぽい邦題で敬遠するのはもったいない、隠れた名作と呼ぶにふさわしい感動作です。

2.『ミッション:8ミニッツ』





目を覚ますとそこは見知らぬ通勤列車、周りの光景も話しかけてくる人にも全く見覚えがなく戸惑っていると、8分後に列車が大爆発を起こして乗客が全員死亡してしまう……ということが始まるSF作品です。意外性のある展開で次々に魅せていくサスペンスもさることながら、終盤に告げられたメッセージにも落涙できる、完成度の高いエンタメ作品に仕上がっていました。

3.『トライアングル』





ヨットセーリング中に嵐に襲われた男女が、目の前に現れた大型客船に命からがら乗り込む……ということから始まるシチュエーションスリラーです。これはそれ以上の予備知識なく観たほうがいいでしょう。それでこそ「何が起こってるんだ?」「どういうことなんだ?」と“翻弄される”面白さがあるのですから。PG12指定がされており残酷な描写もあるのでご注意を。

4.『アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜』





ループものでは“強制的に時間を繰り返してしまう”こともままありますが、こちらはアニメ映画版『時をかける少女』と同様に、主人公は“自分の意思”で“やり直し”ができる力を持っています。タイムループによりとにかくハッピーになることを目指すラブストーリーでもあるので、暗い話が苦手という方にも受け入れられやすいでしょう。現実ではあり得ないタイムループを描いていながらも、逆説的に「二度とは戻ってこない時間を大切にしよう」と思えるメッセージも素敵です。

5.『オール・ユー・ニード・イズ・キル』





舞台は近未来の地球、初年兵として戦場に送られた男が殺されるたびに同じ1日を繰り返すという、日本のライトノベルを原作とした作品です。「死んで生き返って学習して強くなる」というテレビゲーム的な面白さがあるほか、ほぼほぼブラックコメディな悪意たっぷりのギャグも込められているなど、『ハッピー・デス・デイ』との共通点も多い作品でした。主演のトム・クルーズの魅力も全開、「やっぱりループものは面白い!」と思える痛快作なので大プッシュでオススメします。

(文:ヒナタカ)

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