【完全版】アカデミー賞で起きたこと、徹底分析!
今年の2大トピック。
それ以上に問題になったのが女性クリエイター、女性スタッフへの敷居の高さです。
“MeToo運動”の文脈とも絡めても語られるこの問題は方が大きく取り上げられました。こちらのテーマの方が大きく取り上げられたために、相対的に人種・民族への言及が減ったとも言えるかもしれません。
例えば作品賞にノミネートされた『ストーリー・オブ・マイライフわたしの若草物語』のグレタ・ガーウィグが監督賞から漏れたり、前評判の高かったジェニファー・ロペス主演の『ハスラーズ』やゴールデングローブ賞でアジア系としては初めて主演女優賞を受賞した『フェアウル』などの女性監督・女性主役の映画がことごとくノミネートから漏れたことで、この問題が表面化しました。
グレタ・ガーウィングは『レディ・バード』で監督賞ノミネート経験もあるので、今回のノミネートから漏れるというは驚いた人もいたことでしょう。
そもそも92回を数えるアカデミー賞で女性監督が監督賞を受賞したのは10年前の『ハート・ロッカー』のキャサリン・ビグロー監督だけで、実は白人以外の人種の受賞よりさらに高い壁(アメリカ風に言うとガラスの天井)があること浮き彫りになっています。
一昨年『スリー・ビルボード』で主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマントがスピーチの中で授賞式に参加した全ての女性に起立を促し(真っ先にメリル・ストリープに声をかけたあたりが面白いのですが)、ハリウッドにはこれだけ有能な女性がいると語ったのですが、その言葉がまだまだ深い部分にまで届ききっていないのだなと感じ、残念な思いを抱いてしまいます。
もう一つ、これは昨年も大きな論争を呼んだ動画配信サービスの作品の取り扱いについて。はっきり言ってしまえばNetflix作品の取り扱いについてということになります。
昨年、アルフォンソ・キュアロン監督がアカデミー賞監督賞を受賞した『ゼロ・グラビティ』の次回作としてNetflixから資金提供を受けた『ROMA/ローマ』を製作、結果アカデミー賞の主要部門に10部門にノミネートされました。
業界的な認識の一つを言えばいずれは動画配信サービスにも文芸的(=賞レース向け)な作品が登場することになるだろうとは皆思っていたはずです。
ところが、それがこんなに早く来るとは思っておらず、結果、動画配信サービスの作品は映画か否かで大論争を巻き起こしてしまいます。
『ROMA/ローマ』の無名キャストでモノクロ・スペイン語映画という企画を見たときに、いくらアカデミー賞監督の受賞直後の新作とは言えビジネス的に不安要素を感じた既存のハリウッドの映画会社がお金を出さない中で、Netflixがポンっと資金を出して『ROMA/ローマ』は完成しました。
この流れだけ見れば作品の出自をハリウッドメジャー側の人間が色々言い出すのは後出しジャンケンのような気もしますね。
今回のアカデミー賞ではさらにNetflixが勢力を拡大『アイリッシュマン』『マリッジ・ストーリー』を筆頭になんと合計8作品で24ノミネートを記録しました(昨年は4作品15ノミネート)。配給会社別に見たときこの数字はディズニーの23ノミネート、ソニー・ピクチャーズの20ノミネートを抑えて堂々の一位です。
ここまで来ると個々の意見(スピルバーグ監督などは否定派です)とは別の次元でNetflix作品は映画として定着しつつあるように見えます。
昨年のアルフォンソ・キュアロンにも驚きましたが、『アイリッシュマン』の監督はあのマーティン・スコセッシですから、巨匠と呼ばれる人も選択肢の中にNetflixを入れていることが分かります。
世界的にはいまだに論争が続いていて例えば『ROMA/ローマ』に金獅子賞を贈ったヴェネチア国際映画祭などはNetflixウエルカムですが、カンヌ国際映画祭は完全にNGでコンペティション部門のエントリーすら許していません。
少し視点がずれるかもしれませんがスコセッシなどのベテラン監督がマーベル作品を映画ではないと批判したことが話題になりましたが、そのスコセッシも本流でないという意見があるNetflixとはすぐに協力体制を築いたのを見ると、まぁ状況によって風向きは変わるのかなとも思いますね。
実際『パラサイト半地下の家族』のポン・ジュノ監督は『オクジャ』というNetflix作品を手掛けていますし、もしかしたら数年後にはスピルバーグもNetflixで作品を発表するかもしれませんね。
もしかすると文芸作品は配信系、スクリーン映えする作品はハリウッドメジャーというふうに棲み分けされていくのではという話もあります。
実際に『1917』や『フォードVSフェラーリ』などはスクリーンが大きければ大きいほど映える映画です。
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