2021年02月22日

『ベイビーティース』レビュー:難病少女と不良少年と少女の両親が織り成す愛の刺激的葛藤

『ベイビーティース』レビュー:難病少女と不良少年と少女の両親が織り成す愛の刺激的葛藤



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT


難病を抱える16歳の少女ミラ(エリザ・スカントン)と、孤独な不良少年モーゼス(トビー・ウォレス)の恋。

そしてふたりの交際に気が気ではないミラの母(エシー・デイヴィス)と父(ベン・メンデルソーン)。

こうした4人の葛藤と愛憎を前衛的な映像感覚でポップに綴っていく、シャノン・マーフィ監督の長編デビュー作。



ミラにとってこの恋は、おそらく最初で最後になるであろうという予感を終始孕ませつつ、映画はその部分を深刻に捉えるのではなく、むしろ限りある中での生の喜びとそれゆえの勢いとして、瑞々しくも刺激的に描いていきます。

それゆえに従来の難病ものや、親の理解に子どもたちが反発するパターンの作品群とは一線を画したモーメント・ラブ・ストーリーとして大いに屹立。

『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』で三女を演じたエリザ・スカントンの好演もさながら、本作でヴェネツィア国際映画祭最優秀新人賞を受賞したトビー・ウォレスの危険かつ繊細な個性が圧倒的に本作の世界観を象徴しています。



また個人的に彼女らの親の世代たるこちらとしては、モーゼスを生理的に嫌いつつも愛娘のために何とか理解しようと努めていく両親の複雑な心情も大いに理解できるところ。
いわゆる不良性感度の高い青春ラブ・ストーリーといった域を優に超えて、老若男女それぞれの想いを見事に体現し得た人間ドラマの秀作です。

クライマックスからラストにかけての展開は、もはや言葉では表現しつくせないほどのエモーショナルな想いを、見る側の心にもたらしてくれることでしょう。

(文:増當竜也)

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