映画コラム

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2021年04月04日

昭和を壮麗に彩った名女優たちと富司純子、そして令和の新作『椿の庭』

昭和を壮麗に彩った名女優たちと富司純子、そして令和の新作『椿の庭』


『椿の庭』に見られる
三世代の女優への讃歌


©2020 "A Garden of Camellias" Film Partners

そんな富司純子が久々に主演した映画が『椿の庭』です。

 写真家として著名な上田義彦が監督・脚本・撮影を担当したこの作品、葉山の海を見下ろす坂の上の古民家を舞台に、夫を亡くした祖母・絹子(富司純子)、長女の娘・渚(シム・ウンギョン)、ふたりのことを何かと心配する次女・陶子(鈴木京香)といった3世代の女性の生きざまを、四季の移り変わりととも美しくもはかなく描いていきます。


©2020 "A Garden of Camellias" Film Partners

 特に主体となるのが絹子で、和服の着付けの美しさと品格から彼女自身の性格から人生観まで見事に描出されていますが、それもこれも若き日の東映時代に着物を着ながら凛とした役を演じ続けてきた彼女ならではの賜物ともいえるでしょう。

やがては家を手放すか否かの問題に直面していく彼女ですが、最後にとる決断はあたかも『緋牡丹博徒』シリーズのお竜さんも同じことをするであろうといった、穏やかで淡々とした佇まいながらも真摯で固い人生の決意に裏付けされた凛とした至高の美としても屹立しています。


©2020 "A Garden of Camellias" Film Partners

またこの作品、平成時代から台頭し続ける鈴木京香(彼女を“平成の原節子”と讃える向きもあります)、そして国際交流が必須となった令和の今を代表する韓国の女優シム・ウンギョンが共演していることでも、見事に昭和から平成、令和の女優の系譜を示唆した逸品となっています。

日本の伝統や、滅びゆくものへの哀悼、新しい世代への継承など様々な人生の機微が詰まった 『椿の庭』、女優たちの競演を見届けるだけでも必見の作品だといえるでしょう。

(文:増當竜也)

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