『クローブヒッチ・キラー』レビュー:まさか! 誰からも愛される父親は猟奇殺人鬼なのか?
『クローブヒッチ・キラー』レビュー:まさか! 誰からも愛される父親は猟奇殺人鬼なのか?
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
敬虔で静かな田舎町で10年前に起きた、クローブヒッチ(巻き結び)連続殺人事件。
それは全ての被害者が縛られた状態で惨殺され、凄惨な現場には巻き結びされたロープが残されているという、実におぞましき猟奇的事件でもありました。
そして16歳の主人公タイラー(チャーリー・プラマー)は、ふとしたことから犯人が自分の父親(ディラン・マクダーモット)ではないかと疑い始めるようになっていきます。
同時に、事件のことをずっと調べていたと思しき少女カッシ(マディセン・ベイティ)と知り合い、ともに事件の真相を追い求めていきます。
果たして真犯人は父親なのか?
をここに書くわけにはいきませんが、とにもかくにもこのお父さん、ボーイスカウトの団長を務めるなど町の人々の信頼も厚く、家庭内では率先して家事をする良き夫で、息子に対しても一言一言に慈愛の重みがある、実に頼もしき父親でもあるのです。
しかし、こんな理想的なパパを日頃好感度大のディラン・マクダーモットが演じることによって、逆に不思議なうさん臭さが醸し出されていくのが、この作品の妙味ともいえるでしょう。
そのうち私たち観客も、タイラー&カッシともども彼のうさん臭さに翻弄されながらクライマックスへ突入していくわけですが、そこに至る直前、本作はちょっとしたドラマ構成の冒険を試みています。
ここが上手くいっていると思えるか否かが、本作の評価の決定的な分かれ目になるような気もしてなりません。
私自身は正直「狙いすぎたな」という印象ではありましたが、新鋭ダンカン・スキルズ監督の「何かやってやろう!」とでもいった意気込みそのものは嫌ではありませんでした。
何よりもこの作品、チャーリー・プラマー主演のジュヴナイル・サスペンスとして大きく機能しており、マディセン・ベイティとの恋心があるや否やの微妙な交流も上手く描出されています。
露骨な残虐描写は少ない代わりに(ただし皆無ではありません)、精神的にじわじわと静かで気持ち悪い恐怖と不安の面持ちが増大していく仕掛けは、最終的に主人公をどのように成長させてくれるのか?
それも大きな見どころのひとつといえるでしょう。
(文:増當竜也)
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