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映画コラム

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2021年06月17日

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』レビュー|進化した面白さ、そして映画館で観るべき理由はこれだ!

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』レビュー|進化した面白さ、そして映画館で観るべき理由はこれだ!



映画『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が2021年6月18日より公開されます。

本作は、2018年に公開された『クワイエット・プレイス』の続編。全ての劇場の営業が再開できず、しかも座席制限のある中で、公開からわずか15日間で北米の興行収入は1億ドルに到達し、コロナ禍以降に公開された映画でNo.1のヒットを記録しました。評価もすこぶる高く、米映画批評サービスRotten Tomatoesでは91%の批評家支持率を記録しています。

結論から申し上げれば、本作は「(前作を観ていなくても)予備知識ゼロで観に行ってOK」「子どもから大人まで楽しめるサスペンスホラーとして一級品」「絶対に映画館で観るべき映画」だと断言できる、規格外の快作でした。ネタバレのない範囲で、簡潔に魅力を紹介しましょう。



『クワイエット・プレイス』の面白さと恐怖の根源にあるのは、「音を出したら襲われる“何か”」との攻防。ホラーサスペンスにおいて「静かにしろ!そうしないと殺されてしまうぞ!」という定番かつ最もハラハラドキドキする展開を、「音を出すか出さないか」に特化して打ち出しています。言い換えれば、この「“何か”が音に反応する」という「ルール」を守れば生き残れるという「ロジックのあるバトル」を大いに楽しめるのです。

ただ、この『クワイエット・プレイス』は「意外と続編を作るのは難しいのでは?」という懸念もありました。何しろ、前作は「“何か”の正体をなかなか見せない」ことも恐怖につながっていたのですが、その姿は前作の終盤から「見えた」上に、とある「弱点」も露呈してしまっています。このままでは、恐怖感も面白さも継続するのが難しい題材だったと言えるでしょう。



しかし、今回はロジックのあるバトルそのものがバリエーションに富んでおり、「その手があったか〜!」と種々のアイデアにも感心しまくれるという、順当な進化を遂げています。“何か”の弱点も作劇の足枷にならず、それを利用したあっと驚く展開につなげていました。なかなか姿を見せない“何か”との心理的なサスペンスから、攻防そのものがド派手な見せ場となったアクションへと、作風そのものがシフトチェンジしているような印象もあります。

そのド派手な見せ場の中でも、オープニングのシークエンスは白眉。ほぼ全ての人が「すげえ!面白え!」と目が釘付けになり大興奮できるでしょう。しかも、この瞬きをするのも勿体無いオープニングは、前作を観た人が「観たかった」「気になっていた」ことでもあります。前作を「補完」する続編としても、理想的と言えるでしょう。



何より、「誰が観ても面白い」と言えるほどの圧倒的なエンターテインメント性があり、残酷描写もほぼなく、主人公チームが家族であるため、ファミリー層にも存分におすすめできるホラーサスペンスというのは驚異的です(さすがに、あまり小さい子には怖すぎると思うのでおすすめしませんが)。

なお、本作は「音を出したら襲われる“何か”と戦う家族のサバイバル」というシンプルな内容でもあるため、前作を観ていなくても、予備知識ゼロでも楽しめるのですが、“何か”が姿が見せていることや展開がそのものが、必然的に前作のネタバレになっているので、可能であれば先に前作を観ておいたほうがいいでしょう。前作で提示された「謎」が伏線として回収されたり、登場人物が前作からさらに「成長」していることも見所になっていますよ。

そして、本作はなるべく、いや絶対に「映画館で観るべき」作品だと断言します。なぜなら、「音を出したら一巻の終わり」という緊張感が劇中の登場人物と観客で一致しており、他の観客と同じ場所を共通し、かつ迫力の音響を提供している場所でこそ、その真価を発揮するからです。今回は終盤の音楽の演出そのものが、ただでさえ盛り上がっている展開をさらにモリモリにしてくれるのでたまりません。



また、不意に訪れる「静寂」も、映画館でしかなし得ない体験でしょう。前作も、手話で家族と話す女の子(演じているミリセント・シモンズは役と同じく本当に聴覚障害を持つ)の視点になると、「音が聞こえなくなる」という演出があったのですが、今回では……いや、これはネタバレになるので具体的に書くのはやめておきましょう。とにかく、家で観ていると入りがちな「雑音」があると、この演出は台無しになってしまう、映画館で観てこその感動があるということだけは告げておきます。

コロナ禍で劇場公開がなくなり配信に移行したり、配信と劇場公開がほぼ同時に行われる作品も増えてきている中、全米でも断固として「劇場のみで公開」の姿勢を突き通したのも、作り手が「映画館で観るべき作品」であることを推している証拠でしょう。前作に引き続き、「“何か”がこれほど露骨に音だけに反応するんだったらもっと対策できるのでは?」などのツッコミどころもありますが、それも含めて楽しんでしまうのが吉。ぜひぜひ、映画館でこその、この圧倒的な面白さと恐怖を、味わってください。

(文:ヒナタカ)

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