夏ドラマ、共感度が最強なのはテレ東深夜ドラマ説



マスク着用や三密回避が当たり前な世界なんて、現実だけだと思ってたーーここ最近、ドラマの世界でもコロナ禍を生きるリアルな姿が描写される作品が増えてきた。

2021年夏ドラマ、趣味嗜好が反映されていることでより共感を加速させている作品が、テレ東深夜枠で放送中の「ひねくれ女のぼっち飯」「孤独のグルメSeason9」「サ道2021」の3つだ。

心の声、ダダ漏れ。新しい私が見つかる「ひねくれ女のぼっち飯」



2021年7月2日より、テレビ東京木曜深夜枠で放送中の「ひねくれ女のぼっち飯」。主演はテレビ東京ドラマ初主演となる飯豊まりえ。プロデューサーである川村庄子氏は「飯豊まりえさんは “めしゆたか”という名字を持つ、この番組の“運命の人”。」と語っている。たしかに。

「孤独のグルメ」を彷彿とさせる本作品。モデル出身ということもありどちらかというとキラキライメージが強い飯豊まりえが、いかにも陰キャな役柄を演じていてなぜだか微笑ましい。人と目を合わせたり店員さんを呼ぶことすらハードルが高いと感じている根暗女が、インターネット上の人物「ホワイトホース」に導かれてぼっち飯を楽しめるようになっていく姿は必見だ。

「ひとりじゃちょっと入りにくい」と感じている中華料理屋や定食屋さんなどには、この作品を見てから挑むといいと思う。(昔、映画「モテキ」で麻生久美子演じるるみ子が明け方に吉野家に行って牛丼をおかわりするシーンを見てから、牛丼チェーン店に足繁く通うようになったな…)

実在している飲食店が登場する作品は、見ていてついついのめり込んでしまう。特に、通りがかったことのある近所のお店が登場したときの興奮度合いたるや。登場したお店はすべてiPhoneの純正メモに「行きたいお店リスト」として残しておき、後々実際にお店を巡ってドラマの主人公になったつもりでひとり食すところまでがドラマ鑑賞における本当の楽しみ方である。

あらすじ
川本つぐみ(飯豊まりえ)は人付き合いが苦手であることからデザイナーへの夢を挫折し、コンビニのアルバイトをしながらなんとなく日々を過ごしていた。そんな中、Instagramで「ホワイトホース」(柄本時生)というアカウントを見つける。よくある料理だが妙に魅力的な食事の写真と、自身に似た理不尽な境遇をつづった投稿に魅力を感じるようになったつぐみは、彼の投稿を参考にしてぼっち飯を楽しむようになっていく。

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あなたにも、食がメインの人生を。「孤独のグルメSeason9」



2021年7月9日より、テレビ東京金曜深夜枠で放送中の「孤独のグルメ Season9」。言うまでもなくファンも非常に多い本ドラマだが、かくいう私は今までのシーズンはあまりチェックしておらずなんとなく知っているくらいで、「あ、ここって孤独のグルメに出てたとこだよね〜」とお店だけ把握してたミーハー野郎。今までなんともったいないことをしていたのか…。

Season9よりコロナ禍での世界が描かれており、特にお店に立ち寄る前の仕事先での会話シーンにおけるマスク着用や三密が守られているあたりが非常にリアル。
お待ちかねな食事シーンは、「ひねくれ女のぼっち飯」と同じくひとりで黙々と食し、心情がナレーションされる作品ということも相まって、まさにコロナ禍におけるお手本のような食事風景だ。

「孤独のグルメ」ほぼ初見な私が見ていて驚いたのは、松重豊演じるゴローさんの食べっぷり。第1話では、ひれかつ御膳を食べながら魚介のクリームコロッケを注文し、さらにはエビフライまで平らげている様。

私なんてひれかつ御膳だけで胸焼けしてしまうだろうに、なぜ中年男性がこんな脂っこいものをペロッと食べられてしまうのか…が、その後のゴローさんの心の声に驚愕。「揚げ物を食べられることが俺の健康の証だ」。なるほど、揚げ物を食べすぎると身体によくないという考え方ではなく、揚げ物を食べられる身体を維持せよ、ということか。さすがゴローさん、勉強になります。

あらすじ
個人で輸入雑貨商を営む井之頭五郎(松重豊)が、仕事先で空腹に見舞われて店を探し、1人食事をする様子を描いた究極の“飯テロ”ドラマ。

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サウナーは見ない理由がない、「サ道2021」



2021年7月9日より、テレビ東京金曜深夜枠で放送中の「サ道2021」。昨今のサウナブームの影響もあり、前作も非常に話題だったように思う。孤独のグルメにおなじく前作は見ておらず、本作が私のサ道デビューである。

1年前まではサウナにまったく興味がなかった。そもそも湯船につかること自体があまり得意ではないし(すぐにのぼせる)、サウナなんてもってのほか。が、周囲のサウナー勢が口を揃えて「ととのうを知らないだなんて人生損してる」と吹っかけてくるため、一度体験しとくか…くらいの気持ちで近所の銭湯に行ったところ、まんまとハマってしまった。今となっては「水風呂の温度が〜」とか「あまみが〜」とか語ってしまうくらいには少し鬱陶しいサウナーの一員である。

本作からは「孤独のグルメ」におなじくコロナ禍での世界が描かれており、サウナを楽しみながらもマスク着用や三密が徹底されている。”黙浴”と書かれたポスターが貼られているにも関わらず周囲を気にせず話す若者や、距離を保ちながら店主と会話をするナカタの姿はリアリティしかない。

銭湯やサウナは基本的にクローズドであり、行ってみないとどんなものなのかわからない神秘のベールで包まれている。本作品のように実際の体験が映し出されているとイメージも湧きやすくなり、本作品は未開拓領域に踏み込むキッカケとなる、サウナーの背中をひと押ししてくれるドラマでもあるのだ。

あらすじ
サウナーであるナカタアツロウ(原田泰造)が様々なサウナを訪れ、サウナ&カプセルホテル北欧にて訪れた施設の特徴や感想を、偶然さん(三宅弘城)、イケメン蒸し男(磯村勇斗)とともに語り、「ととのう」までの姿を描く。

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共感を生む“ほぼドキュメンタリー”なドラマたち


ハラハラするような事件やとんでもないドンデン返しが起こるわけでもない、ただただ趣味嗜好にフィーチャーしただけのこの3作品。そこにコロナ禍のリアルが反映されることで、より一層共感性が増し、ついつい主人公と自身を重ね合わせてしまう。壮大な医療ものや刑事ものがテーマなドラマよりも、こういうゆる〜いドラマの方が最終回が近づくにつれて心なしか寂しくなってしまうものだ。

一度見てしまうとついつい抜け出せなくなるテレ東深夜枠、未体験な方はぜひ味わっていただきたい。

(文:桐本 絵梨花)

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