<松坂桃李>論:すべてをはまり役にしてしまう男の魅力とは?『孤狼の血』『あのキス』『あの頃。』……


映画『あの頃。』 アイドルに人生を救われたハロヲタ

(C)2020「あの頃。」製作委員会

発表時、こんなイケメンがアイドルオタクの役をやるなんていいのか? と思った。筆者、結成時から20年以上のハロヲタなのだが、あんなかっこいいヲタクいないのでは? と混乱した。

だがメインビジュアルが出てくるころにはその不安がなくなった。うまく言えないが、イケメンなはずなのに主人公を演じる松坂桃李は絶妙にダサくて、変な帽子をかぶってブリーフを履いていた。「こういうヲタクいるいる」感が強かった。

また見た目ではなく、石川梨華卒コンでの年上の女性ファン(西田尚美)と連番(隣の席で一緒にライブを見ること)するシーンが印象的だった。うまく言えないが、卒コンでの空気感や、推しが卒業する人を見守る思いが出ていて、ライブ中なのでセリフがあまりないのに共感してしまった。松浦亜弥に”落ちる”瞬間含め、言外の共感や説得力がある作品だった。

彼自身「遊戯王」の大ファンでデュエリストとして有名、菅田将暉のラジオに出るたび自身の宣伝そっちのけで熱く遊戯王の話をするのは周知の事実だが、そういった一面も生きたのかもしれない。

ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」 薄っぺらい青年役がうますぎる

(C)NHK

トラブルを避けたいあまり当たり障りのない発言をし続け、人気低迷したイケメンアナウンサー・真が、恩師に誘われ大学の広報マンに転身する様子を描いた主演ドラマ。

『彼女がその名を知らない鳥たち』でも感じたが、薄っぺらい中身空っぽな感じが実に秀逸だった。「私は何も言ってきませんでしたから」「僕は自分がいちばんかわいいけど」と平然と言う。見た目の良さとアナウンサーというステイタスから女性をとっかえひっかえし、顔が思い出せない人も多いというすがすがしいクズっぷり。

彼だけではなく周りも保身に走る人が大多数の中、そうではない人も現れる。真は変わるのか変わらないのか? 非常に考えさせられ、よくできた物語だった。機会があればぜひ観てほしい。

ドラマ「あのときキスしておけば」 愛すべき巻き込まれ系ポンコツ、純愛に涙

(C)テレビ朝日

「今ここ~」と同じクールに放送された主演ドラマ。どこまでもポンコツなスーパー勤務の青年・桃地のぞむはある日、粘着質なクレーマーに絡まれていたところを女性客(麻生久美子)に助けられる、なんとその人は、桃地が大ファンの漫画「SEIKAの空」の作者・唯月巴だった。

ひょんなことから彼女の身の回りの世話をすることになり、恋愛関係に発展。しかし恋愛経験がないためキスを迫られて動揺し、拒否してしまう。旅行に向かうが道中事故に巻き込まれ、彼女は帰らぬ人になってしまう。さらに死んだはずの彼女の魂は、おじさん(井浦新)の身体に入っておりーー? というとんでもなストーリーだ。

シリアスからギャグまで、どんな役でもこなせる俳優だなとあらためて思わせてくれた作品だ。巻き込まれ系主人公、常にダダもれの心の声が何とも面白い。キャパがせまい故、パニックになると声に出して「あ~~~」と叫ぶところもいい感じにポンコツ感を演出していた。巴や巴の元夫で副編集長の高見沢(三浦翔平)というアクの強い面々に翻弄されつつ、おじさんとなった巴を純粋に愛する姿に感動する。面白いのに切なくて感情をどこに持っていけばいいのかわからない。

ちなみにTELASAで観られるスピンオフ・実写版SEIKAの空も気が狂っていて最高だ。

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