2021年09月23日

『HHH:侯孝賢』レビュー:台湾映画界の名匠ホウ・シャオシェン監督の映画とそのキャリアを紐解く絶好のテキスト!

『HHH:侯孝賢』レビュー:台湾映画界の名匠ホウ・シャオシェン監督の映画とそのキャリアを紐解く絶好のテキスト!



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

台湾映画界が生んだ世界的名匠の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)。

そして彼のイニシャル“HOU HSIAO-HSIEN”の頭文字を採ってタイトルが紡がれた『HHH:侯孝賢』は、当然ながら彼のキャリアに迫るドキュメンタリー映画ですが、これをフランス映画界の才人オリヴィエ・アサイヤス監督が撮っている事実に、世界の映画人がホウ・シャオシェン監督に最大級のリスペクトを捧げていることが理解していただけるものと思われます。



映画の構成そのものも簡明ながら巧みで、ホウ監督にインタビューしながら、『童年往時 時の流れ』(85)『冬冬の夏休み』(84)『非情城市』(89)などの名作群の映像を挿入しながら、彼の人生のキャリアとそこからもたらされていった世界観などを映画としてすんなり見る側に理解させてくれるという優れもの。

こうした手法によって、ホウ監督そのものの人間性が豊かに描出されていくとともに、そんな彼が撮った映画への興味を改めて募らせてくれるという効果ももたらされています。

彼の映画を見たことのない方でも、いわば入門編として入り込みやすい作りになっているのも大きな美徳であり、テキストとして絶好の存在ともいえるでしょう。

もっともこの作品、製作が1997年ですので、今はもう四半世紀近い年月が流れていますことを鑑みるに、この続編もしくは追加増補版みたいなものが作られてもいいのかな?という気にさせられるのも事実でしょう。

ただし、ホウ・シャオシェン監督作品の資質自体は当時と今とで何ら変わりはなく、およそ四半世紀の時の流れも、彼の映画人生を一段と大きく膨らませ続けていくのみ。

その意味では1997年製作のこの作品だけで、実はもう十分にほぼすべての魅力を伝えきれているのかしれません。

(文:増當竜也) 

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(C)AMIP-La Sept ARTE-INA-France 1997

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