『TOVE/トーベ』レビュー:ムーミン原作者の激しくも美しい人生!
『TOVE/トーベ』レビュー:ムーミン原作者の激しくも美しい人生!
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
ムーミンといえばみなさんおなじみの北欧童話「ムーミントロール」シリーズで、日本でも幾度かアニメ化され、各キャラクターの人気も高い作品です。
(ちなみに私はスナフキンが大好きです)
本作はそんな「ムーミン」シリーズの原作者トーベ・ヤンソンの半生を描いた伝記映画ですが、実際の彼女がどのような人生を歩んでいたか、かなりの驚きと共感を呼び起こす内容になっています。
ストーリーは、トーベと舞台演出家ヴィヴィカ・バンドラーとの愛をベースに繰り広げられていきます。
彼女の母国フィンランドで同性愛は当時犯罪とされており(現在は同性婚が合法化)、その中での愛憎劇そのものもスリリングではありますが、それ以上に両者の交流からトーベの激しい性格の一面が如実にうかがえるのが興味深いところでもあります。
また彼女たちは時折「ムーミン」シリーズのキャラクター、トフスラン&ビフスランを自分たちになぞらえながら語ったりもしますが、このように劇中の端々でアーティストとしてのトーベ・ワールドを後々形成していく要素が見え隠れしていて、特に原作を読み込んでいるファンの方には垂涎。
一方で彼女は芸術家の父親からなかなか自分の才能を認めてもらえないことに忸怩たる想いを抱き続けていますが、これが本作の隠れたテーマになり得ているあたりも見逃せないところでしょう。
監督のザイダ・バリアードは、トーベが強い情熱とエネルギーの持ち主で、それゆえに苦悩に陥りつつも持ち前のポジティヴさで乗り越えていくヴァイタリティに魅せられながら、同じ女性アーティストとして多大なリスペクトを捧げながら演出しています。
なお本作はフィンランド映画ですが、その多くはスウェーデン語の台詞で綴られています。
フィンランドは1323年から1809年の長きにわたってスウェーデンに統治されていた歴史があり、今もフィンランド語とスウェーデン語の両方が公用語とのこと。
そしてトーベはスウェーデン語系フィンランド人で、執筆もすべてスウェーデン語で記されていました。
こうした母国への繊細なこだわりも含めつつ、映画『トーベ』はトーベ・ヤンソンの人生を激しくも美しく描出しているのです。
(文:増當竜也)
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