〈新作紹介〉『ロン 僕のポンコツ・ボット』『アイの歌声を聴かせて』:ユニークな共通点ありのSFアニメ映画!
〈新作紹介〉『ロン 僕のポンコツ・ボット』『アイの歌声を聴かせて』:ユニークな共通点ありのSFアニメ映画!
ロンとシオンが訴える
AIと人間の来たるべき未来
答えとしては単純明快なのですが、『ロン 僕のポンコツ・ボット』『アイの歌声を聴かせて』も、ポンコツAIと人間の友情を描いているところが共通しています。もちろん『ロン』は3DCGによるファミリー映画として、『アイ』はセルルックの青春映画として、それぞれターゲットとなる観客層に相違こそあれ、訴えようとしていることはこれからのAIと人との前向きな関係性に他なりません。
『ロン』のBボットが子供でもお絵描きできるようなシンプルなデザインで、『アイ』のシオンが見た目は正統派美少女というあたりもアメリカと日本とのアニメーションに対する認識の違いを改めて確認させてくれたりもしますが、それでも友情や仲間との連帯、絆などを麗しく訴えていることに変わりはありません。
特に日本におけるロボットと人間の友情といったモチーフは、それこそ「鉄腕アトム」など手塚治虫が現役バリバリだった20世紀半ばの時代からおなじみのものでもあったわけですが、当時はあくまでも「来たるべき未来」としてのSFとして捉えられていたものが、今や夢でも何でもなく現実のものになってきていることにオールド世代は感無量でもあります。
さすがにシオンのような人間型AIとの友情を育むのはもう少し先のこととしても、ロンのような相棒とともに日々を過ごすのは時間の問題ではないかと思われます。
また個人的に興味深かったのが、ロンにしてもシオンにしてもポンコツであるということで、これには完全無欠なものよりも、少し足りてない不完全なものこそを好む“映画”ならではの情緒みたいなものも多分に関係しているのと同時に、全ての人間が完全ではないという厳粛たる事実に基づきながら、人はどこまで他者を許容できるかということを問うているのかもしれません。
『ロン』は子ども主体のファミリー映画で、『アイ』は思春期の10代から20代を主体とする青春映画になっていることも、両者がこれからの若い世代に差別や偏見を乗り越える意識を啓蒙させてくれているようにも思えてなりませんでした。
最後に作品そのものとは全く関係のない余談ですが、ロンの日本語版の声を演じる関智一と、シオンの声を演じる土屋太鳳は、かつて『力俥-RIKISHA-鎌倉純愛編』(13)という実写短編映画で共演しています。
これは関智一が日本の名勝・観光地の人力俥夫に扮し、さまざまなお客を乗せて繰り広げられる人情ドラマ・シリーズで、その鎌倉編にブレイク直前の土屋太鳳がお客に扮して出演していたのでした(ベレー帽姿が実に可愛らしいです)。
今やベテラン声優として大活躍中の関智一と、実は結構アニメーションに合った声質で今回は歌まで披露してくれた土屋太鳳、ふたりの共演もしくは今回の作品に関してのコラボ・トークみたいなものも聞いてみたいという欲求にふと駆られてしまった次第です。
(文:増當竜也)
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